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トール師になる
PHASE-1079【髪にも理由があるのね】
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「お二人を連れて集落まで行くことは素晴らしい事ですが、敵視される可能性が高いです。ですが僕が行けば何とかなるかもしれません」
「いや駄目だろ」
同じ言葉で返してあげる。
僕が行けばってのは何かしらのツテがあるからって事なんだろうが、やはり王族をウーマンヤール達の場所に連れて行く事はできない。
それに、そこまで心配する必要はないと思う。
何たってこのダークエルフの美人さん達は、前日、俺達が行った即興茶番を真に受けているからな。
俺を怒らせると大変な目に遭うかもしれない。だから問題が発生すればしっかりと止めてくれるだろう。
よしんば問題が発生したとしても、対応できるだけの力を持っている自負もある。
それよりもツテってのが気になるので、
「ところで何とかなるって――なんで?」
問えば、集落には気心の知れた者がおりますという返答。
返答するエリスの様子はおかしなものだった。
発言が恥ずかしかったのか、長い耳は先端まで真っ赤に染まり、体をくねくねと動かしていた。
――……なんなのその動き?
なんかこれ以上は聞いてはいけないと、俺の野生の勘が囁くので話題を元にもどそうか――。
「そもそもが敵対なんてないよ。何たってこの二人を集落に帰すだけなんだから。本人達もそれを望んでいるしな」
ここよりも営みに苦労するであろう集落の方が自由と思うほどに、ダークエルフの二人はここにはいたくないみたいだ。
「申し訳ありません。我々の汚点だというのに……」
くねくねの動きから真剣になって謝罪するエリスは、俺というより俺の後ろに立つ二人に頭を下げていた。
「コクリコの言うように、今後頑張ってくれればいいさ。でも無理をした梶取はしないように。国のトップのそれは国の崩壊に繋がることになる」
って、これは内政干渉になるのかな?
いや――師としての教えという事にしておこう。
「んじゃあ、そろそろ行こうかの」
酒をゴクゴクと飲みつつギムロンが合流。
酒気を混じらせた息を吐き出しながらの接近に、途端にエリスとサルタナは渋面となる。
とはいえ自分たちの得物を製作してくれた人物なので、強くは出られないようであった。
――――エリスと別れて前回同様、俺、コクリコ、ギムロンの三人で行動。
ここに一番弟子であるサルタナと、美人ダークエルフのお二人ことルマイヤさんとアルテリミーヤを含めた合計六人で集落を目指す。
ここで気になったことがある。
「ハーフエルフであるサルタナもそうだし、友達のハウルーシ君に他のダークエルフさん。そしてお二人も髪は短めですよね」
サルタナとハウルーシ君は短髪。以前に集落の手前で出会ったダークエルフさん達も短い髪型ばかりだった。
美人二人も肩口までしか銀髪を伸ばしていない。
ハイエルフやエルフみたいに長くはなかった。
何かしらのルールでもあるのかな?
短髪といえば、エリスや父親のエルフ王もそうなんだよな。
会食の時も考えたけど、民に接する王族って意味合いで短くしてんのかな?
「長い銀髪を靡かせるのも美しいと思いますよ」
と、継いでキザな発言をすれば、そこはコクリコがしっかりと拾って鼻で笑ってくれる。
「期待に応えられず申し訳ございません……」
「いや、別にいいんですよ」
深々と頭を下げ、ルマリアさんが謝罪してきたから焦ってしまった。
それに続くかのように、アルテリミーヤさんが髪を伸ばさない理由を教えてくれた。
というより伸ばせない理由だった。
これも階級が生み出したルールだった。
この世界のエルフさん達は薄金色の長い髪を靡かせているが、伸ばしている理由がしっかりとあったわけだ。
長い髪には覚悟と矜持があるとされる。
これはエルフが弓を得意としている事から始まった風習だという。
弓の達人であるエルフにとって必要なものは当然、弓を構成する素材。
その中の一つである弦。
戦いにより弦が切れた時、自分の髪を弦として使用し、退くことなく戦い続けるという決意を示している。
そのためエルフの髪は長いのだそうだ。
当然ながら短い者はその覚悟がないというレッテルを貼られるわけだ。
時代が下ることでそのレッテルが階級の中で変化し、民であるテレリやウーマンヤールは自由に髪を伸ばすことを許されないという習わしになったそうだ。
「でも、王族である王様やエリスは髪が短いですよね?」
「王族ですから」
アルテリミーヤさんが話を続けてくれる。
王族が戦いの前線に立つことは、即ち窮地に立たされている状況だというのがエルフの国での考え方。
王族は玉座に座して勝利だけを考えていればいいという。
そんな王族が髪を弦として使用する状況というのは敗北の手前であることから、不吉であるという意味合いもあって、王族はいつの頃からか髪を伸ばさなくなり、今もその慣習に従っているという。
俺の予想とはまったく違った理由だった。
エルダール。ヴァンヤール。ノルドール。テレリ。ウーマンヤール。
髪の長さにはこれまた階級による理由があったわけだ。
「やなりどこも似とるの」
と、ギムロン。
権力者たちの思惑で国は成り立っているというのはギムロンの出自でもある窟でも同様らしいが、最後にここまで固執した国ではないがなと付け加える。
まだ自分の出自である窟がマシだということだろう。
何たって美味い酒と珍しい鉱物で靡くって言ってたもんな。
「いや駄目だろ」
同じ言葉で返してあげる。
僕が行けばってのは何かしらのツテがあるからって事なんだろうが、やはり王族をウーマンヤール達の場所に連れて行く事はできない。
それに、そこまで心配する必要はないと思う。
何たってこのダークエルフの美人さん達は、前日、俺達が行った即興茶番を真に受けているからな。
俺を怒らせると大変な目に遭うかもしれない。だから問題が発生すればしっかりと止めてくれるだろう。
よしんば問題が発生したとしても、対応できるだけの力を持っている自負もある。
それよりもツテってのが気になるので、
「ところで何とかなるって――なんで?」
問えば、集落には気心の知れた者がおりますという返答。
返答するエリスの様子はおかしなものだった。
発言が恥ずかしかったのか、長い耳は先端まで真っ赤に染まり、体をくねくねと動かしていた。
――……なんなのその動き?
なんかこれ以上は聞いてはいけないと、俺の野生の勘が囁くので話題を元にもどそうか――。
「そもそもが敵対なんてないよ。何たってこの二人を集落に帰すだけなんだから。本人達もそれを望んでいるしな」
ここよりも営みに苦労するであろう集落の方が自由と思うほどに、ダークエルフの二人はここにはいたくないみたいだ。
「申し訳ありません。我々の汚点だというのに……」
くねくねの動きから真剣になって謝罪するエリスは、俺というより俺の後ろに立つ二人に頭を下げていた。
「コクリコの言うように、今後頑張ってくれればいいさ。でも無理をした梶取はしないように。国のトップのそれは国の崩壊に繋がることになる」
って、これは内政干渉になるのかな?
いや――師としての教えという事にしておこう。
「んじゃあ、そろそろ行こうかの」
酒をゴクゴクと飲みつつギムロンが合流。
酒気を混じらせた息を吐き出しながらの接近に、途端にエリスとサルタナは渋面となる。
とはいえ自分たちの得物を製作してくれた人物なので、強くは出られないようであった。
――――エリスと別れて前回同様、俺、コクリコ、ギムロンの三人で行動。
ここに一番弟子であるサルタナと、美人ダークエルフのお二人ことルマイヤさんとアルテリミーヤを含めた合計六人で集落を目指す。
ここで気になったことがある。
「ハーフエルフであるサルタナもそうだし、友達のハウルーシ君に他のダークエルフさん。そしてお二人も髪は短めですよね」
サルタナとハウルーシ君は短髪。以前に集落の手前で出会ったダークエルフさん達も短い髪型ばかりだった。
美人二人も肩口までしか銀髪を伸ばしていない。
ハイエルフやエルフみたいに長くはなかった。
何かしらのルールでもあるのかな?
短髪といえば、エリスや父親のエルフ王もそうなんだよな。
会食の時も考えたけど、民に接する王族って意味合いで短くしてんのかな?
「長い銀髪を靡かせるのも美しいと思いますよ」
と、継いでキザな発言をすれば、そこはコクリコがしっかりと拾って鼻で笑ってくれる。
「期待に応えられず申し訳ございません……」
「いや、別にいいんですよ」
深々と頭を下げ、ルマリアさんが謝罪してきたから焦ってしまった。
それに続くかのように、アルテリミーヤさんが髪を伸ばさない理由を教えてくれた。
というより伸ばせない理由だった。
これも階級が生み出したルールだった。
この世界のエルフさん達は薄金色の長い髪を靡かせているが、伸ばしている理由がしっかりとあったわけだ。
長い髪には覚悟と矜持があるとされる。
これはエルフが弓を得意としている事から始まった風習だという。
弓の達人であるエルフにとって必要なものは当然、弓を構成する素材。
その中の一つである弦。
戦いにより弦が切れた時、自分の髪を弦として使用し、退くことなく戦い続けるという決意を示している。
そのためエルフの髪は長いのだそうだ。
当然ながら短い者はその覚悟がないというレッテルを貼られるわけだ。
時代が下ることでそのレッテルが階級の中で変化し、民であるテレリやウーマンヤールは自由に髪を伸ばすことを許されないという習わしになったそうだ。
「でも、王族である王様やエリスは髪が短いですよね?」
「王族ですから」
アルテリミーヤさんが話を続けてくれる。
王族が戦いの前線に立つことは、即ち窮地に立たされている状況だというのがエルフの国での考え方。
王族は玉座に座して勝利だけを考えていればいいという。
そんな王族が髪を弦として使用する状況というのは敗北の手前であることから、不吉であるという意味合いもあって、王族はいつの頃からか髪を伸ばさなくなり、今もその慣習に従っているという。
俺の予想とはまったく違った理由だった。
エルダール。ヴァンヤール。ノルドール。テレリ。ウーマンヤール。
髪の長さにはこれまた階級による理由があったわけだ。
「やなりどこも似とるの」
と、ギムロン。
権力者たちの思惑で国は成り立っているというのはギムロンの出自でもある窟でも同様らしいが、最後にここまで固執した国ではないがなと付け加える。
まだ自分の出自である窟がマシだということだろう。
何たって美味い酒と珍しい鉱物で靡くって言ってたもんな。
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