異世界冒険記『ストレージ・ドミニオン』

FOX4

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ミルド領

PHASE-1000【nuke】

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 いやいや、決してそんなことはないだろう……。
 思いっきり殴ったけども、この連中の団長なんだから死ぬことはないよ……ね?
 力なく骨喰ほねばみが地面に落下していることから、戦闘能力は現状では奪ったとは思うけども。
 残心を忘れずに吹き飛んだマジョリカを見ればピクリとも動かない。

 団長が敗れたと察したのか、激しかった剣戟が一瞬にして止む。
 凄いもので剣戟が激しかったというのを止む直前に理解した。
 それだけ目の前の相手にのみ集中してたんだな。
 
 そんな相手に動かないでくれと願うも――、

「ちぃ!」
 ギンっと迫ってくる骨喰を叩き落とす。
 地面に落下した一本が俺に襲いかかってきた。
 襲いかかってはきたが、骨喰の動きは鈍く、数も一本だけ。脅威にはならない。
 だとしても、術者であるマジョリカはまだ戦うという意思も持っていると判断できる。
 見れば起き上がる力はないようだが、倒れたまま手だけを俺に向けて骨喰を操ろうとしている。
 その姿に執念と恐怖を覚えるが、その恐怖を乗り越えての抜刀勝負で勝ったのも事実。
 だからこそ仰け反ることはせず、背筋は真っ直ぐにしてマジョリカを見て、その後、傭兵団を見やる。

「もういい。お前等、全員投降しろ。悪いようにはしない。これ以上やるなら、こっちは俺の後ろに待機する強者に動いてもらう。これ以上は不毛でしかない。そうならないように、極大の力にて制圧させてもらう」
 こういう発言をすれば、ベルやゲッコーさんはスパルタモードから聞き入れてくれるモードになるようで、リンやS級さん達とともに前線へと足を進めてくれる。
 
 威圧だけで自分たちを黙らせた存在と、それに近い力を持った者達が動き出すとなれば、傭兵たちの中には厭戦ムードが漂い始める。
 何より、支柱となる団長が地に伏せたまま、まともに動く事も出来ない状況を目にすれば、士気の低下が絶大なのは言うまでもない。

「ふ……ざけるな……よ……」
 弱々しい声をこちらに向けてくるマジョリカは未だに抵抗しようと、俺に向けて骨喰を放ってくるが、

「無駄だぞ」
 弱々しい回転。
 鋭さのない軌道。
 切り払うのが難しかったのが嘘だったとばかりに簡単にたたき落とせる。
 残火を振るまでもなく、籠手で払うだけで落とせるレベル。

「私はまだ……た、戦える」

「ポーションは携帯しているみたいだからな。使って回復してもいいぞ。俺だって死にかけてから回復したし。これでイーブン。次の勝負で決着をつけたいってなら俺は受けて立つぞ。そうすれば傭兵たちも完全敗北を認めるだろうからな」
 本心はここで終わらせたい。
 なので――、

「次は本気でやる」

「い、ままでが……本気じゃなかったとでも?」
 お、会話にたどたどしさが無くなってきたな。
 使っていいとは言ったが――、既に使用していたようだ。
 倒れた時、俺の死角になっている位置でポーションを服用していたようだな。
 ちゃっかりとしている。やられると同時に素早く回復手段に移行するのは手本にしないと。
 
 マジョリカの対応に感心しつつ――、

「今度はこっちも俺の本当の力を使わせてもらう」
 と、返答し、同時にプレイギアを手にとる。

「なんだ、それは?」

「しっかりと話せるまでに回復したのは重畳。俺の力を刮目する事が出来るからな」
 回復の早さからして、携帯しているのはやはりハイポーションのようだな。
 でも立ち上がるという事はない。
 こっちの力に興味があるのか、それとも気力の方がまだ回復していないのか。それともどちらもなのか。

 ここで終わらせるために、しっかりとした力を見せるのが効果的だというのは、各諸侯を招いての観艦式からのデモンストレーションでも分かっている。
 特に力こそが正義という考え方を持っている連中には、一番響くだろう。

「さあ出てこい! 我が眷属よ!」
 眷属ではないんだけども、あえて眷属という単語を使用して俺の力だと誇示してみる。
 心の中でゲッコーさんには謝ってから名を口にする。

「アーセナルフレーム」
 継いで直ぐにゲッコーさんを見れば、鷹揚に頷いてくれたので良しとしよう。
 見せるくらいならいいだろうと言ったところだ。
 公爵邸の敷地内。向けるプレイギアの前方では大きな光が発生する。
 大きくても流石にミズーリなどの戦艦と比べれば可愛いもの。
 戦車召喚時より大きいくらいだ。

「なんだ……これは……。アイアンゴーレムなのか?」
 初対面だとそう見えるよな。

「紹介しよう。アーセナルフレーム――エスクードだ」
 ゲッコーさんが主人公のゲーム・ペネトレーションシリーズであるハイドアンドシークに登場する核搭載型二足歩行兵器。
 全体をモスグリーンで塗装された、脚部逆関節型のアーセナルフレーム。
 シリーズに一貫して登場するアーセナルフレームの中でも、最も高性能と評価される機体。
 
 別称のエスクードは、確か――ポルトガル語だったかで盾を意味するってゲーム内で言ってた記憶がある。
 抑止力として、核の盾という意味合いからこのネーミングになったってのがゲーム内の設定だったな。

「こんな巨大なゴーレムを扱えると……」

「そうだ!」
 得意げに胸を反らす俺。

「だが、反応がないようだが」
 ――……コイツをゲーム内で操縦するってシーンはないからね……。
 イベントではゲッコーさんが動かしているシーンはあったけども、ゲーム内でプレイヤーが操縦する機会はなかったから、俺には当然、操縦は出来ない。

 据え置きの別シリーズに登場するアーセナルフレームだと、プレイヤーが操縦できるチャプターも存在するんだけどな。
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