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トール師になる
PHASE-1152【軍服美人】
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「どれだけの強敵だったか知らないけど、司令と比べれば弱者なのは必至! 困るのよ。貴男が弱者相手に死にかけると司令が弱く見られるでしょ。それだけは絶対に許されない! 場数を踏んでいるとか聞いて呆れる」
言葉尻に進むにつれ怒号へと変わるのは、憤怒と怨嗟によるものなんだろうな。
実際、一対一という構図となれば間違いなく俺はデスベアラーには勝てなかった。
瞬殺されるのは確定だろう。
もちろん現状の実力で挑んでも、個の武だけでは勝てないのは分かっている。
――……当然、それは目の前のデミタスにも当てはまる……。
現魔王ショゴスが作りだしたという敗者の鮮血によって、デスベアラーの力を受け継いだことで、デミタスの元々の力にデスベアラーの力が付与されるわけだから、実質、以前に俺が戦ったデスベアラー以上の力を有しているわけだしな。
乾ききってへばりつく口内だが頑張って口を開き――、
「……十全か?」
と、問う。
きっと声は震えていただろう。
相対するデミタスが向けてきた蠱惑な笑みでそれは分かった……。
「ええ、十全。しっかりと受け継がれた力を使いこなせるようになった。本当ならここで出会うつもりはなかったけど、これも天運かしらね」
「魔王軍が天運って……」
「それもそうね」
リンファさんの姿から徐々にだが姿が変わっていく。
エルフ特有の透き通るような金髪が濃い金髪へと変わり、隈取りなのか入れ墨なのかは未だに分からないが、目の周りに赤いラインが走る。
碧眼の瞳を閉じ――開かれると、レッドキャップス所属である事を証明する深紅の瞳へと変わった。
その眼光の鋭さに俺はまたも後退させられる。
「おさらい」
と、言いつつ後退する俺へと向かって足を一歩。
「憤怒」
と、言えば尻尾が一つ。
「怨嗟」
と、言えば尻尾が一つ。
「殺意」
と、言えば尻尾が一つ。
「落胆」
と、言えば尻尾が一つ。
――合わせて四つ。
以前の野狐から仙狐へと成長した時に増えた尻尾の数と同じ。
俺に抱く感情を発しつつ、リンファさんの姿から以前、目にした美しい女性へと完全に姿を変える。
次にはデミタスの前に土の壁が現れ、俺との視界を遮る。
攻撃が来ると判断。強張った体で即座に構えるが、直ぐに壁は形を崩して大地に戻った。
「どんな……早着替え術だよ」
「大したものでしょう」
リンファさんとして身に纏っていた薄緑のタイトなワンピースから瞬時に服装が変わる。
以前のモノとも違ったものだった。
この世界の兵士たちが着用する兵服というより、俺が元々いた世界の近代デザインに似通っていた。
それは金髪と金毛からなる尻尾を栄えさせるような白を基調とした軍服のようなデザイン。
赤黒いベレー帽を被っているからか、余計に兵服より軍服としてのイメージの方が強い。
WW2のドイツ軍のように太股部分がダボダボな乗馬用のズボン。
上半身は体に沿った白のジャケット。
ベルや高順氏と相性の良さそうな色味である。
インナーはベレー帽とは違い鮮やかな赤色を覗かせていた。
紅白という何ともお目出度い二色だが、俺としては最悪の展開だ。
「本来ならばこの国をゆっくりと傾けて崩壊させたかったのだけれど――まさかここで貴男――お前たちが来訪するなんてね。魔王軍としてはおもしろくないが、私個人としてはありがたい」
「いつから潜入してたんだ」
「お前たちが来訪するより少し前となるわね。フル・ギルを使用し、欲にまみれた者をそそのかして内部崩壊の下準備に取りかかっていた矢先の再会」
楽しげに企てを話すのは、デミタスが俺を殺す事になんの苦労もないからって事なのだろうか……。
「そんな事をせずに直接に攻めればいいだろうに」
「私達も各地に軍を展開しているから難しいのよ。しかも無能な蹂躙王の軍は湿地帯方面からの北への進軍が一向に進まないときている。本当なら一年前に王都を陥落させて、この地も併呑させていたはずなのにね」
蹂躙王のところで怒気が混じったのは不甲斐なさからか――。
つらつらと口に最高の油でも塗っているかのように語ってくれるデミタス。
――軍勢を送ったところで進軍できないのは、一人の将とその者に率いられた騎兵の圧倒的な強さ。
これに加え、地の利を利用した野戦によって侵攻を阻まれているという。
カリオネルとの戦いである北伐に参加し、しっかりと仕事をこなし、その後、直ぐさま要塞トールハンマーへと帰ってしまったけど、それ以前の魔王軍の侵攻も悉く防いでくれていた頼れる武人――高順氏。
王様やバリタン伯爵なんかが目を輝かせて高順氏の話を聞く姿を目にしたこともあるし、俺が想像できない程の活躍をしてくれているのはデミタスの語りでも理解した。
目の前の魔王護衛軍精鋭の発言には、敵である高順氏の働きに対して称賛も含まれていた。
言葉尻に進むにつれ怒号へと変わるのは、憤怒と怨嗟によるものなんだろうな。
実際、一対一という構図となれば間違いなく俺はデスベアラーには勝てなかった。
瞬殺されるのは確定だろう。
もちろん現状の実力で挑んでも、個の武だけでは勝てないのは分かっている。
――……当然、それは目の前のデミタスにも当てはまる……。
現魔王ショゴスが作りだしたという敗者の鮮血によって、デスベアラーの力を受け継いだことで、デミタスの元々の力にデスベアラーの力が付与されるわけだから、実質、以前に俺が戦ったデスベアラー以上の力を有しているわけだしな。
乾ききってへばりつく口内だが頑張って口を開き――、
「……十全か?」
と、問う。
きっと声は震えていただろう。
相対するデミタスが向けてきた蠱惑な笑みでそれは分かった……。
「ええ、十全。しっかりと受け継がれた力を使いこなせるようになった。本当ならここで出会うつもりはなかったけど、これも天運かしらね」
「魔王軍が天運って……」
「それもそうね」
リンファさんの姿から徐々にだが姿が変わっていく。
エルフ特有の透き通るような金髪が濃い金髪へと変わり、隈取りなのか入れ墨なのかは未だに分からないが、目の周りに赤いラインが走る。
碧眼の瞳を閉じ――開かれると、レッドキャップス所属である事を証明する深紅の瞳へと変わった。
その眼光の鋭さに俺はまたも後退させられる。
「おさらい」
と、言いつつ後退する俺へと向かって足を一歩。
「憤怒」
と、言えば尻尾が一つ。
「怨嗟」
と、言えば尻尾が一つ。
「殺意」
と、言えば尻尾が一つ。
「落胆」
と、言えば尻尾が一つ。
――合わせて四つ。
以前の野狐から仙狐へと成長した時に増えた尻尾の数と同じ。
俺に抱く感情を発しつつ、リンファさんの姿から以前、目にした美しい女性へと完全に姿を変える。
次にはデミタスの前に土の壁が現れ、俺との視界を遮る。
攻撃が来ると判断。強張った体で即座に構えるが、直ぐに壁は形を崩して大地に戻った。
「どんな……早着替え術だよ」
「大したものでしょう」
リンファさんとして身に纏っていた薄緑のタイトなワンピースから瞬時に服装が変わる。
以前のモノとも違ったものだった。
この世界の兵士たちが着用する兵服というより、俺が元々いた世界の近代デザインに似通っていた。
それは金髪と金毛からなる尻尾を栄えさせるような白を基調とした軍服のようなデザイン。
赤黒いベレー帽を被っているからか、余計に兵服より軍服としてのイメージの方が強い。
WW2のドイツ軍のように太股部分がダボダボな乗馬用のズボン。
上半身は体に沿った白のジャケット。
ベルや高順氏と相性の良さそうな色味である。
インナーはベレー帽とは違い鮮やかな赤色を覗かせていた。
紅白という何ともお目出度い二色だが、俺としては最悪の展開だ。
「本来ならばこの国をゆっくりと傾けて崩壊させたかったのだけれど――まさかここで貴男――お前たちが来訪するなんてね。魔王軍としてはおもしろくないが、私個人としてはありがたい」
「いつから潜入してたんだ」
「お前たちが来訪するより少し前となるわね。フル・ギルを使用し、欲にまみれた者をそそのかして内部崩壊の下準備に取りかかっていた矢先の再会」
楽しげに企てを話すのは、デミタスが俺を殺す事になんの苦労もないからって事なのだろうか……。
「そんな事をせずに直接に攻めればいいだろうに」
「私達も各地に軍を展開しているから難しいのよ。しかも無能な蹂躙王の軍は湿地帯方面からの北への進軍が一向に進まないときている。本当なら一年前に王都を陥落させて、この地も併呑させていたはずなのにね」
蹂躙王のところで怒気が混じったのは不甲斐なさからか――。
つらつらと口に最高の油でも塗っているかのように語ってくれるデミタス。
――軍勢を送ったところで進軍できないのは、一人の将とその者に率いられた騎兵の圧倒的な強さ。
これに加え、地の利を利用した野戦によって侵攻を阻まれているという。
カリオネルとの戦いである北伐に参加し、しっかりと仕事をこなし、その後、直ぐさま要塞トールハンマーへと帰ってしまったけど、それ以前の魔王軍の侵攻も悉く防いでくれていた頼れる武人――高順氏。
王様やバリタン伯爵なんかが目を輝かせて高順氏の話を聞く姿を目にしたこともあるし、俺が想像できない程の活躍をしてくれているのはデミタスの語りでも理解した。
目の前の魔王護衛軍精鋭の発言には、敵である高順氏の働きに対して称賛も含まれていた。
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