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ミルド領
PHASE-972【ガバガバ】
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「メイドさん。私にはしっかりと食事を出してください」
「あの、ですが……」
「なんと!? この勇者のパーティーであるロードウィザードがお願いしているのにですか」
「お前は少しは謙虚さを覚えろ」
「謙虚さを覚えたところでこの世界では通用しませんよ。自身の意見を貫き通すことが大事なのです」
「ぬぅ……」
コイツは稀に含蓄深いから困る……。
知ってか知らずか今の俺には突き刺さるものがあった。
自身の意見を貫いていれば、愛らしい公爵旗を撥ね除けることも出来たかもしれないからな。
なのでヘタレな俺はコクリコに対してそれ以上の事を言えなくなってしまった。
メイドさんは困っていたけども、コクリコが発言一つで俺を黙らせているというのを目にしたもんだからか、コクリコの注文を受け入れていた。
「――――そうそう。こうでないと」
なんだよ。普通にあるじゃないか。だったら俺も肉とか出してほしいんだけどね。
「あまり食べ過ぎないようにしてください」
なんか訳ありなのか、メイドさんがコクリコに恐る恐る伝えていた。
当の本人はガン無視からの咀嚼と嚥下。
メイドさんは空笑いを顔に貼り付けて困っていた。
それを目にしてしまうと、コクリコに続いて我が儘を俺が言ってしまえばメイドさんに迷惑がかかると思ったので、肉が欲しいと口には出せなかった。
結局、俺はコクリコのように我が道を貫けない忖度野郎でしかないわけだ……。
この世界で生きるための人間力において、コクリコに負けたような気がする。
豪快に肉を頬ばるコクリコを眺めつつ、俺はモソモソとパンとスープを食べるだけだった。
いいバターが使用されたパンなので、それだけでも十分に贅沢でおいしいんだけどね。
――――寝室にて横になる。
デカいベッドはゴロゴロと転がっても床に落ちるって心配がないのがいいよね。
窓の方を見れば空の色は藍色が支配しはじめる。わずかに下側がオレンジ色なのがなんとも幻想的。
高い防御壁に囲まれている屋敷ではあるけど、空の風景は楽しませてもらっている。
あのオレンジ色が完全になくなれば、夜の訪れ。
――と、横になって窓から外を眺めているところでノック音。
「よろしいでしょうか?」
ノック音に続くのは女性の声。
「どうぞ」
俺の部屋全体を掃除してくれるメイドさんなのだけど、夜、寝室にいる時に女性が入室を求めてくると、鼓動が早くなるのは童貞だからか。
「失礼します」
一礼しながら入室してくる人物はノックをしたメイドさんとは違った。
正面を向いて俺を見るのは穏和な表情の荀攸さん。
ほっとしたような残念なような気持ちだ。
「どうしました?」
「主殿――」
なんだろうか? なぜ間をつくるのかな? 悪い事でもあったのだろうか。
でも表情は柔和なんだよな。
「――敵襲です」
――……表情と内容が乖離してますよ……。
「敵襲って……」
「はい。公都の中心であるこの屋敷に向かって敵が攻めてきております。数にして五百にはなるでしょう」
「はいぃ!?」
「既に目と鼻の先です」
「ほおぅ!?」
何でだよ! この公都は屋敷のも含めれば六重の堅牢な防御壁によって守られている土地だぞ。
しかも攻め込んできたとしても、外周からここまでは二日はかかる。その間に五百となれば流石に目立つんだから、こっちの兵がしっかりと職質とかかけてるんじゃないの?
五百って見逃せる人数じゃないでしょ。あれか? 個々で潜入して決起したのか?
となると計画的だよね。
なら装備とかもかなり整えている連中かもしれない。
だとしても――だ。
「五百程度なら十分に対応出来るでしょ」
いうても公都の中心地。
屋敷の側には近衛や征北の官舎や詰所もある。もちろん屋敷を囲む防御壁の外側には、一般兵たちの詰所だってある。
いくら休暇を与えているとはいえ、即応できるだけの戦力は残っている。
彼らを即時展開させれば制圧するのにそんなに難しい数ではないだろう。
「そうもいかず、この屋敷に真っ直ぐに迫っております」
なんでやねん! ガバガバじゃねえか!!
「あの、ですが……」
「なんと!? この勇者のパーティーであるロードウィザードがお願いしているのにですか」
「お前は少しは謙虚さを覚えろ」
「謙虚さを覚えたところでこの世界では通用しませんよ。自身の意見を貫き通すことが大事なのです」
「ぬぅ……」
コイツは稀に含蓄深いから困る……。
知ってか知らずか今の俺には突き刺さるものがあった。
自身の意見を貫いていれば、愛らしい公爵旗を撥ね除けることも出来たかもしれないからな。
なのでヘタレな俺はコクリコに対してそれ以上の事を言えなくなってしまった。
メイドさんは困っていたけども、コクリコが発言一つで俺を黙らせているというのを目にしたもんだからか、コクリコの注文を受け入れていた。
「――――そうそう。こうでないと」
なんだよ。普通にあるじゃないか。だったら俺も肉とか出してほしいんだけどね。
「あまり食べ過ぎないようにしてください」
なんか訳ありなのか、メイドさんがコクリコに恐る恐る伝えていた。
当の本人はガン無視からの咀嚼と嚥下。
メイドさんは空笑いを顔に貼り付けて困っていた。
それを目にしてしまうと、コクリコに続いて我が儘を俺が言ってしまえばメイドさんに迷惑がかかると思ったので、肉が欲しいと口には出せなかった。
結局、俺はコクリコのように我が道を貫けない忖度野郎でしかないわけだ……。
この世界で生きるための人間力において、コクリコに負けたような気がする。
豪快に肉を頬ばるコクリコを眺めつつ、俺はモソモソとパンとスープを食べるだけだった。
いいバターが使用されたパンなので、それだけでも十分に贅沢でおいしいんだけどね。
――――寝室にて横になる。
デカいベッドはゴロゴロと転がっても床に落ちるって心配がないのがいいよね。
窓の方を見れば空の色は藍色が支配しはじめる。わずかに下側がオレンジ色なのがなんとも幻想的。
高い防御壁に囲まれている屋敷ではあるけど、空の風景は楽しませてもらっている。
あのオレンジ色が完全になくなれば、夜の訪れ。
――と、横になって窓から外を眺めているところでノック音。
「よろしいでしょうか?」
ノック音に続くのは女性の声。
「どうぞ」
俺の部屋全体を掃除してくれるメイドさんなのだけど、夜、寝室にいる時に女性が入室を求めてくると、鼓動が早くなるのは童貞だからか。
「失礼します」
一礼しながら入室してくる人物はノックをしたメイドさんとは違った。
正面を向いて俺を見るのは穏和な表情の荀攸さん。
ほっとしたような残念なような気持ちだ。
「どうしました?」
「主殿――」
なんだろうか? なぜ間をつくるのかな? 悪い事でもあったのだろうか。
でも表情は柔和なんだよな。
「――敵襲です」
――……表情と内容が乖離してますよ……。
「敵襲って……」
「はい。公都の中心であるこの屋敷に向かって敵が攻めてきております。数にして五百にはなるでしょう」
「はいぃ!?」
「既に目と鼻の先です」
「ほおぅ!?」
何でだよ! この公都は屋敷のも含めれば六重の堅牢な防御壁によって守られている土地だぞ。
しかも攻め込んできたとしても、外周からここまでは二日はかかる。その間に五百となれば流石に目立つんだから、こっちの兵がしっかりと職質とかかけてるんじゃないの?
五百って見逃せる人数じゃないでしょ。あれか? 個々で潜入して決起したのか?
となると計画的だよね。
なら装備とかもかなり整えている連中かもしれない。
だとしても――だ。
「五百程度なら十分に対応出来るでしょ」
いうても公都の中心地。
屋敷の側には近衛や征北の官舎や詰所もある。もちろん屋敷を囲む防御壁の外側には、一般兵たちの詰所だってある。
いくら休暇を与えているとはいえ、即応できるだけの戦力は残っている。
彼らを即時展開させれば制圧するのにそんなに難しい数ではないだろう。
「そうもいかず、この屋敷に真っ直ぐに迫っております」
なんでやねん! ガバガバじゃねえか!!
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