異世界冒険記『ストレージ・ドミニオン』

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矮人と巨人

PHASE-1344【結局、来るのかよ!】

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「フロックエフェクトによるストーンウォールに、プロテクションでようやく防げるか。脅威だな」
 言う割に声は落ち着いている。
 二重の石で出来た壁を貫通したまではよかったけど、こちらサイドでも大活躍するプロテクションによって防ぎきった。
 瞬時に三重の障壁魔法を使用する実力。
 図体と数による戦い方から脳筋タイプかと思ったけども、指揮官という立場は伊達じゃないな。

「器用なことで」
 キューポラから上半身を出して言えば、得意げに口角を上げてくる。
 鬼らしい立派に伸びた牙が主張してくる口元。
 大した相手ではあるが、こちらとしても収穫はあった。
 蹂躙王ベヘモト親衛隊である巧鬼が使用する障壁魔法。
 三重の内の二重までしか破壊できなかった――のではなく、二重までは破壊が可能なわけだ。
 
 WW2ダブダブツーの中でも脅威となった戦車である、ティーガー1のアハト・アハトでここまでの事を可能とするのならば、それ以降のモダンウェポンなら突破は難しくない。
 8.8㎝でこれなら、120㎜なんかを装備している第三世代以降の戦車ならば、十分に対応可能な――はず。
 つまりはゲッコーさんとS級さん達なら問題なく対応が可能な兵器を保有しているということになる。
 ――まあ、あの人達だと生身とナイフだけでも十分に対応できそうなんだけども。
 王都に戻ったら、巧鬼のレベルをレポート作成して先生に提出しないとな。

「よっと」
 考えつつも次なる一撃を発射するけども、同様の方法で防がれるし、同様に二重の壁までは破壊できた。

「ふざけた乗り物だな!」
 余裕かと思っていたけど、立て続けに攻撃を受ければ、声には怒りが混ざってくる。
 アハト・アハトでも脅威にはなっているご様子。
 実際に周囲の兵達は、いつ自分たちに向けられるのかという思いがあるのか、警戒することに傾倒しているようだった。

「もういっちょ!」
 左肩ではミルモンが右ストレートを繰り出しながら次を催促してくるので、それに従ってR2トリガーを引く。

「いい加減――くどいぞ!」
 ハルダームは不愉快さを爆発させるように地面を一踏み。
 その動作と俺のトリガーを引く動作が同じタイミングだったところで、

「ありゃ!?」
 発射と同時にティーガー1が大きく傾く。
 これによって砲弾はハルダームへと飛ぶことはなく、その横を通り過ぎて後方に着弾。
 竪穴住居の壁に大穴が出来た。

「まったく。我が屋敷を――まあ、用が済めばどうでも良い場所ではあるがな」
 と、言いつつ、

「見た目通りの重さと堅牢さである。我がマッドメンヒルでは貫くことは出来なかったか。傾けるだけで精一杯とはな」
 十分に凄いと思うけどな。

「さて、こちらとしてはその攻撃に対して対応手段が生まれた。出てきてはどうだ?」
 ほう、この無限軌道の走破力を理解できていないようだな。

「兄ちゃん。なんか見下された言い方されてるよ!」
 喧嘩っ早いミルモンは、ハルダームの語調が気にいらなかった様子。
 挑発に乗って生身で戦ってやろうといった感じ。

「どうするの?」

「そうだな~」
 相手の言うように対応手段が出来ているからな。
 三重の障壁で防がれるし、マッドメンヒルで傾かされれば射線がずらされるってのはこれからも続くだろう。
 行進間射撃で接近しても同様の対応をしてくるだろうしな。
 
 ――うむ。その他を倒すのには無類の強さを有しているけど、対応してくる強者相手だと、小回りが利かないのが弱点となってしまうかもれん。

「おう!?」
 ボンボンッ! と、ティーガー1に着弾してくるのは、その他と評価する者達のファイヤーボールなんかの魔法。
 的がデカいし、死角もあるから側面からの攻撃なんかは対応できないのも弱点だな。

「今も昔も戦車が真の力を発揮するためには、戦車単体のパフォーマンスだけでなく、随伴歩兵が死角を対応してくれないといけない」
 残念ながら現状ではそのパフォーマンスは発揮できない。
 相手の方が数が多いから、ティーガー1に随伴できるメンバーがこちらにはいない。

「つまりは?」

「手ずから相手をしてやるさ」

「そうこなくっちゃ!」

「ティーガー1だけを相手にしていれば良かった。と、後悔させてやろうじゃないか」

「だね♪ 搭乗する者がその乗り物以上に脅威だったという事を分からせてやろうよ。そっちの方が浪漫あるし」
 浪漫あるとか言われると、俺の琴線が刺激されるよ。
 俺を高揚させるのが上手いようだな。ミルモン。
 
「鎮座すべき存在である我が狙われる状況が続いているが、どうにかならんのか?」
 と、ハルダームが不満を漏らせば、アハト・アハトにて足取りが鈍くなっていた連中に勢いがつく。
 大した威光と求心力だ。
 傾いた状態で砲塔を動かし、接近してくる敵集団へと狙いを定めてHE弾を撃ち込む。
 狙うのは集団先頭と地面。
 
 着弾すれば地面と共に先頭の兵達の血肉が土煙と混じり合う。
 その光景に敵の目が向いているところでキューポラから出て体勢を――!?

「ほう!?」

「防ぐか」

「なんて力なんだよ」

「その力を防ぐ――いや捌く技量は相当だな」
 キューボラから出たところを狙ってからのハルダームの接近による攻撃。
 部下と違い、HE弾の生み出した光景と部下の損耗を気にすることなく俺へと迫ってくるのはある意味、戦士としては最適解なんだろうな。

「ていうか、前線に出ないで鎮座しておけよ!」

「そうしたいのだが、好機となれば仕掛けたくもなる。重量ある鉄の象から生身が出てくるのだ。狙いたくなるのも仕方ないだろう」
 まったく。

【指揮官や王というのは後方で鎮座してればいいのだ。ゆとりあるその姿を目にすることで、配下にもゆとりが生まれるというもの】
 ――って発言を撤回してもらいたいね!

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