異世界冒険記『ストレージ・ドミニオン』

FOX4

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トール師になる

PHASE-1084【リセマラ出来ればいいのにね】

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 目の前の二人、挙動からして私兵ではなく正規兵としてポルパロングに仕えていると見ていいかな。
 これが私兵だったら北でも目にした愚連隊みたいな性格の可能性が高いからな。
 目の前の二人と違ってオドオドとせず、俺に対して食ってかかる言い様で凄んでみせるだろうからね。
 もちろん立派な私兵だっているのは理解しているけど、その私兵のトップがハイエロフのバカロングとなると、私兵の質は見なくても察する。

 氏族ガチャに外れた可哀想な正規兵の方には同情もしつつ――、

「それはシーゴーレムの大艦隊を瞬く間に没セシめた俺に対しての脅しと――受け取っていいんですかね?」
 ニッコリ笑顔でしっかりとこっちの力を再度伝えてあげれば、使いのエルフさん二人はビクリと体を震わせる。

「と、とにかく来ていただきたい。話をしていただくだけで結構ですので……」

「あ~はいはい。一人でって事ですか?」
 問うと同時に俺の背後からはカチカチと小気味のいい音。

「いえ、勇者様お一人となると無用な警戒を与えてしまうということでして、主からは従者はお二人までならいいとの事です」
 こっちが赴きやすいようにハードルを下げてくるわけね。
 人数制限している時点で向こうの魂胆は見え見えだけど。

「分かりました。では自分を含めた三人でお伺いします」
 と、返せば、では――と、二人は俺の元から離れていく。
 俺から遠ざかるにつれて足の動きが速くなっていき、早歩きから始まり――最終的には疾駆となって去っていった。

「いや~俺ってかなり人気もあれば、反面、恐れられてもいるようで」

「あの時の芝居が主だけでなく、兵達にもしっかりと波及しているようだな」

「だというのに、こうやってこっちに脅しをかけてくるんですからね。よほど切羽詰まってんですかね」

「だろうな」

「ククリス村の方はお任せしていいですか。こっちの動きが察知されたら何をしてくるか分からないんで――」

「見つかるなと言いたいんだろ」

「愚問ですよね」

「ああ」
 背後でカチカチと音を立てていたのは、光学迷彩を使用していたゲッコーさん。
 不可視状態となれば、さしものエルフさんでもゲッコーさんを捕捉することは出来なかったようだ。
 相手を試すためにワザとカチカチと音を出していたようだけど、それに気付けないほど二人は俺に緊張していたようだ。
 
 カチカチ音からキーンッと高い音に変わると、シュボッ! と続く。
 そして一帯に紫煙のにおい。

「じゃあ監視しといてやるから、トールは二人を選んで屋敷にお邪魔するんだな。もしかしたら大勢でお出迎えしてくれるかもしれんぞ」

「ですね。ならこっちも三人だけど大勢でお邪魔しますよ」

 ――――。

「てな事があったんですよ」

「なんです……と」
 いや、そこはゲッコーさんみたいに、なぁぁぁぁに!? やっちまったな! って言ってほしかったですよ。ルミナングスさん。
 異世界の方にそれを望む事がそもそも間違ってるけども。

「私も同行しましょう。私が側にいれば、シッタージュ殿を牽制することも可能でしょう」

「いやいや、お会いしたいと言っているだけなんで」

「ですが!」

「まずは向こうの言い分を聞きますよ。こういったことは内部の者達より外部の者の方が本音を吐き出しやすいでしょうからね。溜飲を下げさせるのも大事かと」
 ――実際はそうはならないだろうけど。
 追い詰められた原因を作ったの俺だしね。そんな俺が溜飲を下げることなんて出来ないよね。

 それが分かっているから俺の発言に対して、ルミナングスさんは眉間にしわを寄せて眉を吊り上げているわけだし。

「いきなり力を行使するなどという短絡的な行動はとらないでしょうが。まさかもあり得ます」
 むしろそのまさかの展開が普通だと思うんですけどね。あのポルパロングだと。

 でもこれ以上、ルミナングスさんの胃にダメージも与えたくないので、

「戴冠式前ですから大事にはしないでしょう」

「戴冠式前――だからこそとも考えられます」

「ならルミナングスさんは俺の心配よりも、王族の方々の心配をしたほうがいいですよ」
 警戒のために王族の方々の近くで護衛をしてくださいと伝える。
 その王族の側にはカミーユさんとリンファさんもいるからね。
 俺の意図を汲んでくれたのか、ルミナングスさんは深々と頭を下げると、次の行動に移行する。

 ――。

 屋敷の広間では皆が待機してくれている。
 準備万端、いつでも動けるといったところ。
 
「ベル」

「なんだ?」

「ミユキと一緒にこの屋敷を守ってくれ」

「ほお、私を護衛には付けないか」
 もしもの時にここが襲撃を受ければ、使用人さん達に累が及ぶからね。
 最強さんがいてくれれば、こちらも後顧の憂いなく会いに行けると伝える。
 
 自分を必要としないのは嬉しくもあり、寂しくもあると返ってきた。
 そういった気持ちになってくれると俺も嬉しくはあるけど、基本、難敵なんかが現れると、俺の成長のために強制的に戦わせるからね。
 別段ベルがいてもいなくても、強敵イベントとなると結果は一緒だからな。だから別に必要ないです。
 
 ――とは言えなかった。
 
 言えばまた外側広筋を蹴られるもん。
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