1,211 / 1,861
発展と鍛錬
PHASE-1211【存外――柔らかいじゃないか】
しおりを挟む
憧憬の眼差しを向けてくる皆さんを端から端まで見渡したところで――、
「「「「長旅お疲れ様でした!!!!」」」」
と、声を揃えて俺達を労ってくれる。
戦いの時には揃った声のように、素晴らしい連携に期待したいところである。
「有り難う」
馬上にて丁寧な挨拶でこちらも応える中、更にそこからコクリコが前へと出て、馬車の屋根に飛び乗ってからのガイナ立ち。
居並ぶ面々を見下ろして最高に気分は良さそうだけども、
「……ぬぅ……」
なぜか表情が曇る。
新人さんではあるけども、思いの外、自分と位階が同等の者が多いことが原因だろう。
馬車から軽やかに跳躍し、俺が騎乗するダイフクに飛び乗ってくる。
「得心がいきません」
俺の後ろに着地したコクリコが耳打ち。
耳打ちという接近もそうだけど、結構な密着を美少女がしてくるもんだから俺はテンパってしまう。
テンパってしまうが新人さん達の前でもある。
無様な表情は出来ないからポーカーフェイスにて対応しているけども、心臓はバクバクですよ。
コクリコはもっと女の子としての恥じらいを持つべきじゃないの。
王都への途上中、野営時に腰が痛いと言うから擦ってやると言えば、気安く柔肌に触れられるとでも? なんて言ってたくせに、自分は俺にガッツリと体を密着してくるじゃないの。
男に密着するなんてことを気軽にするなんてはしたないぞ。と、年上としては注意しないといけないのだろうけども――。
反面――以外と柔らかいじゃないか。って邪な考えが生まれてしまう。
とういうより、その考えに支配されていく。
まな板だと思っていたが、一応はあるんだな。
――侮っていたよ。
「聞いてますか?」
「聞いてりょ」
「なんで呂律がまわっていないんですか」
お前がくっついているからだよ。
ポーカーフェイスではあるが、鼓動の高鳴りによる精神の高ぶりがどうしても表面に出てきてしまうようだ。
童貞だからね。仕方ないね。
「これでは私は恥をかきますよ」
「だからちゃんと位階を上げるのは約束しているから心配すんなよ。今回のエルフの国での八面六臂の活躍は認めているんだから」
「でしたら黄色級とは言わずにもっと上をお願いしますよ」
くっつくなよ!
なにコイツ!? まさかの色仕掛けで俺を籠絡させようとしているのか!?
だとしてもその胸では……。
「お願いしますよ」
「う~む……」
――……って! なにを考え込んでんだ俺!
十分にその胸によって籠絡されかけているじゃないか。
「駄目! お前はしっかりと俺みたいに地道に向上していくように!」
「けちくさいですね」
「コクリコのためでもあるんだからな」
ここで二階級アップなんてすれば、絶対に調子に乗るもの。
これ以上、調子に乗らせてはいけないからな。
手綱はしっかりと握らせてもらう。
――……それよりも耳打ちを止めて。俺のポーカーフェイスがにやけに変わってしまいそうだから……。
「と、とにかく地道にだ。納得してくれよな」
――…………。
なんだよその間は?
この間にコクリコの温かさと柔らかさを背中で存分に堪能しものいいのかな?
「ハッ!」
堪能するつもりだったけども、何とも馬鹿にしたような返事がくる。
肩越しに見れば琥珀の瞳が半眼となっており、返事と同様に表情も馬鹿にしたものだった。
その表情に俺はコクリコの柔らかさを堪能する以上にイラッとしてしまう。
「納得しろよ。地道が一番だぞ」
「嫌ですね」
コイツ……。王都に戻った途端これだよ。
周囲の面々の認識票を目にして欲が出たな……。
「じゃあその白から変更なしでもいいんだな?」
「八面六臂の私の活躍を一階級昇進だけで済ませれば、他が納得しませんよ。他の者たちの不満を抑えるためにも必要な事だと具申します」
コクリコの活躍。
確かに今までの功績に加えて今回のエルフの国における大活躍を考えると、勇者パーティーの中でも頑張ってくれたのは事実。
最初の頃は調子に乗っていたコクリコを勇者パーティーから追放してやろうと考えてもいたっけ。
追放した後に活躍を耳にしたところで、こちらは土下座しながら泣いて戻ってきて! と、言わない自信しかなかったけども。
冗談はさておき――、励んでいる人材が相応の扱いを受けなければ、やる気に繋がらないし不満も出てくるってのは分かる。
結果、それらが積もり積もることでギルド全体に不協和音が出てくるだろう。
頑張っても正当な評価が受けられないのなら別のギルドに流れたり、自由な野良へと戻る事になるかもしれない。
――それでもいいのですか?
と、至極真っ当なことを己の位階アップの為に耳打ちによって力説してくる。
コレには俺も首肯でしか対応できなかった。
しっかりと背中に伝わる控えめな柔らかさを堪能しながらだけど。
「「「「長旅お疲れ様でした!!!!」」」」
と、声を揃えて俺達を労ってくれる。
戦いの時には揃った声のように、素晴らしい連携に期待したいところである。
「有り難う」
馬上にて丁寧な挨拶でこちらも応える中、更にそこからコクリコが前へと出て、馬車の屋根に飛び乗ってからのガイナ立ち。
居並ぶ面々を見下ろして最高に気分は良さそうだけども、
「……ぬぅ……」
なぜか表情が曇る。
新人さんではあるけども、思いの外、自分と位階が同等の者が多いことが原因だろう。
馬車から軽やかに跳躍し、俺が騎乗するダイフクに飛び乗ってくる。
「得心がいきません」
俺の後ろに着地したコクリコが耳打ち。
耳打ちという接近もそうだけど、結構な密着を美少女がしてくるもんだから俺はテンパってしまう。
テンパってしまうが新人さん達の前でもある。
無様な表情は出来ないからポーカーフェイスにて対応しているけども、心臓はバクバクですよ。
コクリコはもっと女の子としての恥じらいを持つべきじゃないの。
王都への途上中、野営時に腰が痛いと言うから擦ってやると言えば、気安く柔肌に触れられるとでも? なんて言ってたくせに、自分は俺にガッツリと体を密着してくるじゃないの。
男に密着するなんてことを気軽にするなんてはしたないぞ。と、年上としては注意しないといけないのだろうけども――。
反面――以外と柔らかいじゃないか。って邪な考えが生まれてしまう。
とういうより、その考えに支配されていく。
まな板だと思っていたが、一応はあるんだな。
――侮っていたよ。
「聞いてますか?」
「聞いてりょ」
「なんで呂律がまわっていないんですか」
お前がくっついているからだよ。
ポーカーフェイスではあるが、鼓動の高鳴りによる精神の高ぶりがどうしても表面に出てきてしまうようだ。
童貞だからね。仕方ないね。
「これでは私は恥をかきますよ」
「だからちゃんと位階を上げるのは約束しているから心配すんなよ。今回のエルフの国での八面六臂の活躍は認めているんだから」
「でしたら黄色級とは言わずにもっと上をお願いしますよ」
くっつくなよ!
なにコイツ!? まさかの色仕掛けで俺を籠絡させようとしているのか!?
だとしてもその胸では……。
「お願いしますよ」
「う~む……」
――……って! なにを考え込んでんだ俺!
十分にその胸によって籠絡されかけているじゃないか。
「駄目! お前はしっかりと俺みたいに地道に向上していくように!」
「けちくさいですね」
「コクリコのためでもあるんだからな」
ここで二階級アップなんてすれば、絶対に調子に乗るもの。
これ以上、調子に乗らせてはいけないからな。
手綱はしっかりと握らせてもらう。
――……それよりも耳打ちを止めて。俺のポーカーフェイスがにやけに変わってしまいそうだから……。
「と、とにかく地道にだ。納得してくれよな」
――…………。
なんだよその間は?
この間にコクリコの温かさと柔らかさを背中で存分に堪能しものいいのかな?
「ハッ!」
堪能するつもりだったけども、何とも馬鹿にしたような返事がくる。
肩越しに見れば琥珀の瞳が半眼となっており、返事と同様に表情も馬鹿にしたものだった。
その表情に俺はコクリコの柔らかさを堪能する以上にイラッとしてしまう。
「納得しろよ。地道が一番だぞ」
「嫌ですね」
コイツ……。王都に戻った途端これだよ。
周囲の面々の認識票を目にして欲が出たな……。
「じゃあその白から変更なしでもいいんだな?」
「八面六臂の私の活躍を一階級昇進だけで済ませれば、他が納得しませんよ。他の者たちの不満を抑えるためにも必要な事だと具申します」
コクリコの活躍。
確かに今までの功績に加えて今回のエルフの国における大活躍を考えると、勇者パーティーの中でも頑張ってくれたのは事実。
最初の頃は調子に乗っていたコクリコを勇者パーティーから追放してやろうと考えてもいたっけ。
追放した後に活躍を耳にしたところで、こちらは土下座しながら泣いて戻ってきて! と、言わない自信しかなかったけども。
冗談はさておき――、励んでいる人材が相応の扱いを受けなければ、やる気に繋がらないし不満も出てくるってのは分かる。
結果、それらが積もり積もることでギルド全体に不協和音が出てくるだろう。
頑張っても正当な評価が受けられないのなら別のギルドに流れたり、自由な野良へと戻る事になるかもしれない。
――それでもいいのですか?
と、至極真っ当なことを己の位階アップの為に耳打ちによって力説してくる。
コレには俺も首肯でしか対応できなかった。
しっかりと背中に伝わる控えめな柔らかさを堪能しながらだけど。
1
あなたにおすすめの小説
凡人がおまけ召喚されてしまった件
根鳥 泰造
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。
仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。
それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。
異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。
最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。
だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。
祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。
最強の異世界やりすぎ旅行記
萩場ぬし
ファンタジー
主人公こと小鳥遊 綾人(たかなし あやと)はある理由から毎日のように体を鍛えていた。
そんなある日、突然知らない真っ白な場所で目を覚ます。そこで綾人が目撃したものは幼い少年の容姿をした何か。そこで彼は告げられる。
「なんと! 君に異世界へ行く権利を与えようと思います!」
バトルあり!笑いあり!ハーレムもあり!?
最強が無双する異世界ファンタジー開幕!
夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~
青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。
彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。
ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。
彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。
これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。
※カクヨムにも投稿しています
貧弱の英雄
カタナヅキ
ファンタジー
この世界では誰もが生まれた時から「異能」と「レベル」呼ばれる能力を身に付けており、人々はレベルを上げて自分の能力を磨き、それに適した職業に就くのが当たり前だった。しかし、山奥で捨てられていたところを狩人に拾われ、後に「ナイ」と名付けられた少年は「貧弱」という異能の中でも異質な能力を身に付けていた。
貧弱の能力の効果は日付が変更される度に強制的にレベルがリセットされてしまい、生まれた時からナイは「レベル1」だった。どれだけ努力してレベルを上げようと日付変わる度にレベル1に戻ってしまい、レベルで上がった分の能力が低下してしまう。
自分の貧弱の技能に悲観する彼だったが、ある時にレベルを上昇させるときに身に付ける「SP」の存在を知る。これを使用すれば「技能」と呼ばれる様々な技術を身に付ける事を知り、レベルが毎日のようにリセットされる事を逆に利用して彼はSPを溜めて数々の技能を身に付け、落ちこぼれと呼んだ者達を見返すため、底辺から成り上がる――
※修正要請のコメントは対処後に削除します。
冷遇された聖女の結末
菜花
恋愛
異世界を救う聖女だと冷遇された毛利ラナ。けれど魔力慣らしの旅に出た途端に豹変する同行者達。彼らは同行者の一人のセレスティアを称えラナを貶める。知り合いもいない世界で心がすり減っていくラナ。彼女の迎える結末は――。
本編にプラスしていくつかのifルートがある長編。
カクヨムにも同じ作品を投稿しています。
異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。
もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。
異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。
ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。
残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、
同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、
追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、
清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……
異世界へ行って帰って来た
バルサック
ファンタジー
ダンジョンの出現した日本で、じいさんの形見となった指輪で異世界へ行ってしまった。
そして帰って来た。2つの世界を往来できる力で様々な体験をする神須勇だった。
はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~
緋色優希
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる