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ミルド領
PHASE-954【噛み噛み】
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「フレイムアロー」
一気に突出した俺の為に、後衛のシャルナが掩護。
無手の状態で弓を構える所作をすれば、炎の矢が顕現。
連続して放たれた炎の矢が、俺の周囲に群がるゴブリンゾンビの頭部に突き刺されば、力なく倒れていく。
実際の弓は構えていないけど、所作だけで様になるのは流石はエルフ。
「さあ頑張って。私が守るお姉ちゃんの所まで攻められたらこっちが負けってルールだから」
勝手にオムニガルがルールをつくるけども、実際この程度の手合いに前衛が突破されたら恥だよな。
狭い室内。正面――しかもなんの考えもなく突っ込んでくる相手を後衛に行かせたら本当に恥である。
「さて」
と、ここで満を持してベルも参戦。
相手の姿が虫系でなければいつもの帝国軍中佐になる。
「ふっ」
俺の横へ一足で来れば、レイピアに纏わせた威力が規格外の炎を振るっていく。
触れただけでゴブリンゾンビ達は燃えるのではなく灰燼へと帰する。
相も変わらずのチート威力。
こうなると脅威というものは存在しなくなる。
オムニガルのルールも意味を成さないし、後衛でいつでも補助をと考えていたアビゲイルさんのマジックリングが輝くこともない。
巨大ヤスデにか弱い声を出していたのを帳消しにするとばかりに、大立ち回りをするベル。
「――――片付いたな」
ドラムマガジンをリロードしつつ、周辺警戒のゲッコーさんからの一言。
ゲッコーさんが言うのだから、この室内における驚異は排除されたと考えていい。
ベルが前衛に参戦した時点で分かりきった事だけどね。
その最強さんの参戦が原因で大立ち回りが出来なかったコクリコは、不完全燃焼とばかりにフライパンの素振りを繰り返していた。
にしても――、
「やっぱりアンデッドには火だよな」
「と言っても一気に燃やし尽くさないと反撃はしてくるわよ」
リンの魔法ならそれも心配ないし、シャルナのように必中でしとめれば脅威にはならない。
というか、アンデッドの対処法をアンデッドと語り合うのも変な話だな。
「見てみろトール」
シャルナが仕留めた亡骸を前にゲッコーさんがここでも手招き。
頭部を炎の矢で射抜かれただけだから、体はしっかりと残った状態。
そんなゴブリンゾンビを数体、入念に調べ上げたゲッコーさんが何かに気付いたようだ。
正直、亡骸を見るのは嫌なんだけども……。
断ると鋭い目で睨んでくるのは分かっているので、素直に従って行動。
膝をついて亡骸に手を合わせてから確認。
「見事に射抜かれてますね。流石はシャルナ」
言えば後ろから――当然! と、自信に満ちたシャルナの声が返ってくる。
全体を燃やし尽くすのではなく、炎を集束させて射たフレイムアローは、一点突破の強力なレーザービームを彷彿させる。
亡骸の頭部は、単一電池がスッポリ入るくらいの穴がぽっかりと空いており、長い舌が歯並びの悪い口からだらんと零れ出ていた。
「素晴らしいショットではあるが、残念ながら見るべきはそこじゃない」
「はあ?」
もっと別の所を見ろとのこと。
亡骸。しかも腐敗が進んでいるのを見るというのは抵抗感はあるが、しっかりと数体の亡骸を見ていく。
ダークグリーンの肌に、皮膚が剥がれて筋肉が露出しているのは先ほどから目にしているけども、それ以外になにが――と見渡せば、
「あ!」
「気付いたか」
「はい。噛まれた後があります」
「そうだ。この歯形からして乱杭歯によるもの。つまりは――」
「同じゴブリンによるもの」
てことは、
「ゴブリンゾンビに噛まれたゴブリンが、ゴブリンゾンビになったわけですね」
「他の亡骸も共通しているからな。ゾンビ化したゴブリンが他のゴブリンを襲った結果、こういった状態になったんだろう」
羊皮紙にはこういった記載はなかったからな。
もしかしたらその部分は別に保管されているか、持ち出されたかってところか。
実験目的はゴブリンゾンビの増産ってところかな?
合成獣とは違う実験もしているようだな。
「なんかインフェクションみたいだよな。そう思わないかリン?」
増産といえば、それをスキルとして所持している存在をリンは使役している。
「冗談。うちのディザスターナイトのスキルと、そんな低俗な能力を一緒にしないでくれるかしら」
なんか怒られた。
ただなんとなく感染させて増やしていくってのが似ているから、思ったことを口にしただけなんだけどな。
「これはカースバイト。アンデッド特有の能力」
主にゾンビ系のアンデッドが使用する能力らしく、生者に対する強い敵意を呪いへと変化させて、対象者を攻撃するアンデッドのスキル。
噛みつかれた相手が命を奪われると、呪詛により死者がアンデッド化するというものらしい。
俺が知るゾンビ作品なんかだと噛まれたり引っ掻かれたり、ゾンビの血を浴びたりするとゾンビ化するけども、こっちの世界ではカースバイトによる噛みつきを受けても死なないかぎりアンデッド化にはならないし、生きている間に治療やディスペルなどの呪解魔法を使用すれば問題ないという。
リンが言うように、カースバイトはインフェクションより格下だそうで、後者はアンデッド化した者が強化されるけど、前者は生前の能力のままアンデッド化するそうだ。
ここにいたゴブリンゾンビは、平均的なゴブリンと力自体は変わりがないというのは戦って理解している。
ただ痛覚もなければ恐れも知らない。
頭部を破壊しないと止まらないという点では、通常のゴブリンよりもやりづらい相手であるのも確か。
一気に突出した俺の為に、後衛のシャルナが掩護。
無手の状態で弓を構える所作をすれば、炎の矢が顕現。
連続して放たれた炎の矢が、俺の周囲に群がるゴブリンゾンビの頭部に突き刺されば、力なく倒れていく。
実際の弓は構えていないけど、所作だけで様になるのは流石はエルフ。
「さあ頑張って。私が守るお姉ちゃんの所まで攻められたらこっちが負けってルールだから」
勝手にオムニガルがルールをつくるけども、実際この程度の手合いに前衛が突破されたら恥だよな。
狭い室内。正面――しかもなんの考えもなく突っ込んでくる相手を後衛に行かせたら本当に恥である。
「さて」
と、ここで満を持してベルも参戦。
相手の姿が虫系でなければいつもの帝国軍中佐になる。
「ふっ」
俺の横へ一足で来れば、レイピアに纏わせた威力が規格外の炎を振るっていく。
触れただけでゴブリンゾンビ達は燃えるのではなく灰燼へと帰する。
相も変わらずのチート威力。
こうなると脅威というものは存在しなくなる。
オムニガルのルールも意味を成さないし、後衛でいつでも補助をと考えていたアビゲイルさんのマジックリングが輝くこともない。
巨大ヤスデにか弱い声を出していたのを帳消しにするとばかりに、大立ち回りをするベル。
「――――片付いたな」
ドラムマガジンをリロードしつつ、周辺警戒のゲッコーさんからの一言。
ゲッコーさんが言うのだから、この室内における驚異は排除されたと考えていい。
ベルが前衛に参戦した時点で分かりきった事だけどね。
その最強さんの参戦が原因で大立ち回りが出来なかったコクリコは、不完全燃焼とばかりにフライパンの素振りを繰り返していた。
にしても――、
「やっぱりアンデッドには火だよな」
「と言っても一気に燃やし尽くさないと反撃はしてくるわよ」
リンの魔法ならそれも心配ないし、シャルナのように必中でしとめれば脅威にはならない。
というか、アンデッドの対処法をアンデッドと語り合うのも変な話だな。
「見てみろトール」
シャルナが仕留めた亡骸を前にゲッコーさんがここでも手招き。
頭部を炎の矢で射抜かれただけだから、体はしっかりと残った状態。
そんなゴブリンゾンビを数体、入念に調べ上げたゲッコーさんが何かに気付いたようだ。
正直、亡骸を見るのは嫌なんだけども……。
断ると鋭い目で睨んでくるのは分かっているので、素直に従って行動。
膝をついて亡骸に手を合わせてから確認。
「見事に射抜かれてますね。流石はシャルナ」
言えば後ろから――当然! と、自信に満ちたシャルナの声が返ってくる。
全体を燃やし尽くすのではなく、炎を集束させて射たフレイムアローは、一点突破の強力なレーザービームを彷彿させる。
亡骸の頭部は、単一電池がスッポリ入るくらいの穴がぽっかりと空いており、長い舌が歯並びの悪い口からだらんと零れ出ていた。
「素晴らしいショットではあるが、残念ながら見るべきはそこじゃない」
「はあ?」
もっと別の所を見ろとのこと。
亡骸。しかも腐敗が進んでいるのを見るというのは抵抗感はあるが、しっかりと数体の亡骸を見ていく。
ダークグリーンの肌に、皮膚が剥がれて筋肉が露出しているのは先ほどから目にしているけども、それ以外になにが――と見渡せば、
「あ!」
「気付いたか」
「はい。噛まれた後があります」
「そうだ。この歯形からして乱杭歯によるもの。つまりは――」
「同じゴブリンによるもの」
てことは、
「ゴブリンゾンビに噛まれたゴブリンが、ゴブリンゾンビになったわけですね」
「他の亡骸も共通しているからな。ゾンビ化したゴブリンが他のゴブリンを襲った結果、こういった状態になったんだろう」
羊皮紙にはこういった記載はなかったからな。
もしかしたらその部分は別に保管されているか、持ち出されたかってところか。
実験目的はゴブリンゾンビの増産ってところかな?
合成獣とは違う実験もしているようだな。
「なんかインフェクションみたいだよな。そう思わないかリン?」
増産といえば、それをスキルとして所持している存在をリンは使役している。
「冗談。うちのディザスターナイトのスキルと、そんな低俗な能力を一緒にしないでくれるかしら」
なんか怒られた。
ただなんとなく感染させて増やしていくってのが似ているから、思ったことを口にしただけなんだけどな。
「これはカースバイト。アンデッド特有の能力」
主にゾンビ系のアンデッドが使用する能力らしく、生者に対する強い敵意を呪いへと変化させて、対象者を攻撃するアンデッドのスキル。
噛みつかれた相手が命を奪われると、呪詛により死者がアンデッド化するというものらしい。
俺が知るゾンビ作品なんかだと噛まれたり引っ掻かれたり、ゾンビの血を浴びたりするとゾンビ化するけども、こっちの世界ではカースバイトによる噛みつきを受けても死なないかぎりアンデッド化にはならないし、生きている間に治療やディスペルなどの呪解魔法を使用すれば問題ないという。
リンが言うように、カースバイトはインフェクションより格下だそうで、後者はアンデッド化した者が強化されるけど、前者は生前の能力のままアンデッド化するそうだ。
ここにいたゴブリンゾンビは、平均的なゴブリンと力自体は変わりがないというのは戦って理解している。
ただ痛覚もなければ恐れも知らない。
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