異世界冒険記『ストレージ・ドミニオン』

FOX4

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新公爵

PHASE-899【もろい城塞だよ】

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 建物の前に立ち、

「はいよ!」
 丁寧なノックなどくそ食らえな精神で、俺はケンカキックにてドアを蹴破ってのダイナミック入室。

「邪魔するぞ~」
 輩チックに見渡せば、蹴破ったドアの先は当たり前だけど通路。
 何事かと横合いのドアが開かれて出てくるのは、

「お、珍妙団」

「破邪の獅子王牙に対してそのふざけた言い様。よそ者か!」

「よそ者にしてこの領地の新領主だよ」

「寝惚けるにはまだ早い時間だぞ」

「へ~へ~」
 小馬鹿に返しつつ俺は無造作に前に出る。
 この通路の先が裏通りに続くんだろうし、その間に荷物のある部屋もあるんだろうね。

「このガキぎゃ!?」
 ワンパン、ワンパン。
 弱い弱い。流石は珍妙団。
 お前等みたいなのがいるから俺が勘違いしそうになるんだぞ。
 俺TUEEEEEEってなりそうなんだぞ。

「どけ!」
 ここで自信に満ちた声が通路に響き渡れば、珍妙団たちが歓喜の声を上げる。
 出てきたのは、

「重そうだな」
 両腕にタワーシールドであるスクトゥムを装備した一人の巨漢。

「お前は?」
 と、継いで問うてみる。自信ある佇まいからして――、

「我は破邪の獅子王牙、城塞のネモス! ここから先へは通さんぞ!」
 やっぱり二つ名持ちだったか。
 狭い通路に重々しい盾が二つ横並び。
 ズンッといった音がするだけで珍妙団たちは鼓舞される。
 単純だね。

「どうだ! この重厚な盾を前にして突破は不可能と思え! 鋼と堅木を併用した重量級のこの盾は俺だけしか扱えない代物。傭兵団の中でも怪力無双の存在である俺が使用すれば、シールドバッシュによる攻撃で相手を一撃で倒すことも可能! 魔法にも耐えうる我が自慢の盾を前にして絶望するがいい!」

「あ~。はいはい――っと!」

「ぐがぁ!?」
 喋々と話してくれたので、その間に練っていた弱烈火を見舞って上げる。
 長話だったから普通に烈火まで練れたけども、流石にこの程度の手合いに打ち込めば死んでしまうからな。
 自慢の盾だったようだが弱烈火の前では無意味。
 簡単に破壊できたし、盾の主は白目を剥いてダウン。

「自慢げに語ってくれたが、その程度の盾で喜んでたら上は目指せねえよ。せめてミスリル製でも手に入れてから誇れ」
 余裕綽々で盾を展開したけども、それが容易く打ち破られた時点で残りの面子は一気に戦意が低下。
 二つ名の登場で鼓舞されたが、お早い退場だったから戦意低下の落差は激しかったご様子。
 目に見えて浮き足立っている。
 コイツ等に対して俺は優しさを持ち合わせていないので、隙にはしっかりと付け込ませてもらう。

「ぎゃぁ!」「ぐえ……」などと情けない声を出しながら残った者たちが俺の前で倒れていく。
 後方ではカイルとマイヤがいつでも対応するといった気概を見せてくれるけど、わざわざ頑張ってもらうほどの相手ではないので、俺だけで対応した。
 
 ――全員をワンパンで突破できる程に弱く、コイツ等では時間稼ぎにもならなかっただろうな。
 
 にしてもこの城壁の何チャラはなぜ盾を選択したのやら……。
 怪力無双と自負しているんなら、盾じゃなくて普通に重量級の武器を使用すればよかったのにね。
 やはりコイツ等の思考はよく分からん。分かるつもりもないけど。

 駆け足で通路を進めば直ぐに扉が見えてくる。
 扉に蹴りを入れてそのまま進入。

「ここか……」
 広い部屋には奴隷商人の拠点らしく、鉄製の檻いくつもあった。
 一つの檻の広さは一畳ほど。それが部屋一面に置かれ、天井までの空間も利用したかったのか檻の上に更に檻を乗せており、二段、三段と積み重ねてある。

「カイル」

「はい!」
 ようやく出番が来たと張り切った返事で段平を背中から引き抜き――、

「ぬん!」
 と、鉄格子部分を切っていく。
 一部の檻の中には未だに人が入れられた状態だった。
 といっても入っているのは、壮年を過ぎて弱った体の方々。

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