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新公爵
PHASE-936【やっぱ人誑しなのかな?】
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「だからこそ何ですよ子爵」
「心得ております」
しっかりと力を一つにして多方向から勝利を勝ち取っていかなければ魔王軍には勝てない。
ただでさえまだ瘴気の浄化には至っていない場所も多い。
これを解決しない限り、俺達は反撃の狼煙をあげることすら許されないからな。
解決のためには残りの四大聖龍である風龍と水龍を救い出す事が重要。
瘴気が晴れた後、本格的に人類は攻勢へと転ずることが出来る。
瘴気の浄化までに俺達が出来る事は兎にも角にも力を集約して人々が手を取り合うこと。
攻勢のための地固めをしっかりとしておかなければならない。
「子爵は代々武門の誉れと聞いております。是非ともこの俺に力をお貸しください」
「その様に頭を深く下げられたら、逆にこちらが緊張します」
「誰にでも言ってますが、俺に出来る事は頭を下げてお願いするだけですから」
「あれだけの力を持っていながらなんとも謙虚」
「自分の力には限界があると理解してますから」
「その様に頭を下げなくとも、私は新公爵様には全てを出し切って助力するつもりです。そうであろうヨハン」
「無論です。我々の力はトール様と比べれば微細ですが、その微細も集まれば巨山にもなるというものです」
塵も積もれば――ってやつだな。
でもそれが重要なんだよな。
なんでもコツコツと――だ。
最初から強い奴なんていない。いたとしてもそれはチートと呼ばれる類いの者たちや、昨今のラノベ主人公だけ。
皆、俺と一緒で成長して強くなっていくしかない。
だからこそその力を集めて強大にしていく。
「男爵」
「は、はい!」
急に呼ばれれば、背筋を真っ直ぐにして硬直する。
「しっかりとこの地だけでなく、この世界のために才能を発揮してほしい」
「私にその様な力はありません……。公爵様のようにはなれませぬ」
「あるだろうさ。なれないとか言うけど、その俺に対してお手向かい致しますぞ! って完璧な返しが言えたんだから」
「あ、あれは……」
「あの時の思考はどうあれ、その気概をしっかりとこの世界のために使ってほしい」
「あ、いや~その……」
「ええい。我が可愛い孫がそう言っているのだ。実行せよ。己の才を十全で発揮するのだ!」
「か、畏まりました!」
爺様の怒気で素直になり、今以上に背筋が伸び上がる。
伸びすぎて男爵の背中からコキコキと小気味の良い音が聞こえてくる程だった。
悪道に足を踏み入れたとはいえ、立ち戻るなら問題ない。
むしろ汚れた部分も持っている方が信用できる。
潔白や潔癖を維持し続ける事が出来る有力者は胡散臭いからな。そんな奴は大抵がソレを維持するために、裏でド汚いことをやっているタイプだろう。
ここにいる殆どの者たちが男爵に似て潔癖さがなく、濁も呑んでいる者たち。
駄目駄目なのも多いし、裏切りそうなのもいるけども、それは変えられる事だ。
そうすりゃちっとはましになるだろう。
――しっかりとした足取りで諸侯の元へと足を進める。
「皆々様、このたびの継承式と催し物の観覧に参加して頂きありがとうございます」
と、一礼。
「まだまだ若輩であり、世間知らずでもあります。こんな俺が新公爵としてミルド領を統治するのは心許ないとお思いでしょう。それは俺自身も分かっていることです。ですので皆様のご助力を賜りたいと思っております。どうか宜しくお願いいたします」
当初は恐怖だけをしっかりと刻んでもらうつもりだったけど、やはり恐怖ではなく融和による力こそが真の力だと心底で思っていたんだろうな。自然と頭を下げていた。
諸侯たちはポカンと口を開いていたけど、一人が「お任せを!」と快活良く応じれば、同様の台詞が方々から俺の耳朶へと届いてくる。
「いやはや叔父上、主殿は王よりも絶対に人誑しの才がありますよ」
「ですね。――では、公達」
「はい。心得ております」
会話をしつつ荀一族の二人が来ると、俺の横に立って俺同様に深々と頭を下げる。
二人だけでなく、ゲッコーさんにS級さんもそれに続き、とどめとばかりにドレス姿のベルとシャルナまで俺と並んで頭を下げてくれる。
流石というかリンは参加せず、王様や爺様たちの側でこちらを見るという立ち位置。
そして……コイツは……、
「と、この様にここに並び立つ強者たちが頭を下げているので、皆さんも強者に負けぬように励んでください」
――……本当にこのまな板だけはいつだってぶれないな……。
自分がこの面子のリーダーといった感じを醸し出しつつ先頭に立って諸侯に言うんだもの。
コクリコの発言に対して諸侯たちはしっかりと首を縦に振っており、それを一通り見渡せば満足げに――、
「ならばよし!」
と、大音声。
無い胸を反らせてご満悦。
いつも通りと言うべきか、コクリコが場を締めて催しは幕を閉じた……。
「心得ております」
しっかりと力を一つにして多方向から勝利を勝ち取っていかなければ魔王軍には勝てない。
ただでさえまだ瘴気の浄化には至っていない場所も多い。
これを解決しない限り、俺達は反撃の狼煙をあげることすら許されないからな。
解決のためには残りの四大聖龍である風龍と水龍を救い出す事が重要。
瘴気が晴れた後、本格的に人類は攻勢へと転ずることが出来る。
瘴気の浄化までに俺達が出来る事は兎にも角にも力を集約して人々が手を取り合うこと。
攻勢のための地固めをしっかりとしておかなければならない。
「子爵は代々武門の誉れと聞いております。是非ともこの俺に力をお貸しください」
「その様に頭を深く下げられたら、逆にこちらが緊張します」
「誰にでも言ってますが、俺に出来る事は頭を下げてお願いするだけですから」
「あれだけの力を持っていながらなんとも謙虚」
「自分の力には限界があると理解してますから」
「その様に頭を下げなくとも、私は新公爵様には全てを出し切って助力するつもりです。そうであろうヨハン」
「無論です。我々の力はトール様と比べれば微細ですが、その微細も集まれば巨山にもなるというものです」
塵も積もれば――ってやつだな。
でもそれが重要なんだよな。
なんでもコツコツと――だ。
最初から強い奴なんていない。いたとしてもそれはチートと呼ばれる類いの者たちや、昨今のラノベ主人公だけ。
皆、俺と一緒で成長して強くなっていくしかない。
だからこそその力を集めて強大にしていく。
「男爵」
「は、はい!」
急に呼ばれれば、背筋を真っ直ぐにして硬直する。
「しっかりとこの地だけでなく、この世界のために才能を発揮してほしい」
「私にその様な力はありません……。公爵様のようにはなれませぬ」
「あるだろうさ。なれないとか言うけど、その俺に対してお手向かい致しますぞ! って完璧な返しが言えたんだから」
「あ、あれは……」
「あの時の思考はどうあれ、その気概をしっかりとこの世界のために使ってほしい」
「あ、いや~その……」
「ええい。我が可愛い孫がそう言っているのだ。実行せよ。己の才を十全で発揮するのだ!」
「か、畏まりました!」
爺様の怒気で素直になり、今以上に背筋が伸び上がる。
伸びすぎて男爵の背中からコキコキと小気味の良い音が聞こえてくる程だった。
悪道に足を踏み入れたとはいえ、立ち戻るなら問題ない。
むしろ汚れた部分も持っている方が信用できる。
潔白や潔癖を維持し続ける事が出来る有力者は胡散臭いからな。そんな奴は大抵がソレを維持するために、裏でド汚いことをやっているタイプだろう。
ここにいる殆どの者たちが男爵に似て潔癖さがなく、濁も呑んでいる者たち。
駄目駄目なのも多いし、裏切りそうなのもいるけども、それは変えられる事だ。
そうすりゃちっとはましになるだろう。
――しっかりとした足取りで諸侯の元へと足を進める。
「皆々様、このたびの継承式と催し物の観覧に参加して頂きありがとうございます」
と、一礼。
「まだまだ若輩であり、世間知らずでもあります。こんな俺が新公爵としてミルド領を統治するのは心許ないとお思いでしょう。それは俺自身も分かっていることです。ですので皆様のご助力を賜りたいと思っております。どうか宜しくお願いいたします」
当初は恐怖だけをしっかりと刻んでもらうつもりだったけど、やはり恐怖ではなく融和による力こそが真の力だと心底で思っていたんだろうな。自然と頭を下げていた。
諸侯たちはポカンと口を開いていたけど、一人が「お任せを!」と快活良く応じれば、同様の台詞が方々から俺の耳朶へと届いてくる。
「いやはや叔父上、主殿は王よりも絶対に人誑しの才がありますよ」
「ですね。――では、公達」
「はい。心得ております」
会話をしつつ荀一族の二人が来ると、俺の横に立って俺同様に深々と頭を下げる。
二人だけでなく、ゲッコーさんにS級さんもそれに続き、とどめとばかりにドレス姿のベルとシャルナまで俺と並んで頭を下げてくれる。
流石というかリンは参加せず、王様や爺様たちの側でこちらを見るという立ち位置。
そして……コイツは……、
「と、この様にここに並び立つ強者たちが頭を下げているので、皆さんも強者に負けぬように励んでください」
――……本当にこのまな板だけはいつだってぶれないな……。
自分がこの面子のリーダーといった感じを醸し出しつつ先頭に立って諸侯に言うんだもの。
コクリコの発言に対して諸侯たちはしっかりと首を縦に振っており、それを一通り見渡せば満足げに――、
「ならばよし!」
と、大音声。
無い胸を反らせてご満悦。
いつも通りと言うべきか、コクリコが場を締めて催しは幕を閉じた……。
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