異世界冒険記『ストレージ・ドミニオン』

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トール師になる

PHASE-1200【見たくても見られない】

 ――思わぬ増援も加入してくれたのは喜ばしいところか。

 恐怖を感じれば逃げる性格と、恩義に報いようとする心意気を併せ持つゴブリン達。
 以前にも思っていたけど、そういった性格だからこそ、欲に駆られて深入りしすぎて失敗するって事がないと思う。
 ミストウルフという俊足も得たからな。戦場では優秀な斥候兵として活躍してくれることだろう。

「ゴブリン達は同じゴブリンであるアルスン翁に任せよう」
 と、独白。
 翁はリズベッドのとこでは忍者やアサシンのような立ち位置だったからな。斥候や偵察もお手の物だろう。
 訓練となれば王都にはS級さん達もいるしね。
 ゴブリン達には潜入偵察を卓抜にこなせる立派な斥候兵に育ってもらおうじゃないか。

「――――よし。それじゃあ行きましょうかね」

「と、勇者殿」

「なんでしょう」
 ルミナングスさんから呼び止められれば、布に包まれたモノを手渡される。
 長さからして百五十センチ前後といったところかな。
 手にすれば布に包まれた中身の感触が伝わってくる。細身のモノだった。
 細身でエルフってところから中身は想像できる。

「娘に渡してください」

「直接、渡せばいいでしょうに」

「今は空元気のようですからね。少し落ち着いてからがいいでしょう」

「分かりました。責任をもって渡します」
 JLTVに乗るシャルナの方を見れば、母親のカミーユさんと姉のリンファさんと話している。
 シャルナとカミーユさんは、リンファさんに対して何とも申し訳なさそうな感じでやり取りをしていた。
 ルミナングスさんが言うように、出立した後に渡そう。

「ではルミナングスさん、次の再会時にはその力に頼らせていただきます」

「もちろんです。瘴気の浄化お任せします」

「任せておいてください。じゃあ、今度こそ行くか!」

「「「師匠!」」」

「おう」
 分かれるのは寂しいもんだけど。

「この国と他とのこれからの繋がりのために励んでくれよな」
 弟子三人は顔を見合わせて、

「はい!」
 と、一番弟子であるサルタナが代表して快活の良い返事をしてくれる。
 三人とも首にぶら下げたいぶし銀ような色からなる認識票を誇らしく見せるかのように、胸を張ってみせる。
 こういった強気な姿を見せられれば、師匠として安心するってもんだ。

「今度、会う時は――」
 
「反撃の時です」
 ここは王としてエリスが応じる。
 瘴気が消え去り、全てが整った時、一大攻勢に出るその時が再会となる。

「出来るだけ早い再会を目指すよ。勇者として」

「分かりました。ファロンド殿同様、瘴気の早期浄化を祈りつつ、皆で力を磨いておきます」
 快活な声を受ければ、瘴気を直ぐさま消し去ってやるという気持ちが強くなるというものだ。
 勇者として、師匠として頑張ろう。

 ――――。

 ――ふむん。

「どうした?」
 移動する中、ダイフクと併走するJLTVの助手席からベルが語りかけてくる。

「なんか寂しくてね」

「別れというものは寂しいものだ。だが瘴気を手早く消し去れば再会もそれだけ早くなる」

「いや、そうじゃなくて」

「ん?」

「俺の弟子達って格好いいのよ。それこそどこに出しても恥ずかしくない弟子なんだよ」

「師匠はまだまだだがな」

「そうなんだよ。弟子達に恥ずかしくないような師匠として励まないといけないんだよ」

「いい心がけだ。それで寂しさとは?」

「いかんせん。人間の俺だとな――」

「ああ。そうだな」
 主語が抜けた内容だったが、ベルはしっかりと理解してくれた。
 チラリと後部座席に座るシャルナを見る。
 シャルナは俺の視線に気付くことなく、隣に座るリンとなにやら言い争い。
 いつもの光景ではあるが、やはり空元気なところが見受けられる。
 そんな空元気なおてんばエルフのシャルナは、千九百年以上の時を過ごしている。
 それでもエルフでは若い存在だ。
 
 俺の弟子達が立派な青年となって活躍するとなると――、千年以上後くらいになるだろう。
 ハーフエルフであるサルタナは、エリス、ハウルーシと違って短命ではあるが、それはエルフという種族の中だけであって、人間から見れば気が遠くなるほどに長命であるのは違いない。

「弟子達が立派に育った姿は見れないんだな~」

「あら、なんならアンデッドになる? いつでもしてあげるけど」

「結構です」
 シャルナの口撃をいなしつつリンがそう言ってくれるが断る。
 俺の場合、二つの意味で成長を見る事が出来ないからな。
 リンは俺の寿命でそう思っている。
 それも答えの一つだが、俺はショゴスを倒してこの世界から元の世界に帰るってのが主目標だからな。
 主目標が達成されたなら、弟子達の成長した姿を見る事は出来ないからね。

「今でも十分に立派だからな。それを目に出来ているだけでも十分だと思うべきか――」
 言い聞かせるように言葉を漏らすも、やはり成人した姿を見たいという想いがあるのも確か。
 
 ファンタジーな世界ってのは、神秘であり酷でもある。
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