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発展と鍛錬
PHASE-1214【スローライフに農業は含まれない】
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「随分と久しく感じております」
「そうだな。トール達がエリシュタルトへと行ってからそこまで経過しているわけではないのだがな。随分と長く感じたな」
「ですよね~」
本当、長く滞在していたように感じるよ。
長命なエルフの国が醸している特有の時間の流れでもあったのかな? 沖縄時間みたいな?
師匠になったり、氏族の二人と戦うことにもなったからな。
極めつけはデミタスという強敵との戦闘……。
――……でもってその強敵からもたらされた、三百万以上という兵数を誇る蹂躙王の軍勢……。
「ふぃ~……」
「どうした? 顔色が良くないようだが」
「王様は血色がいいようですね……」
「いやいや、王だけではないでしょう」
「――……そのようですね。バリタン伯爵……」
王様の斜め後ろに立っていた禿頭の伯爵は、破顔で俺へと接近して語りかけてくる。
その禿頭からは汗とともに湯気が濛々と立ち上がっていた……。
伯爵に続いて俺へと近づき挨拶をしてくれるのは、ナブル将軍と心の友であるダンブル子爵。
このお二方の体からも湯気が上がっている。
当然ながら王様も……だ……。
「いやもう本当に……」
呆れを独白にて零してしまう……。
王様に合う前に、あの人は今に始まったことじゃないと思っていたが……、訂正しよう。あの人じゃない。あの人達だったわ……。
――…………なんでこのおっさん達は、俺たちが王都に戻ってきて再会する時、上半身裸の率が高いねん!
なんでこのクッソ寒い中で上半身裸なんだよ!
勇者よ。火龍装備などに頼らなくても問題ないのだぞ。と、言わんばかりに、汗と熱で体中から湯気を上げまくってますね!
でもってその状態で俺を囲んでくるんじゃない!
もはや奥義ですよ!
ムアッとした体による包囲はとんでもないフォーメーションアタックですよ!
ジョットストリームアタック、デルタアタックも驚きのフォーメーションですよ。
王侯貴族奥義・スエットシージアタックと名付けてやりましょうぞ。
加齢臭を纏ったおっさん達が、湯気と汗で蒸らした体にて包囲してくる精神攻撃。
――……オデノ精神世界ハ、ボドボドダ……。
こりゃリンは来なくて大正解だったな。
これが分かっていたから来なかったわけだけども……。
暑苦しいってレベルじゃねえよ……。
「どうしたのだトールよ」
「ああ……いえ……」
思っていても口から漏らすことなく留めておくことが出来る俺は、勇者というより中間管理職。
流石と言うべきはゲッコーさんだな。
こういった包囲に見舞われたくないと思ったのか、中心となる俺から即座に距離を取っているし、その動きを察知した先生とシャルナも、ゲッコーさんと一緒に距離を取りつつ俺に苦笑いを向けていた。
「ところでトールよ。帰ってきて早々だが、土いじりをしてみないか?」
王様が俺に向かってグイッと鍬を差し出してくる。
王様よ。アンタが差し出すのは鍬じゃなくて伝説の剣的な物だろうよ……。
エリスを見習いなさいよ。俺の為に国宝の英雄灰輝でマラ・ケニタルという刀を作ってくれたんだからね。
というかこのクソ寒い時に土いじりって何だよ。
「なんで土いじりなんです? この辺を耕すのはリンのスケルトン達がしっかりと頑張ってくれているでしょうに」
「それはそうなのだが、リン様が使役するスケルトン達ばかりに頼るのは申し訳ないだろう」
王侯貴族の中では古の大英雄であるリンは様付け。
なので例え疲れを知らないアンデッドであろうとも、敬慕の念を抱く存在が使役する存在を酷使するのは申し訳ないという思いに支配されるそうだ。
なので自分たちもアンデッドや民達と一緒になって大地を耕すってことらしい……。
「あの……、王様たちが第一にやらないといけないのは――国政……」
もちろんそこに抜かりはないと胸を張ってくる王様。
うわ~……立派な大胸筋ですね。
再会する度に逞しくなっていってるよ。
見たくはないけども……。
「で、抜かりはないと言いますが、この時間帯の国政は? まだ昼ですよ。一番に励む時間帯でしょう」
「プリシュカに任せている。あれも十六になるからな。私などよりよっぽど頼りになる」
「あ、そっすか……」
娘が有能で本当に良かったと王様は呵々と笑って喜ぶ。
何だろうか……。再会の度に逞しい体と精神になっていくのはいい事ではあるけど、反比例して脳みそが単純になっていっているような気がしてならない……。
好戦的なバリタン伯爵ならいざ知らず、王様たちも単純な行動になっている気がしてならないよ……。
このままいけば馬鹿凸の思考に傾倒しそうで怖いな……。
先生の【王佐の才】が発動しているからそんな事にはないんだろうけども……。
そんな先生と先生が見出した官吏たちがプリシュカの国政をサポートしているって事だから、本当に目の前のおっさん達は必要ないようだ……。
プリシュカの主な政務は、姫様激Loveなライラと官吏たちによる無定量の奉仕によって纏められた提案に目を通し、堆く積まれた羊皮紙に押印していくもののようだ。
――……これ……、簡単に見えてキツいんだよな……。
俺も公爵邸で経験しているからな。
同じことの繰り返しで精神的にしんどいからね。
腱鞘炎にならないように頑張ってもらいたい。
――などとプリシュカの体を気づかいつつ、鍬を地面へと振っていく。
――……俺は何をしているのだろう……。
この寒空の下で大地を耕すとか。
北国の農業学校に体験入学でもしたのかな?
――振って地面から伝わってくるのは、防御壁から近いところは土が柔らかいけども、木壁――つまりは王都の外周付近になってくると土は硬くなっていくということ。
木壁付近はまだまだ手つかずな場所もあるってのが土いじりをしていると分かってくるね。
――……農家さん達はこれを延々と行うわけだ……。
そして春になれば種まきを行い、無事に育つかをしっかりと見守り、収穫からの脱穀などの作業を行う。
穀物や野菜を育てるのは本当に大変なことだ。
畜産農家の方々の場合は、命と向き合うために休みなしで家畜の世話をするんだよな。
うん……。俺の知っているラノベとは違う……。
農業系のスローライフジャンルは結構あるけど、農業=スローライフってのが間違いなのは今しっかりと理解した。
鍬を振り下ろし続けて分かるのは、農業はスローライフから対極に位置する作業だということだ……。
スケルトン達が昼夜を問わず頑張ってくれているし、王都にも人が流れてきているみたいだけど、王都の規模に対してまだまだ人手が足りていないのが実情のようだ。
もっともっとこの地を中心として人々を集めていかないとね。
「そうだな。トール達がエリシュタルトへと行ってからそこまで経過しているわけではないのだがな。随分と長く感じたな」
「ですよね~」
本当、長く滞在していたように感じるよ。
長命なエルフの国が醸している特有の時間の流れでもあったのかな? 沖縄時間みたいな?
師匠になったり、氏族の二人と戦うことにもなったからな。
極めつけはデミタスという強敵との戦闘……。
――……でもってその強敵からもたらされた、三百万以上という兵数を誇る蹂躙王の軍勢……。
「ふぃ~……」
「どうした? 顔色が良くないようだが」
「王様は血色がいいようですね……」
「いやいや、王だけではないでしょう」
「――……そのようですね。バリタン伯爵……」
王様の斜め後ろに立っていた禿頭の伯爵は、破顔で俺へと接近して語りかけてくる。
その禿頭からは汗とともに湯気が濛々と立ち上がっていた……。
伯爵に続いて俺へと近づき挨拶をしてくれるのは、ナブル将軍と心の友であるダンブル子爵。
このお二方の体からも湯気が上がっている。
当然ながら王様も……だ……。
「いやもう本当に……」
呆れを独白にて零してしまう……。
王様に合う前に、あの人は今に始まったことじゃないと思っていたが……、訂正しよう。あの人じゃない。あの人達だったわ……。
――…………なんでこのおっさん達は、俺たちが王都に戻ってきて再会する時、上半身裸の率が高いねん!
なんでこのクッソ寒い中で上半身裸なんだよ!
勇者よ。火龍装備などに頼らなくても問題ないのだぞ。と、言わんばかりに、汗と熱で体中から湯気を上げまくってますね!
でもってその状態で俺を囲んでくるんじゃない!
もはや奥義ですよ!
ムアッとした体による包囲はとんでもないフォーメーションアタックですよ!
ジョットストリームアタック、デルタアタックも驚きのフォーメーションですよ。
王侯貴族奥義・スエットシージアタックと名付けてやりましょうぞ。
加齢臭を纏ったおっさん達が、湯気と汗で蒸らした体にて包囲してくる精神攻撃。
――……オデノ精神世界ハ、ボドボドダ……。
こりゃリンは来なくて大正解だったな。
これが分かっていたから来なかったわけだけども……。
暑苦しいってレベルじゃねえよ……。
「どうしたのだトールよ」
「ああ……いえ……」
思っていても口から漏らすことなく留めておくことが出来る俺は、勇者というより中間管理職。
流石と言うべきはゲッコーさんだな。
こういった包囲に見舞われたくないと思ったのか、中心となる俺から即座に距離を取っているし、その動きを察知した先生とシャルナも、ゲッコーさんと一緒に距離を取りつつ俺に苦笑いを向けていた。
「ところでトールよ。帰ってきて早々だが、土いじりをしてみないか?」
王様が俺に向かってグイッと鍬を差し出してくる。
王様よ。アンタが差し出すのは鍬じゃなくて伝説の剣的な物だろうよ……。
エリスを見習いなさいよ。俺の為に国宝の英雄灰輝でマラ・ケニタルという刀を作ってくれたんだからね。
というかこのクソ寒い時に土いじりって何だよ。
「なんで土いじりなんです? この辺を耕すのはリンのスケルトン達がしっかりと頑張ってくれているでしょうに」
「それはそうなのだが、リン様が使役するスケルトン達ばかりに頼るのは申し訳ないだろう」
王侯貴族の中では古の大英雄であるリンは様付け。
なので例え疲れを知らないアンデッドであろうとも、敬慕の念を抱く存在が使役する存在を酷使するのは申し訳ないという思いに支配されるそうだ。
なので自分たちもアンデッドや民達と一緒になって大地を耕すってことらしい……。
「あの……、王様たちが第一にやらないといけないのは――国政……」
もちろんそこに抜かりはないと胸を張ってくる王様。
うわ~……立派な大胸筋ですね。
再会する度に逞しくなっていってるよ。
見たくはないけども……。
「で、抜かりはないと言いますが、この時間帯の国政は? まだ昼ですよ。一番に励む時間帯でしょう」
「プリシュカに任せている。あれも十六になるからな。私などよりよっぽど頼りになる」
「あ、そっすか……」
娘が有能で本当に良かったと王様は呵々と笑って喜ぶ。
何だろうか……。再会の度に逞しい体と精神になっていくのはいい事ではあるけど、反比例して脳みそが単純になっていっているような気がしてならない……。
好戦的なバリタン伯爵ならいざ知らず、王様たちも単純な行動になっている気がしてならないよ……。
このままいけば馬鹿凸の思考に傾倒しそうで怖いな……。
先生の【王佐の才】が発動しているからそんな事にはないんだろうけども……。
そんな先生と先生が見出した官吏たちがプリシュカの国政をサポートしているって事だから、本当に目の前のおっさん達は必要ないようだ……。
プリシュカの主な政務は、姫様激Loveなライラと官吏たちによる無定量の奉仕によって纏められた提案に目を通し、堆く積まれた羊皮紙に押印していくもののようだ。
――……これ……、簡単に見えてキツいんだよな……。
俺も公爵邸で経験しているからな。
同じことの繰り返しで精神的にしんどいからね。
腱鞘炎にならないように頑張ってもらいたい。
――などとプリシュカの体を気づかいつつ、鍬を地面へと振っていく。
――……俺は何をしているのだろう……。
この寒空の下で大地を耕すとか。
北国の農業学校に体験入学でもしたのかな?
――振って地面から伝わってくるのは、防御壁から近いところは土が柔らかいけども、木壁――つまりは王都の外周付近になってくると土は硬くなっていくということ。
木壁付近はまだまだ手つかずな場所もあるってのが土いじりをしていると分かってくるね。
――……農家さん達はこれを延々と行うわけだ……。
そして春になれば種まきを行い、無事に育つかをしっかりと見守り、収穫からの脱穀などの作業を行う。
穀物や野菜を育てるのは本当に大変なことだ。
畜産農家の方々の場合は、命と向き合うために休みなしで家畜の世話をするんだよな。
うん……。俺の知っているラノベとは違う……。
農業系のスローライフジャンルは結構あるけど、農業=スローライフってのが間違いなのは今しっかりと理解した。
鍬を振り下ろし続けて分かるのは、農業はスローライフから対極に位置する作業だということだ……。
スケルトン達が昼夜を問わず頑張ってくれているし、王都にも人が流れてきているみたいだけど、王都の規模に対してまだまだ人手が足りていないのが実情のようだ。
もっともっとこの地を中心として人々を集めていかないとね。
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