異世界冒険記『ストレージ・ドミニオン』

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矮人と巨人

PHASE-1337【虎に敵無し】

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「バックアタックは可能か?」

『問題ないよ。その時がきたら後方から攻めるよ。まずそっちは中央を目指して。この拠点の造りで迷うことはないから』
 すでに拠点の造りを把握できるくらいに、シャルナ達は深く侵入しているみたいだな。
 潜入スキルが低いであろうタチアナを連れての先導役でもあるからな。そこだけを切り取ってのスキルだけでも凄いとしか言いようがない。
 本当、ベルとゲッコーさんの存在が大きすぎる。
 この二人によってシャルナの実力が霞んでしまっているからな。
 もっと早くに紫色級コルクラを首からさげさせるべきだった。
 リンと同時でもなんの問題もなかったよな。
 俺自身、人の素養を見抜く鑑識眼を鍛えないといけないな。

「トール。派手に移動しましょう。派手に動けば少なからず相手も行動を起こしてくれるかも知れませんよ」

「そうだな」
 俺達としては七人以外にもいるというインパクトも与えたいし、それならもっと派手に行動してもいいよな。
 この森に籠もっていた魔王軍は俺の力を知らないからな。
 ならばその力を使用することで、見たこともないモノが突如として現れれば、俺達以外にも敵がいるという憶測に傾倒することにもなるかもしれない。
 
 見た目がゴーレムだと魔法による召喚って考えになるだろうけど、

「コイツなら――」
 プレイギアを取り出して、

「お久しぶりのティーガー1」
 発して拠点の大通りへと向けると、大きな輝きが発生。

「おお!」
 ミルモンが驚きの声を上げる中で輝きがおさまっていき、出てくるのは、

「こ、鋼鉄の象ですか……」
 と、これまた初めて目にするパロンズ氏が、目を見開いてティーガー1を見る。
 以前にコレを目にしたシャルナも、同じような事を言っていたような記憶がある。
 人型に近いゴーレムとは違う巨大な鉄の造形。
 味方でも初めて見れば驚くのだから、相手も同様のリアクションを取ってくれることだろう。
 
 ――車両内部に乗り込んでからプレイギアで操作準備をする前に、

「さあ乗って」
 言えばコクリコは軽やかにティーガー1へと立ち、遅れてパロンズ氏が樽型ボディでなんとかよじのぼれば、

「このまま行ってください」

「お、タンクデサントだな」

「ちょっとなに言っているか分かりません」

「サンドウィッチ食べたくなるな」

「……いや、本当になに言ってるか分かりませんよ」
 唐突なサンドウィッチ発言にコクリコが引き気味だった。
 言って後悔するネタってあるよね……。
 
 コクリコは外側で何か起こった時に即応したいということからのガイナ立ちにて外で待機。
 パロンズ氏もコクリコを真似つつ、外側で腰を下ろす。
 戦車跨乗こじょうを選択した二人を乗せつつ、

「木々を切り倒し、大地を整地させたことを後悔させてやる」
 木々が生い茂り、隆起がひどい大地を移動するとなると、無限軌道でもきついものがあるが、整地となれば移動に脅威なし!

「兄ちゃん。悪い顔だね」

「コイツに乗った時の俺はテンションが高くなるのだ」

「確かにこの鉄の箱は凄そうだね」

「凄そうじゃなく、凄いのだよミルモン君」

「楽しみだよ」

「では、パンツァー・フォー」
 言いつつプレイギアのアナログスティックを前へと傾けて前進させる。

「トール」

「おう、即反応だな」
 コクリコの警戒よりも速く、俺が手にするプレイギアのディスプレイに映し出されるミニマップに赤点が映る。

「数は四か」
 赤点で確認する中、直ぐにディスプレイのメイン画面に映るのは、

「またデカいのが出てきたな」
 フルプレートにタワーシールドを装備した巨人。

「タワーシールドっていうか、壁だな」

「確かに壁だね。で、あいつ等はなんて種族かな?」

「面頬で顔が隠されているけど、鎧からでも分かる力士体系の五メートル級となれば、トロールかな」
 ミルモンに返していれば、

「ファイヤーボール」
 と、外から聞こえてくる。
 視界に入れば即攻撃のコクリコ。
 向こうが誰何をする暇も与えない。
 まあ、どのみちこちらに対して攻撃をしてくるのは間違いないだろうけど。
 アドンとサムソンからも同時に放たれ、三つの火球が横隊中心部分に着弾し、爆ぜる。
 オスカーとミッターは未使用だったようで、火球はスイカサイズだったが、それでも十分な威力ではある――ものの、

「そんなものが通用するか!」
 壁を思わせるタワーシールドを前面に展開されれば、コクリコの通常バーションのファイヤーボールでは、ダメージを与えることは難しかったようだ。
 追撃とばかりにパロンズ氏もクラッグショットを唱えて、人型サイズの石を撃ち放つけども、それも容易くはじき返されてしまう。
 
 あれだけデカい盾だと、それなりの質量を凄い速度でぶつけないと意味はないようだな。
 盾もそうだけど、それを手にしているトロール達の重量もあるから、余計に威力のあるものをぶつけないと意味がない。

「兄ちゃん。この乗り物でぶつかれば余裕なんじゃない?」

「このティーガー1の馬力と重量なら、然しものトロールであっても止めることは難しい――と思うような、思わないような」
 ファンタジー世界の怪力が重装備で四人となれば、戦車であっても止めてきそうな気はする。

「ちなみにあの四人が味方になる巨人だと思うか? ミルモン」

「違うだろうね」
 なら脅威として対処しよう。

「兄ちゃんぶつけちゃえ!」
 気合い十分のミルモンだけども、

「まあ、そんな使い方はしないけどな。コクリコ」

「分かりました。パロンズ、降りて距離を取りますよ」
 なぜ? とは聞かずに素早くティーガー1から降りて離れる辺り、パロンズ氏は冒険者として行動に無駄がないよ。

「逃がすな! その鉄の箱を吹き飛ばしてから捕らえるぞ」

「そりゃ無理な話だ」
 トロール達の大地を震わせる歩みは、一般冒険者や兵士たちの心胆を寒からしめるには十分な迫力。
 しかも重装備による歩みだから、迫力も倍加だ。
 以前、洞窟で戦ったトロールが目の前のような重装備タイプだったなら、俺達も無事では済まなかっただろうな。

 今なら生身でも負ける事はないという自信に漲っているけども――、

「たまには活躍させないとな」
 言いつつ照準を横隊中央に定める。
 L2トリガーで照準。画面中央の赤い円が徐々に絞り込まれていき――円が緑に変わる事で、撃てば当たるの合図。
 砲弾は徹甲弾を選択。

「フォイヤー!」
 力強い声と共にR2トリガーを引くことで、強固なモノでも易々と破壊してしまいそうな発射音と、戦車内であっても伝わってくる衝撃。
 照準を定めた横隊中央にいるトロールの一人に命中すれば、鋼鉄のタワーシールドは存在など無意味とばかりに原形を留めることはなく、その盾に守られていた重装備のトロールの体も原形を留めてはいなかった。
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