異世界冒険記『ストレージ・ドミニオン』

FOX4

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エルフの国

PHASE-1043【心拍センサー】

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 会話を行いつつも捜索は怠らない。

 ――……とはいっても中々に難しい。
 下生えを踏んだ形跡はない。
 となるとやはり樹上を移動したのだろうか?
 でも上を探してくれているエルフさん達からの反応はない。
 
 エルフの歩法や走法移動による痕跡を探すのは、同じエルフでも難しいということだった。
 音も無く移動するエルフ達は、幹や枝を蹴って移動しても、その痕跡が残らないように軽やかでしなやかに移動するという。
 
 これはエルフ全体に言えることで、子供でもしっかりと習得しているそうだ。
 子供っていっても人間からしたらとんでもなく年上だからな。習得していて当然ではある。
 以前に海賊に捕まっていたエルフの男の子も八百歳を超えていたような記憶がある。
 その長い年月によって技量を培っていくんだろう。

「ううむ……」
 探し始めて小一時間。
 ここでルミナングスさんの部下さん達と合流。
 エルフの追跡術を以てしても、やはり見つけることは困難であるようだ。
 最悪、既にモンスターに捕食されている可能性もあるかもしれないという暗い発言も出てくる。

「トール、何かないんですか? ポンポンと出してくださいよ。こういう時のへんてこ召喚でしょ」

「俺は国民的マスコットである猫型ロボットではないからな~。後、へんてこ召喚って言うな」

「いいから無い頭を使ってください」
 暗い発言を耳にしたのが嫌だったようだけども、だからといって俺に当たるなよな。姉御モードのコクリコさん。
 実際、無い頭ってのは否定できないけどさ。
 へんてこ召喚と言われたプレイギアの存在を忘れていたんだからな。
 早速、それに手を伸ばす。
 
 ストレージデータの中で探索が出来るのが可能なのは――、

「お!」

「どうやらあるようですね」

「あるぞ。片手で持てる便利なのが」

「じゃあ、さっさと出しましょうか」

「ういうい」
 プレイギアを手にしていつものように構える。
 初めて目にするエルフの皆さんはなぜか後方に下がっていた。
 でもって皆さん揃って緊張した面持ち。
 にしても距離を取り過ぎだろう。
 別段、大きなものを召喚するつもりはないからな。
 あれかな? カリオネルとの戦いの時に俺が脅しで山肌にミズーリを召喚したのを話で聞いたのかな?
 だからデカいのが出てくると思っているのだろうか?
 さっき片手で持てるって言ったのにね。
 まあいいけど。

「さあ出てこい! 心拍センサー」
 発せば小さな光と共に目の前の地面に顕現するB4サイズのタブレット。

「随分と頼りなさそうなモノですね。まな板ですか?」
 それはお前の胸だよ。とは言わないでおこう。
 小さい分すぐさま光が消えれば、それを見たコクリコの感想は呆れ口調によるものだった。

「馬鹿にすんなよ。これ使い慣れたらチートだからね」
 セラと会話する時、決まってやるゲームであるコンバットフィールドことCF。
 そのゲーム内の兵科の一つである、偵察兵が使用できるガジェットがコレ。

 手に持てば有り難いことにディスプレイが同時に起動。
 電源を入れなくても起動した状態になるのはゲームと同様だな。
 ディスプレイに映し出されるのは、分度器のような半月状のデザイン。
 円弧の上面を光が左から右へと一定の間隔で走るといったエフェクト。

「うむ」
 試しにコクリコやギムロンの立つ方向にガジェットを向けてみる。
 使用者から見て前方百八十度、百二十メートル以内の心拍をキャッチするガジェットが二人をディスプレイに映し出す。
 味方である緑色の点によって。
 俺と行動している二人は、分隊カラーの緑色の点で表示された。
 試しに他のエルフさん達にも向ければ、青点で表示。
 青点は分隊ではなく味方を意味する。

「よしよし、いいじゃないか」

「そうですか?」
 これがなんなのか分からないコクリコは、ディスプレイを見たところで疑問符を浮かべて性能を訝しむ。

「まあ見てろって」
 探知範囲は百二十メートルだがら、ビジョンやエルフの視力と比べると頼りなくも思えるが、こんだけ木々が生い茂って視界を妨げる環境下であっても、コイツは障害物を透過して探知できるのが強味。

「――――そんじゃ再開しようか」
 合流から再びの散開しての捜索。
 下生えの中を疾駆する中で――、

「ほらビンゴ! いいじゃないの」
 散開してからしばらくしたところで、心拍センサーに反応があった。
 青点が二つと、赤点が五つという表示。

「いいとは言ったが、状況は良くないな」
 赤点は敵性を意味している。
 敵性である五つの赤点が、二つの青点に翼包囲でジリジリと接近している動きをキャッチする。
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