917 / 1,861
新公爵
PHASE-917【絶対に廃止しないと】
しおりを挟む
「かなりの苦労をしたんだろうな」
「そうだろうよ……」
苦労すると老けるってはいうけども、俺より年下とは思えない。
初対面なら間違いなく敬語を使う相手だぞ。
「でだ、あいつは見込みがある。公都までの移動の間に剣の腕を見てやったが、飲み込みが早い。半年もあれば俺よりも強くなるだろう」
――……正直ラルゴの強さが分からないんだけどな。
一般的な兵士よりは強いだろうけど、申し訳ないが並よりやや上って感じだからな。
要塞ではコクリコと一緒に活躍もしたようだし、傭兵団相手にも負けてなかったから、この世界だとマナ未習得者というカテゴリーなら強い方に分類されるのかな。
「素養があるなら後は本人次第だけど、やる気はあるんだよな」
「自由にしてくれた事への感謝が大きい。大いに励むつもりだそうだ」
商品となっていた時は人生を諦めたような顔だったが、今は強い目になってる。
「お~い」
ラルゴが腕を派手に振り、大声で褐色君を呼ぶ。
公爵家の者達を前にしての所作としては粗暴で下品。
俺の私兵のようなポジションということを理解しているから、皆さん顔の表面には不平を出す事はない。
正式に俺の私兵となるなら、こういった場に見合った礼儀作法と服装を教え与えないといけないんだろうな。
作法はしかたないとしても、装備は直ぐにでも準備は出来るからな。まずはそっちを優先するか。
寒冷地用の厚着と生産性重視のレザーアーマーは、征北や近衛と比べるとはっきりと見劣りしてる。
俺が恥ずかしくなって……なるほど……な。貴族ってのはそういった見栄も周囲に見せないといけないんだなというのを垣間見た気分だ。
公爵の私兵というポジションだからこそ、良い装備で揃えないといけないんだな。
公爵となれば自由に動かせる金ってのもあるんだろうけど、それを使って良いのだろうか? 公私混同みたいに見られないかな。
領民達からのイメージダウンは避けたい。
となると、
「自腹か……」
勇者として、会頭としての立場で稼いだ金から出さないといけないな……。
パーティーメンバーから少しは出資をしてほしいところ。
などと考え事をしていれば、褐色君が俺や公爵家の面々に会釈をしつつ恐る恐るこちらへとやって来る。
周囲が高そうな服装で着飾っている中、質素な服装というのは恥ずかしいというより、申し訳ないといった感じがあるようだ。
「何でしょうラルゴさん」
ああ。確かに姿は二十代だけど、声の感じは俺と近いものがあるね。
「ちゃんと礼を言いたかったんだろう」
「あ、はい。勇者様、公爵様、会頭様……」
「好きに呼んでいいよ」
「では勇者様。自分を救ってくださってありがとうございます」
呼称に勇者を選択したのは、救われた思いが大きいからだろう。
「勇者として当然のことをしただけだよ」
なので勇者として対応する。
「このご恩は全身全霊の忠義でお返しします」
「自由になったんだから、別に俺の所じゃなくてもいいんだけど」
「お願いです。働かせてください!」
俺の所じゃなくてもという発言を見捨てられると受け取ったようで、懇願するように俺へと縋ろうとする。
こっちとしても人材は多ければ多いほどいいから、働いてもらうのはありがたい。
「君が留まりたいなら好きにするといいよ。ただし薄給だよ。冒険者になるなら話はまた変わるけど」
「いえ、自分はトール様の下で励みたいのです」
なので冒険者とかには興味がないそうだ。
ただ働きでもいい、今までがそうだったんだから。少なくても給金がもらえるという前提の話にむしろ驚いていた。
どんだけ辛い日々を過ごしてたんだよ……。
ラルゴ達の装備を自腹で調達しないといけない程度の事で、気が重くなっていたのが恥ずかしい。
そんなもん褐色君の今までの人生に比べれば些末な事だったよ。
奴隷制は絶対にこの地だけでなく、他の地でも二度と生まれないように仕組みを作っていかないとな。
「じゃあ今後もラルゴ達と一緒に俺を支えてくれ」
「分かりました!」
快活な声で返事をもらう。
その時の笑い顔を見て、俺と同年代なんだというのが分かった。
大人のような顔立ちだけど、笑みには幼さがあったからね。
「そうだろうよ……」
苦労すると老けるってはいうけども、俺より年下とは思えない。
初対面なら間違いなく敬語を使う相手だぞ。
「でだ、あいつは見込みがある。公都までの移動の間に剣の腕を見てやったが、飲み込みが早い。半年もあれば俺よりも強くなるだろう」
――……正直ラルゴの強さが分からないんだけどな。
一般的な兵士よりは強いだろうけど、申し訳ないが並よりやや上って感じだからな。
要塞ではコクリコと一緒に活躍もしたようだし、傭兵団相手にも負けてなかったから、この世界だとマナ未習得者というカテゴリーなら強い方に分類されるのかな。
「素養があるなら後は本人次第だけど、やる気はあるんだよな」
「自由にしてくれた事への感謝が大きい。大いに励むつもりだそうだ」
商品となっていた時は人生を諦めたような顔だったが、今は強い目になってる。
「お~い」
ラルゴが腕を派手に振り、大声で褐色君を呼ぶ。
公爵家の者達を前にしての所作としては粗暴で下品。
俺の私兵のようなポジションということを理解しているから、皆さん顔の表面には不平を出す事はない。
正式に俺の私兵となるなら、こういった場に見合った礼儀作法と服装を教え与えないといけないんだろうな。
作法はしかたないとしても、装備は直ぐにでも準備は出来るからな。まずはそっちを優先するか。
寒冷地用の厚着と生産性重視のレザーアーマーは、征北や近衛と比べるとはっきりと見劣りしてる。
俺が恥ずかしくなって……なるほど……な。貴族ってのはそういった見栄も周囲に見せないといけないんだなというのを垣間見た気分だ。
公爵の私兵というポジションだからこそ、良い装備で揃えないといけないんだな。
公爵となれば自由に動かせる金ってのもあるんだろうけど、それを使って良いのだろうか? 公私混同みたいに見られないかな。
領民達からのイメージダウンは避けたい。
となると、
「自腹か……」
勇者として、会頭としての立場で稼いだ金から出さないといけないな……。
パーティーメンバーから少しは出資をしてほしいところ。
などと考え事をしていれば、褐色君が俺や公爵家の面々に会釈をしつつ恐る恐るこちらへとやって来る。
周囲が高そうな服装で着飾っている中、質素な服装というのは恥ずかしいというより、申し訳ないといった感じがあるようだ。
「何でしょうラルゴさん」
ああ。確かに姿は二十代だけど、声の感じは俺と近いものがあるね。
「ちゃんと礼を言いたかったんだろう」
「あ、はい。勇者様、公爵様、会頭様……」
「好きに呼んでいいよ」
「では勇者様。自分を救ってくださってありがとうございます」
呼称に勇者を選択したのは、救われた思いが大きいからだろう。
「勇者として当然のことをしただけだよ」
なので勇者として対応する。
「このご恩は全身全霊の忠義でお返しします」
「自由になったんだから、別に俺の所じゃなくてもいいんだけど」
「お願いです。働かせてください!」
俺の所じゃなくてもという発言を見捨てられると受け取ったようで、懇願するように俺へと縋ろうとする。
こっちとしても人材は多ければ多いほどいいから、働いてもらうのはありがたい。
「君が留まりたいなら好きにするといいよ。ただし薄給だよ。冒険者になるなら話はまた変わるけど」
「いえ、自分はトール様の下で励みたいのです」
なので冒険者とかには興味がないそうだ。
ただ働きでもいい、今までがそうだったんだから。少なくても給金がもらえるという前提の話にむしろ驚いていた。
どんだけ辛い日々を過ごしてたんだよ……。
ラルゴ達の装備を自腹で調達しないといけない程度の事で、気が重くなっていたのが恥ずかしい。
そんなもん褐色君の今までの人生に比べれば些末な事だったよ。
奴隷制は絶対にこの地だけでなく、他の地でも二度と生まれないように仕組みを作っていかないとな。
「じゃあ今後もラルゴ達と一緒に俺を支えてくれ」
「分かりました!」
快活な声で返事をもらう。
その時の笑い顔を見て、俺と同年代なんだというのが分かった。
大人のような顔立ちだけど、笑みには幼さがあったからね。
1
あなたにおすすめの小説
凡人がおまけ召喚されてしまった件
根鳥 泰造
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。
仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。
それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。
異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。
最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。
だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。
祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。
最強の異世界やりすぎ旅行記
萩場ぬし
ファンタジー
主人公こと小鳥遊 綾人(たかなし あやと)はある理由から毎日のように体を鍛えていた。
そんなある日、突然知らない真っ白な場所で目を覚ます。そこで綾人が目撃したものは幼い少年の容姿をした何か。そこで彼は告げられる。
「なんと! 君に異世界へ行く権利を与えようと思います!」
バトルあり!笑いあり!ハーレムもあり!?
最強が無双する異世界ファンタジー開幕!
夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~
青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。
彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。
ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。
彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。
これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。
※カクヨムにも投稿しています
貧弱の英雄
カタナヅキ
ファンタジー
この世界では誰もが生まれた時から「異能」と「レベル」呼ばれる能力を身に付けており、人々はレベルを上げて自分の能力を磨き、それに適した職業に就くのが当たり前だった。しかし、山奥で捨てられていたところを狩人に拾われ、後に「ナイ」と名付けられた少年は「貧弱」という異能の中でも異質な能力を身に付けていた。
貧弱の能力の効果は日付が変更される度に強制的にレベルがリセットされてしまい、生まれた時からナイは「レベル1」だった。どれだけ努力してレベルを上げようと日付変わる度にレベル1に戻ってしまい、レベルで上がった分の能力が低下してしまう。
自分の貧弱の技能に悲観する彼だったが、ある時にレベルを上昇させるときに身に付ける「SP」の存在を知る。これを使用すれば「技能」と呼ばれる様々な技術を身に付ける事を知り、レベルが毎日のようにリセットされる事を逆に利用して彼はSPを溜めて数々の技能を身に付け、落ちこぼれと呼んだ者達を見返すため、底辺から成り上がる――
※修正要請のコメントは対処後に削除します。
異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。
もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。
異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。
ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。
残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、
同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、
追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、
清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……
冷遇された聖女の結末
菜花
恋愛
異世界を救う聖女だと冷遇された毛利ラナ。けれど魔力慣らしの旅に出た途端に豹変する同行者達。彼らは同行者の一人のセレスティアを称えラナを貶める。知り合いもいない世界で心がすり減っていくラナ。彼女の迎える結末は――。
本編にプラスしていくつかのifルートがある長編。
カクヨムにも同じ作品を投稿しています。
神の加護を受けて異世界に
モンド
ファンタジー
親に言われるまま学校や塾に通い、卒業後は親の進める親族の会社に入り、上司や親の進める相手と見合いし、結婚。
その後馬車馬のように働き、特別好きな事をした覚えもないまま定年を迎えようとしている主人公、あとわずか数日の会社員生活でふと、何かに誘われるように会社を無断で休み、海の見える高台にある、神社に立ち寄った。
そこで野良犬に噛み殺されそうになっていた狐を助けたがその際、野良犬に喉笛を噛み切られその命を終えてしまうがその時、神社から不思議な光が放たれ新たな世界に生まれ変わる、そこでは自分の意思で何もかもしなければ生きてはいけない厳しい世界しかし、生きているという実感に震える主人公が、力強く生きるながら信仰と奇跡にに導かれて神に至る物語。
異世界へ行って帰って来た
バルサック
ファンタジー
ダンジョンの出現した日本で、じいさんの形見となった指輪で異世界へ行ってしまった。
そして帰って来た。2つの世界を往来できる力で様々な体験をする神須勇だった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる