1,043 / 1,861
エルフの国
PHASE-1043【心拍センサー】
しおりを挟む
会話を行いつつも捜索は怠らない。
――……とはいっても中々に難しい。
下生えを踏んだ形跡はない。
となるとやはり樹上を移動したのだろうか?
でも上を探してくれているエルフさん達からの反応はない。
エルフの歩法や走法移動による痕跡を探すのは、同じエルフでも難しいということだった。
音も無く移動するエルフ達は、幹や枝を蹴って移動しても、その痕跡が残らないように軽やかでしなやかに移動するという。
これはエルフ全体に言えることで、子供でもしっかりと習得しているそうだ。
子供っていっても人間からしたらとんでもなく年上だからな。習得していて当然ではある。
以前に海賊に捕まっていたエルフの男の子も八百歳を超えていたような記憶がある。
その長い年月によって技量を培っていくんだろう。
「ううむ……」
探し始めて小一時間。
ここでルミナングスさんの部下さん達と合流。
エルフの追跡術を以てしても、やはり見つけることは困難であるようだ。
最悪、既にモンスターに捕食されている可能性もあるかもしれないという暗い発言も出てくる。
「トール、何かないんですか? ポンポンと出してくださいよ。こういう時のへんてこ召喚でしょ」
「俺は国民的マスコットである猫型ロボットではないからな~。後、へんてこ召喚って言うな」
「いいから無い頭を使ってください」
暗い発言を耳にしたのが嫌だったようだけども、だからといって俺に当たるなよな。姉御モードのコクリコさん。
実際、無い頭ってのは否定できないけどさ。
へんてこ召喚と言われたプレイギアの存在を忘れていたんだからな。
早速、それに手を伸ばす。
ストレージデータの中で探索が出来るのが可能なのは――、
「お!」
「どうやらあるようですね」
「あるぞ。片手で持てる便利なのが」
「じゃあ、さっさと出しましょうか」
「ういうい」
プレイギアを手にしていつものように構える。
初めて目にするエルフの皆さんはなぜか後方に下がっていた。
でもって皆さん揃って緊張した面持ち。
にしても距離を取り過ぎだろう。
別段、大きなものを召喚するつもりはないからな。
あれかな? カリオネルとの戦いの時に俺が脅しで山肌にミズーリを召喚したのを話で聞いたのかな?
だからデカいのが出てくると思っているのだろうか?
さっき片手で持てるって言ったのにね。
まあいいけど。
「さあ出てこい! 心拍センサー」
発せば小さな光と共に目の前の地面に顕現するB4サイズのタブレット。
「随分と頼りなさそうなモノですね。まな板ですか?」
それはお前の胸だよ。とは言わないでおこう。
小さい分すぐさま光が消えれば、それを見たコクリコの感想は呆れ口調によるものだった。
「馬鹿にすんなよ。これ使い慣れたらチートだからね」
セラと会話する時、決まってやるゲームであるコンバットフィールドことCF。
そのゲーム内の兵科の一つである、偵察兵が使用できるガジェットがコレ。
手に持てば有り難いことにディスプレイが同時に起動。
電源を入れなくても起動した状態になるのはゲームと同様だな。
ディスプレイに映し出されるのは、分度器のような半月状のデザイン。
円弧の上面を光が左から右へと一定の間隔で走るといったエフェクト。
「うむ」
試しにコクリコやギムロンの立つ方向にガジェットを向けてみる。
使用者から見て前方百八十度、百二十メートル以内の心拍をキャッチするガジェットが二人をディスプレイに映し出す。
味方である緑色の点によって。
俺と行動している二人は、分隊カラーの緑色の点で表示された。
試しに他のエルフさん達にも向ければ、青点で表示。
青点は分隊ではなく味方を意味する。
「よしよし、いいじゃないか」
「そうですか?」
これがなんなのか分からないコクリコは、ディスプレイを見たところで疑問符を浮かべて性能を訝しむ。
「まあ見てろって」
探知範囲は百二十メートルだがら、ビジョンやエルフの視力と比べると頼りなくも思えるが、こんだけ木々が生い茂って視界を妨げる環境下であっても、コイツは障害物を透過して探知できるのが強味。
「――――そんじゃ再開しようか」
合流から再びの散開しての捜索。
下生えの中を疾駆する中で――、
「ほらビンゴ! いいじゃないの」
散開してからしばらくしたところで、心拍センサーに反応があった。
青点が二つと、赤点が五つという表示。
「いいとは言ったが、状況は良くないな」
赤点は敵性を意味している。
敵性である五つの赤点が、二つの青点に翼包囲でジリジリと接近している動きをキャッチする。
――……とはいっても中々に難しい。
下生えを踏んだ形跡はない。
となるとやはり樹上を移動したのだろうか?
でも上を探してくれているエルフさん達からの反応はない。
エルフの歩法や走法移動による痕跡を探すのは、同じエルフでも難しいということだった。
音も無く移動するエルフ達は、幹や枝を蹴って移動しても、その痕跡が残らないように軽やかでしなやかに移動するという。
これはエルフ全体に言えることで、子供でもしっかりと習得しているそうだ。
子供っていっても人間からしたらとんでもなく年上だからな。習得していて当然ではある。
以前に海賊に捕まっていたエルフの男の子も八百歳を超えていたような記憶がある。
その長い年月によって技量を培っていくんだろう。
「ううむ……」
探し始めて小一時間。
ここでルミナングスさんの部下さん達と合流。
エルフの追跡術を以てしても、やはり見つけることは困難であるようだ。
最悪、既にモンスターに捕食されている可能性もあるかもしれないという暗い発言も出てくる。
「トール、何かないんですか? ポンポンと出してくださいよ。こういう時のへんてこ召喚でしょ」
「俺は国民的マスコットである猫型ロボットではないからな~。後、へんてこ召喚って言うな」
「いいから無い頭を使ってください」
暗い発言を耳にしたのが嫌だったようだけども、だからといって俺に当たるなよな。姉御モードのコクリコさん。
実際、無い頭ってのは否定できないけどさ。
へんてこ召喚と言われたプレイギアの存在を忘れていたんだからな。
早速、それに手を伸ばす。
ストレージデータの中で探索が出来るのが可能なのは――、
「お!」
「どうやらあるようですね」
「あるぞ。片手で持てる便利なのが」
「じゃあ、さっさと出しましょうか」
「ういうい」
プレイギアを手にしていつものように構える。
初めて目にするエルフの皆さんはなぜか後方に下がっていた。
でもって皆さん揃って緊張した面持ち。
にしても距離を取り過ぎだろう。
別段、大きなものを召喚するつもりはないからな。
あれかな? カリオネルとの戦いの時に俺が脅しで山肌にミズーリを召喚したのを話で聞いたのかな?
だからデカいのが出てくると思っているのだろうか?
さっき片手で持てるって言ったのにね。
まあいいけど。
「さあ出てこい! 心拍センサー」
発せば小さな光と共に目の前の地面に顕現するB4サイズのタブレット。
「随分と頼りなさそうなモノですね。まな板ですか?」
それはお前の胸だよ。とは言わないでおこう。
小さい分すぐさま光が消えれば、それを見たコクリコの感想は呆れ口調によるものだった。
「馬鹿にすんなよ。これ使い慣れたらチートだからね」
セラと会話する時、決まってやるゲームであるコンバットフィールドことCF。
そのゲーム内の兵科の一つである、偵察兵が使用できるガジェットがコレ。
手に持てば有り難いことにディスプレイが同時に起動。
電源を入れなくても起動した状態になるのはゲームと同様だな。
ディスプレイに映し出されるのは、分度器のような半月状のデザイン。
円弧の上面を光が左から右へと一定の間隔で走るといったエフェクト。
「うむ」
試しにコクリコやギムロンの立つ方向にガジェットを向けてみる。
使用者から見て前方百八十度、百二十メートル以内の心拍をキャッチするガジェットが二人をディスプレイに映し出す。
味方である緑色の点によって。
俺と行動している二人は、分隊カラーの緑色の点で表示された。
試しに他のエルフさん達にも向ければ、青点で表示。
青点は分隊ではなく味方を意味する。
「よしよし、いいじゃないか」
「そうですか?」
これがなんなのか分からないコクリコは、ディスプレイを見たところで疑問符を浮かべて性能を訝しむ。
「まあ見てろって」
探知範囲は百二十メートルだがら、ビジョンやエルフの視力と比べると頼りなくも思えるが、こんだけ木々が生い茂って視界を妨げる環境下であっても、コイツは障害物を透過して探知できるのが強味。
「――――そんじゃ再開しようか」
合流から再びの散開しての捜索。
下生えの中を疾駆する中で――、
「ほらビンゴ! いいじゃないの」
散開してからしばらくしたところで、心拍センサーに反応があった。
青点が二つと、赤点が五つという表示。
「いいとは言ったが、状況は良くないな」
赤点は敵性を意味している。
敵性である五つの赤点が、二つの青点に翼包囲でジリジリと接近している動きをキャッチする。
1
あなたにおすすめの小説
凡人がおまけ召喚されてしまった件
根鳥 泰造
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。
仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。
それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。
異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。
最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。
だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。
祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。
最強の異世界やりすぎ旅行記
萩場ぬし
ファンタジー
主人公こと小鳥遊 綾人(たかなし あやと)はある理由から毎日のように体を鍛えていた。
そんなある日、突然知らない真っ白な場所で目を覚ます。そこで綾人が目撃したものは幼い少年の容姿をした何か。そこで彼は告げられる。
「なんと! 君に異世界へ行く権利を与えようと思います!」
バトルあり!笑いあり!ハーレムもあり!?
最強が無双する異世界ファンタジー開幕!
夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~
青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。
彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。
ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。
彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。
これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。
※カクヨムにも投稿しています
貧弱の英雄
カタナヅキ
ファンタジー
この世界では誰もが生まれた時から「異能」と「レベル」呼ばれる能力を身に付けており、人々はレベルを上げて自分の能力を磨き、それに適した職業に就くのが当たり前だった。しかし、山奥で捨てられていたところを狩人に拾われ、後に「ナイ」と名付けられた少年は「貧弱」という異能の中でも異質な能力を身に付けていた。
貧弱の能力の効果は日付が変更される度に強制的にレベルがリセットされてしまい、生まれた時からナイは「レベル1」だった。どれだけ努力してレベルを上げようと日付変わる度にレベル1に戻ってしまい、レベルで上がった分の能力が低下してしまう。
自分の貧弱の技能に悲観する彼だったが、ある時にレベルを上昇させるときに身に付ける「SP」の存在を知る。これを使用すれば「技能」と呼ばれる様々な技術を身に付ける事を知り、レベルが毎日のようにリセットされる事を逆に利用して彼はSPを溜めて数々の技能を身に付け、落ちこぼれと呼んだ者達を見返すため、底辺から成り上がる――
※修正要請のコメントは対処後に削除します。
異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。
もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。
異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。
ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。
残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、
同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、
追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、
清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……
冷遇された聖女の結末
菜花
恋愛
異世界を救う聖女だと冷遇された毛利ラナ。けれど魔力慣らしの旅に出た途端に豹変する同行者達。彼らは同行者の一人のセレスティアを称えラナを貶める。知り合いもいない世界で心がすり減っていくラナ。彼女の迎える結末は――。
本編にプラスしていくつかのifルートがある長編。
カクヨムにも同じ作品を投稿しています。
神の加護を受けて異世界に
モンド
ファンタジー
親に言われるまま学校や塾に通い、卒業後は親の進める親族の会社に入り、上司や親の進める相手と見合いし、結婚。
その後馬車馬のように働き、特別好きな事をした覚えもないまま定年を迎えようとしている主人公、あとわずか数日の会社員生活でふと、何かに誘われるように会社を無断で休み、海の見える高台にある、神社に立ち寄った。
そこで野良犬に噛み殺されそうになっていた狐を助けたがその際、野良犬に喉笛を噛み切られその命を終えてしまうがその時、神社から不思議な光が放たれ新たな世界に生まれ変わる、そこでは自分の意思で何もかもしなければ生きてはいけない厳しい世界しかし、生きているという実感に震える主人公が、力強く生きるながら信仰と奇跡にに導かれて神に至る物語。
異世界へ行って帰って来た
バルサック
ファンタジー
ダンジョンの出現した日本で、じいさんの形見となった指輪で異世界へ行ってしまった。
そして帰って来た。2つの世界を往来できる力で様々な体験をする神須勇だった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる