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北伐
PHASE-786【決断前】
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「集団心理ですね」
「主の仰るとおりです」
誰もが冷静に考えられない状況だと要塞の方ではなく、先頭が近場へと向かえば自然と後続もそれに続いて糧秣廠って事になるようだ。
「さて、相手には酷なことですが――絶望を見せましょう」
ここで先生が不気味に笑みを湛えたのを目にして俺は総毛立つ。
やはり戦いの場で知恵を巡らせて相手を陥れるという行為には、俺なんかでは分からない高揚感があるのかもしれない。
もちろん先生はサイコパスではない。分別はつけているんだろうが相手を策にはめるという時は、やはり策謀家としての喜びが芽生えてしまうんだろう。
ウォージャンキーとは口には出せないが、戦場における策謀家ってのはそういったのを拗らせている人達なのかもしれない。
自分の思い描いたように事がうまく運ぶ様を目にすれば、誰しも嬉しくなるのは当然だからな。
先生の場合はそれが戦場ってだけだ。
――――先頭の者達の悲鳴による大音声がしっかりと聞こえてくる。
悲鳴に混じって聞こえるのは門を開けてくれという強い願い。
――――懇願する声に対し、こちらはまだリアクションをとらない。
そうなるとなぜ開けてくれないんだ! と、悲鳴が怒号に変わる。
叫び続けて声が掠れる中でも必死に訴え続けてくる姿には胸が痛む。
開門しないことを不審がらず、更に距離を詰めてくる公爵軍。
傭兵たちとは違い正規兵の方々。馬鹿息子の犠牲者と言ってもいい方々。
起こさなくてもいい戦争の引き金となった者により戦場に駆り出された者達。
俺は両手を合わせるだけだ。
そして、これから起こることから目を反らしてはいけないんだろう。
「お願いします」
先生の酷薄な声と馬用の鞭が横一文字を書くと、待機していたS級さん達が胸壁やタレットでバイポッドを設置。
二度目の依託射撃の準備が整う。
一度目のL96A1とは違い、迫ってくる者達に向けられる銃口の主はM249。
LMGと略される軽機関銃だ。
数にして三十を超えるLMG。
「射程は?」
いつの間にか横に立つゲッコーさんに問えば、最大で三千メートル以上。
有効射程は肩撃ち、伏射で結構変わるらしく、間をとって五百メートルといったところだそうだ。
といってもこっちに向かってくるのは万を超える大軍。しかも密集陣形なのだから狙わなくても誰かしらには当たる。
そこに向かって高所より撃てば、有効射程の距離も延長していいとのことだった。
5.56㎜を毎分800発撃ち出すだけの連射力を有したファイアレート。
弾帯は二百発。三十を超える銃口が相手に向けられる。
しかも――、
「M134もですか」
ゲッコーさんは鷹揚に頷き、
「まあ、使わないとな」
と、ゆったりと渋く低い声で返してくる。見舞われた者達の運命がどうなるか分かるからこその声音。
JLTVのキャビン上部に備わったM134。通称、無痛ガンが北門の内側で待機。
先生の合図で北門が開かれれば、そこから発射するって事だろう。
壁上と門からの射撃は正に弾丸の横雨。それが待避しようとしてこちらに対して無防備に接近してくる者達に降り注ぐわけだ。
「主――」
「はい」
何とも重い声による主だな。先ほどのゲッコーさんの声より低い。
先生、真顔だし。
「無理にとは言いません。しかし時間もありません」
「……はい」
何を言いたいか分かる。
側で問われているのに、随分と遠くから聞こえてくるような錯覚にも陥る。
ギュッと心臓を握られている気分だった……。
「主の仰るとおりです」
誰もが冷静に考えられない状況だと要塞の方ではなく、先頭が近場へと向かえば自然と後続もそれに続いて糧秣廠って事になるようだ。
「さて、相手には酷なことですが――絶望を見せましょう」
ここで先生が不気味に笑みを湛えたのを目にして俺は総毛立つ。
やはり戦いの場で知恵を巡らせて相手を陥れるという行為には、俺なんかでは分からない高揚感があるのかもしれない。
もちろん先生はサイコパスではない。分別はつけているんだろうが相手を策にはめるという時は、やはり策謀家としての喜びが芽生えてしまうんだろう。
ウォージャンキーとは口には出せないが、戦場における策謀家ってのはそういったのを拗らせている人達なのかもしれない。
自分の思い描いたように事がうまく運ぶ様を目にすれば、誰しも嬉しくなるのは当然だからな。
先生の場合はそれが戦場ってだけだ。
――――先頭の者達の悲鳴による大音声がしっかりと聞こえてくる。
悲鳴に混じって聞こえるのは門を開けてくれという強い願い。
――――懇願する声に対し、こちらはまだリアクションをとらない。
そうなるとなぜ開けてくれないんだ! と、悲鳴が怒号に変わる。
叫び続けて声が掠れる中でも必死に訴え続けてくる姿には胸が痛む。
開門しないことを不審がらず、更に距離を詰めてくる公爵軍。
傭兵たちとは違い正規兵の方々。馬鹿息子の犠牲者と言ってもいい方々。
起こさなくてもいい戦争の引き金となった者により戦場に駆り出された者達。
俺は両手を合わせるだけだ。
そして、これから起こることから目を反らしてはいけないんだろう。
「お願いします」
先生の酷薄な声と馬用の鞭が横一文字を書くと、待機していたS級さん達が胸壁やタレットでバイポッドを設置。
二度目の依託射撃の準備が整う。
一度目のL96A1とは違い、迫ってくる者達に向けられる銃口の主はM249。
LMGと略される軽機関銃だ。
数にして三十を超えるLMG。
「射程は?」
いつの間にか横に立つゲッコーさんに問えば、最大で三千メートル以上。
有効射程は肩撃ち、伏射で結構変わるらしく、間をとって五百メートルといったところだそうだ。
といってもこっちに向かってくるのは万を超える大軍。しかも密集陣形なのだから狙わなくても誰かしらには当たる。
そこに向かって高所より撃てば、有効射程の距離も延長していいとのことだった。
5.56㎜を毎分800発撃ち出すだけの連射力を有したファイアレート。
弾帯は二百発。三十を超える銃口が相手に向けられる。
しかも――、
「M134もですか」
ゲッコーさんは鷹揚に頷き、
「まあ、使わないとな」
と、ゆったりと渋く低い声で返してくる。見舞われた者達の運命がどうなるか分かるからこその声音。
JLTVのキャビン上部に備わったM134。通称、無痛ガンが北門の内側で待機。
先生の合図で北門が開かれれば、そこから発射するって事だろう。
壁上と門からの射撃は正に弾丸の横雨。それが待避しようとしてこちらに対して無防備に接近してくる者達に降り注ぐわけだ。
「主――」
「はい」
何とも重い声による主だな。先ほどのゲッコーさんの声より低い。
先生、真顔だし。
「無理にとは言いません。しかし時間もありません」
「……はい」
何を言いたいか分かる。
側で問われているのに、随分と遠くから聞こえてくるような錯覚にも陥る。
ギュッと心臓を握られている気分だった……。
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