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トール師になる
PHASE-1159【炎が苦手かな?】
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「さて愚かさはお前を殺し次第、反省しよう。話を挟んでしまったが、どうするのかしら? 保護者二人を召喚するの?」
――不敵に笑んでの挑発は、こちらにソレをさせたくないって思いの裏返しってやつなのは分かっている。
ならば――、
「ん!?」
身構えるデミタス。
俺が召喚をすると思っての動作だろう。
残念、違うんだよな。
雑嚢の中に手を突っ込んで、整理された回復用の小瓶をチェック。
残ったハイポーションは二本。
後はポーション一本とエリクシールが一本か――。
後者の使用は極力避けたいけど、絶対に使いたくないなんて考えはかなぐり捨てないといけない相手でもあるからな。出し惜しみはなしでいきたい。
エリクシールなんかより命の方が大事。
――……なんて思いつつも、RPGやってる時なんかはクリアするまで貴重な消費アイテムを使わないのが貧乏性の俺なんだよな……。
それに回復手段は他にもあるしな。
――そうだな。ここは別の手段で回復もありだ。うまく活用できればバチバチの接近戦を長時間、耐えうることも可能。
よし! 覚悟決めようぜ! 俺!
「さあ! やろうか!」
「喚ばないの? 流石にお前一人で私に挑むのはきついんじゃないかしら」
「心配すんなよ。あの二人は召喚しないけど、他はしっかりと使わせてもらうから」
「どうぞ。あの保護者を喚ばないだけでも私の中で評価は上がったわよ」
「美人の評価が上がるのは嬉しいことだ」
サラッと言えちゃうなんてね。面と向かって女性と緊張せずに話せるようになったのもこの世界に来てからというもの。
そっち方面もしっかりと鍛えられてきている。
――俺も中々に肝が据わっているじゃないか。命の危機だっていうのに、こんな事を思えるんだからな。
「余裕からの軽口なのか、捨て鉢による発言なのか」
「どっちでもないぞ。強者に挑戦する気概からだ」
「蛮勇であっても立ち向かう精神には評価が上がる。頭内で考えていた惨たらしい苦しみによる死を少しは緩和させ、この戦いを手短にして殺してあげましょう」
「ワ~ウレシイ~。クルシムジカンガ、ミジカクナッタゾ」
「わざとらしく語らないでくれる」
「苦しむのは短縮されても殺されるのは嫌だから、全力で抵抗させてもらう」
ブレイズを纏わせた切っ先を向ければ、途端に姿を消すデミタス。
背後に向かって斬りかかれば――タイミングドンピシャ。
――……なんだけども……、フランベルジュによって俺の横薙ぎは受け止められる。
しかも柳眉を吊り上げた表情で。
「私に炎を向けるな!」
強い語気と共に地面からはマッドバインドが俺に迫り、同時に泥パックの左手による貫手。
「突き指しても知らないぞ」
なんて言いながらも、苛烈な眼力によって打つ込んでくる攻撃を防いで受け止めるということはせず、触れる事を避けるために全力で回避を選択。
――……回避を選択して大正解。
俺の背後にあった巨木には大穴という光景だからな……。
フランベルジュで巨木を断ち切ったのにも驚かされるが、それ以上のインパクトだよ。
なんで生身の手でそんな芸当が出来るんだよ……。
というか明らかに突いた手よりも遙かに大きな穴が出来ている……。
子供なら簡単に通り抜けられそうな穴だよ……。
「ふん!」
穴をずっと見ているだけの暇なんて与えてくれるわけもなく、右手だけで持ったフランベルジュを振り下ろせば大地を容易く穿つ一撃。
「躱してばかりだな。常に不格好でもある」
実際、回避優先だから言い返せないね。
体全体を使って下生えの上を猿みたいに飛び回って懸命に避ける姿は、デミタスが言うように華麗さは皆無なことだろう。
手に持つ残火が回避の時に煩わしいとすら思えてしまうくらいだしな。
自分の命をこれまで守ってきてくれた得物に対して失礼極まりない考えに反省をしつつ、常にデミタスの攻撃を警戒。
「そら」
軽いかけ声と共に繰り出される攻撃は、かけ声とは真反対の重々しいもの。
白魚のような手からは想像が出来ない馬鹿力だよ。
敗者の鮮血の効果によってデスベアラーの力を継承しているとはいえ、この強さは間違いなくデミタス自身の修練があってのものだろう。
十全と問えば、十全と返してくるだけはある。
完全に自分の力として使いこなしている。
「やべえな……」
「突破口が開けないといったところかしら?」
「開けないどころかその箇所すらまだ見つけてないよ」
「ならば見つけられぬままに死んでいけ。マッドメンヒル」
今までで見てきた中で一番に大きく硬化された泥による柱。
目の前に出てくれば壁とすら思えるそれを躱すために後退。
「ブランチ!」
「な!?」
壁を思わせる柱から無数に飛び出してくるのは泥の枝。
ご丁寧に先端は鋭利なもの。
「いでで……」
「その声からして軽傷のようね」
火龍装備様々ですよ。
籠手を前面に出したことで顔への直撃は避けられた。
イグニースを咄嗟に出す事が出来なかったのはダメダメだったけど。
「やはり面倒な装備のようね。その程度ですむのだから」
柱の向こう側でそう言いながら、
「ぶお!?」
次には自らが作りだした柱と、そこから伸びていた泥の枝を破壊――というより破砕しながら正面から迫ってくる。
また泥パックの左手かよ。
バックステップで一気に距離を取りつつ左手と縮地に警戒。
なんなんだ。あの左手は?
と、ここでまたも姿を消すので後方を警戒するも――、
「今度は横か!」
カサリと下生えが音を立てる方向は俺の側面。
音の方へと向かって炎を纏った残火を振れば足止めにはなる。
「だから私に炎を向けるなと言っている!」
言葉を荒げつつも動きを止めてくれる辺り、炎が苦手なのかな?
――不敵に笑んでの挑発は、こちらにソレをさせたくないって思いの裏返しってやつなのは分かっている。
ならば――、
「ん!?」
身構えるデミタス。
俺が召喚をすると思っての動作だろう。
残念、違うんだよな。
雑嚢の中に手を突っ込んで、整理された回復用の小瓶をチェック。
残ったハイポーションは二本。
後はポーション一本とエリクシールが一本か――。
後者の使用は極力避けたいけど、絶対に使いたくないなんて考えはかなぐり捨てないといけない相手でもあるからな。出し惜しみはなしでいきたい。
エリクシールなんかより命の方が大事。
――……なんて思いつつも、RPGやってる時なんかはクリアするまで貴重な消費アイテムを使わないのが貧乏性の俺なんだよな……。
それに回復手段は他にもあるしな。
――そうだな。ここは別の手段で回復もありだ。うまく活用できればバチバチの接近戦を長時間、耐えうることも可能。
よし! 覚悟決めようぜ! 俺!
「さあ! やろうか!」
「喚ばないの? 流石にお前一人で私に挑むのはきついんじゃないかしら」
「心配すんなよ。あの二人は召喚しないけど、他はしっかりと使わせてもらうから」
「どうぞ。あの保護者を喚ばないだけでも私の中で評価は上がったわよ」
「美人の評価が上がるのは嬉しいことだ」
サラッと言えちゃうなんてね。面と向かって女性と緊張せずに話せるようになったのもこの世界に来てからというもの。
そっち方面もしっかりと鍛えられてきている。
――俺も中々に肝が据わっているじゃないか。命の危機だっていうのに、こんな事を思えるんだからな。
「余裕からの軽口なのか、捨て鉢による発言なのか」
「どっちでもないぞ。強者に挑戦する気概からだ」
「蛮勇であっても立ち向かう精神には評価が上がる。頭内で考えていた惨たらしい苦しみによる死を少しは緩和させ、この戦いを手短にして殺してあげましょう」
「ワ~ウレシイ~。クルシムジカンガ、ミジカクナッタゾ」
「わざとらしく語らないでくれる」
「苦しむのは短縮されても殺されるのは嫌だから、全力で抵抗させてもらう」
ブレイズを纏わせた切っ先を向ければ、途端に姿を消すデミタス。
背後に向かって斬りかかれば――タイミングドンピシャ。
――……なんだけども……、フランベルジュによって俺の横薙ぎは受け止められる。
しかも柳眉を吊り上げた表情で。
「私に炎を向けるな!」
強い語気と共に地面からはマッドバインドが俺に迫り、同時に泥パックの左手による貫手。
「突き指しても知らないぞ」
なんて言いながらも、苛烈な眼力によって打つ込んでくる攻撃を防いで受け止めるということはせず、触れる事を避けるために全力で回避を選択。
――……回避を選択して大正解。
俺の背後にあった巨木には大穴という光景だからな……。
フランベルジュで巨木を断ち切ったのにも驚かされるが、それ以上のインパクトだよ。
なんで生身の手でそんな芸当が出来るんだよ……。
というか明らかに突いた手よりも遙かに大きな穴が出来ている……。
子供なら簡単に通り抜けられそうな穴だよ……。
「ふん!」
穴をずっと見ているだけの暇なんて与えてくれるわけもなく、右手だけで持ったフランベルジュを振り下ろせば大地を容易く穿つ一撃。
「躱してばかりだな。常に不格好でもある」
実際、回避優先だから言い返せないね。
体全体を使って下生えの上を猿みたいに飛び回って懸命に避ける姿は、デミタスが言うように華麗さは皆無なことだろう。
手に持つ残火が回避の時に煩わしいとすら思えてしまうくらいだしな。
自分の命をこれまで守ってきてくれた得物に対して失礼極まりない考えに反省をしつつ、常にデミタスの攻撃を警戒。
「そら」
軽いかけ声と共に繰り出される攻撃は、かけ声とは真反対の重々しいもの。
白魚のような手からは想像が出来ない馬鹿力だよ。
敗者の鮮血の効果によってデスベアラーの力を継承しているとはいえ、この強さは間違いなくデミタス自身の修練があってのものだろう。
十全と問えば、十全と返してくるだけはある。
完全に自分の力として使いこなしている。
「やべえな……」
「突破口が開けないといったところかしら?」
「開けないどころかその箇所すらまだ見つけてないよ」
「ならば見つけられぬままに死んでいけ。マッドメンヒル」
今までで見てきた中で一番に大きく硬化された泥による柱。
目の前に出てくれば壁とすら思えるそれを躱すために後退。
「ブランチ!」
「な!?」
壁を思わせる柱から無数に飛び出してくるのは泥の枝。
ご丁寧に先端は鋭利なもの。
「いでで……」
「その声からして軽傷のようね」
火龍装備様々ですよ。
籠手を前面に出したことで顔への直撃は避けられた。
イグニースを咄嗟に出す事が出来なかったのはダメダメだったけど。
「やはり面倒な装備のようね。その程度ですむのだから」
柱の向こう側でそう言いながら、
「ぶお!?」
次には自らが作りだした柱と、そこから伸びていた泥の枝を破壊――というより破砕しながら正面から迫ってくる。
また泥パックの左手かよ。
バックステップで一気に距離を取りつつ左手と縮地に警戒。
なんなんだ。あの左手は?
と、ここでまたも姿を消すので後方を警戒するも――、
「今度は横か!」
カサリと下生えが音を立てる方向は俺の側面。
音の方へと向かって炎を纏った残火を振れば足止めにはなる。
「だから私に炎を向けるなと言っている!」
言葉を荒げつつも動きを止めてくれる辺り、炎が苦手なのかな?
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