異世界冒険記『ストレージ・ドミニオン』

FOX4

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ミルド領

PHASE-940【魔術学都市へ】

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「で、ジョン・ドゥの風体は?」

「よく分からん。男というだけだ」

「……何でだよ? 素顔ぐらい見ているだろ」

「フードで覆っていたからな」
 フード付きの白いローブだったという。
 にしても一応はお偉いさんなんだから、自分の前ではフードを脱がせるくら……い……。

「……もしかしてなんだが、名前同様に強者は小者如きの顔を覚える必要はないです。みたいな事を言われて真に受けたとかじゃないよ……な?」

「そうだ」

「ドリッシュ!」

「ぐあ!?」
 呆れと怒りのあまり、訳の分からんかけ声のまま殴ってしまった。

「お前はどこまで馬鹿なんだ! どうしてそんなくだらないおべっかを真に受けるんだよ! 死ね! って死んでるか」
 この俺にストレートな汚い言葉を使用させるとかコイツくらいだよ。
 死ねなんて単語は口にも出したくないのにさ。コイツは言わせてくるね。

「貴様! この偉大な俺をこんなにも――」

「五月蠅い。お前はただの低位のアンデッドだよ! あ、ミランドはデュラハンだから上位だからね」

「分かっております」
 ちゃんとミランドにはフォロー。
 しかしこの馬鹿を殴っても誰も止めないってのがね。
 初手の拳骨行為にはミランドもやや呆れていたけども、この会話の流れが原因だったのか今は違う。
 むしろ、いいぞもっとやれって心の声が聞こえてくるような微笑を湛えている。

「まあいいや。コイツにもう用はない」
 この馬鹿と会話してるとこっちまで馬鹿になりそうで嫌だ……。
 俺の侮辱に怒り心頭で体を震わせているが、以前のような顔真っ赤とはならない。アンデッドで血の巡りがないから成りたくてもなれないか。
 申し訳ないが後はミランドに任せて、

「とりあえず」

「ネポリスに言ってみるか」

「ですね」
 ゲッコーさんが言うには、S級さんによって調べはついているらしいけど、俺自身も見ておきたい。

「現場百遍ともいいますしね。何かしらの糸口が見つかればいいんですけど」

「行けば分かるさ。進展に期待しよう」
 だな。
 まずは行ってみようじゃないか。魔術学都市ネポリス。

「スティーブンス」

「はっ」
 おお! 便利だ。執事って便利だ。
 名前を呼べば何処に待機していたのか分からないけども、アクセルで直ぐさま俺の前に現れてくれる。
 左手を胸部分にあて、右手は後ろに回しての一礼はぶれることがない美しい所作。
 その姿にて瞬時に現れる姿は格好良かった。
 支度を頼めば再度、一礼をしてから俺達の前から消える。

「便利だな執事」

「便利ですよね執事」
 と、ゲッコーさんと二人で異世界の執事感動する。



 ――――。

「これはまた派手な防御壁だな」
 ネポリス。魔術学都市というだけあってそれっぽい。
 公都より北西に位置する大都市。
 JLTVを使用して約五時間の道のりといったところ。
 公都ほどではないが、それでも十分に大きな都市が眼界に入ってくる。

 魔術学都市はミルド領において重要な拠点という事もあり、諸侯たちの小競り合いに巻き込まれることはなかったそうだ。
 まあ公都に近い時点で大それた事は出来ないからな。
 公都同様に安全圏にあった都市である。
 今後はミルド領全体が安全圏になるように、諸侯たちには励んでもらいたい。
 
 それでも、もし野心にまみれた奴等がネポリスに攻めてきたとしたら――、

「この魔術都市に危険が及んだら動き出しそうだな」

「ですよね。さながらギリシャ神話に出てくる青銅の巨人のようですね」

「ああ、タロースのようだ」
 門そばの防御壁は大きなニッチとなっていて、そこには大きくて逞しく、金属鎧を纏った巨人の石像があった。
 手には魔術都市ということもあってか、石造のスタッフを天に向かって掲げたデザイン。
 全長にして六、七メートルはあるだろう石像は、今にも動き出しそうなくらいにリアル。
 石材はやはりというべきかコンクリート。
 長い年月コンクリートを利用してきたミルド領の加工技術は非常に高く素晴らしい。
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