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矮人と巨人
PHASE-1365【ミルモンが見通したもの】
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「そちらの会話が済むまで待っていたのだ。だからそのような目で見ないでもらいたいな。ドワーフ族よ」
「好敵手であり、尊敬する存在でもあるのでね。強制的に従わせているとなれば怒りも感じてしまうものだ。上位悪魔よ!」
「我々もそれなりの敬意を払って協力をしてもらっている。ある程度の自由と命は保証しているのだからな」
「それは軍監である貴殿がいたからと考えるべきかな? もし指揮官とその部下達だけだったならば、ボロ雑巾のように扱われていたと考えられる」
「――耳が痛いな。ドワーフ族」
パロンズ氏の発言はあながち間違いじゃないとばかりに、ヤヤラッタは鷹揚に頷いてみせる。
「好敵手を庇護してくれていた事には礼を述べる。そして話が通じる以上、我々は話し合いでと考えている――ですよね。会頭?」
「会話で解決できるなら万々歳ですね」
ハルダームとは違うからな。話の分かる相手なら対話が一番いいんだ――けども。
「お断りだな」
バッサリだな。
「まあ、そう返してくるよね」
「当然だろう。我らが主である魔王様に敵対する者たちである以上、我らは戦うだけだ。なによりもデミタスが仙狐となって勇者を狙うという事を考えれば、それだけ護衛軍の同胞たちの命が奪われたということだろうからな。それこそデミタスが私怨で動くとなれば、デスベアラー殿も――」
「強敵だったし、尊敬できる武人だった」
「だった――か。となれば我々は怨敵を相手にしなければならない。それに上の方で我らが同胞であるモルンの命を奪った以上、我々は互いが全滅するまで戦わないとな!」
語末に進むほどに強くなっていくヤヤラッタの語気。
連動するように十四人の部下たちからも、体から闘気を迸らせるような幻視。
モルンなる存在はシャルナが初の空戦で倒した、出来る十体長だったレッサーデーモンの事だろう。
「会頭」
「仕方ないですね。パロンズ氏、戦いは避けられないようです」
「そのようですね」
手斧を持ち、左腕に括り付けたバックラーを心臓部分に留めて構える。
「我が自伝に有能な敵であったと記しましょう。ヤヤラッタという名を」
「御免こうむる。魔導の少女よ」
「ロードウィザードと呼んでもらいたいものですね――ファイヤーボール!」
先制攻撃とばかりにコクリコの放つファイヤーボール。
戦闘することが確定していたとばかりに、俺達のやり取りの間に装身具での強化を済ませていたようで、バランスボールサイズの火球をアドンとサムソンと共に放つ。
「よく練られている。初歩でこれなら、ロードウィザードという称号も頷ける」
言いつつ得物であるハルバートを諸手に握ったまま不動の姿勢。
プロテクションを自らが使用しなくても問題なしとばかりの姿勢。
その証拠に取り巻きの数人が、プロテクションを発動してコクリコの火球を防ぐ。
障壁にぶつかる火球が爆ぜると同時に、障壁を包むように炎が広がって覆うと、勢いのある炎が障壁の向こう側まで漏れ出していた。
「あっつ!」
と、一人の取り巻きが言うほどに、コクリコのファイヤーボールの威力は強力だったようである。
やり手の取り巻きみたいだけども、完全に防ぎきれないところから察するに、今の俺達が苦戦する相手ではない。
「この程度で熱いなどという言葉を漏らす時点で、彼我の力量差は分かりました。我らの圧勝で終わりそうですね!」
強者という立場でいたいコクリコが数歩歩き、先頭に立つ。
「まったくだね!」
と、本日レビテーションを習得し、尚且つ大活躍だったからか、コクリコに負けないほどの強い語気を発しつつ、シャルナも俺達の前に立つ。
「まったく、俺のとこの女性陣は……」
強いのはありがたいけども、本来ならば後衛の存在が、揃いも揃って前に立つなよ……。
まあコクリコに関しては諦めているけども、シャルナまで前に立つとはね……。
「ん~」
俺がやれやれと肩を竦めている中、俺の左肩ではミルモンが目を細めて上を見る。
一点集中の睨み。
その睨みに上にいるキュクロプスが脅えていた。
ペットボトルサイズによるただの可愛い睨みで怖がるとか、メンタルおぼろ豆腐すぎるだろ。なんだあの一本角の巨人は……。
「兄ちゃん」
「どうしたミルモン。あんまりあのデカいのを怖がらせちゃダメだぞ。被害者という立場でもあるんだから」
「そうじゃなくてその奥だよ。あのでっかいのの後ろ」
言いつつ羽をパタパタと動かして飛翔し、俺の頭上で指さす。
「なんだ?」
食指に従うままにビジョンを使用し、キュクロプスの奥側を見やる。
「――丸っこいのが見えるな」
正確には半球。
この位置からだと全容が窺えないので半球という表現になってしまう。
更にミルモンが上昇し、
「やっぱり!」
体に似合わない大きな声を発せば、直ぐさま俺の方へと急降下。
「でっかいのの奥にあるの球体で間違いないよ!」
――――。
――。
――!?
「球体か!?」
「そうだよ! 球体だよ!」
球体。ミルモンが見通す力で見たもの。
そしてその球体の前に立つ――巨人。
「巨人か!」
「だね!」
「ここが目的地って事だな!」
ミルモンが見通した存在はあの球体とキュクロプスと考えて間違いないだろう。
あの存在達の力を借りることで、俺達は翼幻王の拠点である天空要塞フロトレムリへと行く事が出来るわけだ。
「好敵手であり、尊敬する存在でもあるのでね。強制的に従わせているとなれば怒りも感じてしまうものだ。上位悪魔よ!」
「我々もそれなりの敬意を払って協力をしてもらっている。ある程度の自由と命は保証しているのだからな」
「それは軍監である貴殿がいたからと考えるべきかな? もし指揮官とその部下達だけだったならば、ボロ雑巾のように扱われていたと考えられる」
「――耳が痛いな。ドワーフ族」
パロンズ氏の発言はあながち間違いじゃないとばかりに、ヤヤラッタは鷹揚に頷いてみせる。
「好敵手を庇護してくれていた事には礼を述べる。そして話が通じる以上、我々は話し合いでと考えている――ですよね。会頭?」
「会話で解決できるなら万々歳ですね」
ハルダームとは違うからな。話の分かる相手なら対話が一番いいんだ――けども。
「お断りだな」
バッサリだな。
「まあ、そう返してくるよね」
「当然だろう。我らが主である魔王様に敵対する者たちである以上、我らは戦うだけだ。なによりもデミタスが仙狐となって勇者を狙うという事を考えれば、それだけ護衛軍の同胞たちの命が奪われたということだろうからな。それこそデミタスが私怨で動くとなれば、デスベアラー殿も――」
「強敵だったし、尊敬できる武人だった」
「だった――か。となれば我々は怨敵を相手にしなければならない。それに上の方で我らが同胞であるモルンの命を奪った以上、我々は互いが全滅するまで戦わないとな!」
語末に進むほどに強くなっていくヤヤラッタの語気。
連動するように十四人の部下たちからも、体から闘気を迸らせるような幻視。
モルンなる存在はシャルナが初の空戦で倒した、出来る十体長だったレッサーデーモンの事だろう。
「会頭」
「仕方ないですね。パロンズ氏、戦いは避けられないようです」
「そのようですね」
手斧を持ち、左腕に括り付けたバックラーを心臓部分に留めて構える。
「我が自伝に有能な敵であったと記しましょう。ヤヤラッタという名を」
「御免こうむる。魔導の少女よ」
「ロードウィザードと呼んでもらいたいものですね――ファイヤーボール!」
先制攻撃とばかりにコクリコの放つファイヤーボール。
戦闘することが確定していたとばかりに、俺達のやり取りの間に装身具での強化を済ませていたようで、バランスボールサイズの火球をアドンとサムソンと共に放つ。
「よく練られている。初歩でこれなら、ロードウィザードという称号も頷ける」
言いつつ得物であるハルバートを諸手に握ったまま不動の姿勢。
プロテクションを自らが使用しなくても問題なしとばかりの姿勢。
その証拠に取り巻きの数人が、プロテクションを発動してコクリコの火球を防ぐ。
障壁にぶつかる火球が爆ぜると同時に、障壁を包むように炎が広がって覆うと、勢いのある炎が障壁の向こう側まで漏れ出していた。
「あっつ!」
と、一人の取り巻きが言うほどに、コクリコのファイヤーボールの威力は強力だったようである。
やり手の取り巻きみたいだけども、完全に防ぎきれないところから察するに、今の俺達が苦戦する相手ではない。
「この程度で熱いなどという言葉を漏らす時点で、彼我の力量差は分かりました。我らの圧勝で終わりそうですね!」
強者という立場でいたいコクリコが数歩歩き、先頭に立つ。
「まったくだね!」
と、本日レビテーションを習得し、尚且つ大活躍だったからか、コクリコに負けないほどの強い語気を発しつつ、シャルナも俺達の前に立つ。
「まったく、俺のとこの女性陣は……」
強いのはありがたいけども、本来ならば後衛の存在が、揃いも揃って前に立つなよ……。
まあコクリコに関しては諦めているけども、シャルナまで前に立つとはね……。
「ん~」
俺がやれやれと肩を竦めている中、俺の左肩ではミルモンが目を細めて上を見る。
一点集中の睨み。
その睨みに上にいるキュクロプスが脅えていた。
ペットボトルサイズによるただの可愛い睨みで怖がるとか、メンタルおぼろ豆腐すぎるだろ。なんだあの一本角の巨人は……。
「兄ちゃん」
「どうしたミルモン。あんまりあのデカいのを怖がらせちゃダメだぞ。被害者という立場でもあるんだから」
「そうじゃなくてその奥だよ。あのでっかいのの後ろ」
言いつつ羽をパタパタと動かして飛翔し、俺の頭上で指さす。
「なんだ?」
食指に従うままにビジョンを使用し、キュクロプスの奥側を見やる。
「――丸っこいのが見えるな」
正確には半球。
この位置からだと全容が窺えないので半球という表現になってしまう。
更にミルモンが上昇し、
「やっぱり!」
体に似合わない大きな声を発せば、直ぐさま俺の方へと急降下。
「でっかいのの奥にあるの球体で間違いないよ!」
――――。
――。
――!?
「球体か!?」
「そうだよ! 球体だよ!」
球体。ミルモンが見通す力で見たもの。
そしてその球体の前に立つ――巨人。
「巨人か!」
「だね!」
「ここが目的地って事だな!」
ミルモンが見通した存在はあの球体とキュクロプスと考えて間違いないだろう。
あの存在達の力を借りることで、俺達は翼幻王の拠点である天空要塞フロトレムリへと行く事が出来るわけだ。
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