1,384 / 1,861
矮人と巨人
PHASE-1384【良いテーブルかと】
しおりを挟む
――。
「さあさあ、労わせてくれ」
王都に戻る前に少しは休んでくれと、館は四阿にて食事をいただく。
ドワーフさん達と一緒になって食事に参加するゲノーモス達は、ミルモンとコクリコの戦闘時の大車輪の活躍を耳にし、瞳を輝かせて二人を見つめていた。
些か誇張もあるけども――いいとしよう。
コクリコはいつものことだけども、初めての冒険に心おどるミルモンも大げさに言っているが、そういったところも可愛い。
シャルナにはダダイル氏たちが矢の感想を聞いていた。
実戦において、ドワーフの矢の性能はいかほどだったかと問えば、狙ったところに素直に飛んでくれるし、威力も申し分ないとハイエルフが合格点を与えれば、ドワーフさん達はご満悦。
戦闘で消費した分の矢はこちらで準備すると言ってくれれば、親方様から貰った矢筒に直ぐさま補充してくれた。
俺達が森に行っている間もフル可動とばかりに矢の製作に携わってくれたそうで、一定の量ができたところで要塞トールハンマーまでの輸送も行ってくれたそうだ。
「感謝です」
「それはこちらの台詞だぞトールよ。森からの脅威がなくなったのだからな」
「完全に無くなったとは言いがたいですけどね」
「森に生息する者達に淘汰されるだろうし、もし生き残れても、こちらに挑めるだけの戦力もなければ指揮能力もない。こちらが寡兵であっても十分に対処できる程度にまでなった時点で問題ない」
「それは何よりです」
「まったくもって大したものだ。我々を危機的な状況に陥れた連中をわずかな手勢で壊滅させるのだからな。流石は勇者とその一行である」
言って親方様は手にした杯を高らかに掲げ、ドワーフさん達が好む強い酒気を纏った酒を一気に呷る。
ビールやブランデーは飲まないのか? と質問すれば、淋しそうな瞳になった親方様は、
「もう無い」
と、一言。
「美味くも儚かった……」
要は美味すぎて俺達が森に行った直ぐに飲み干してしまったということのようだな……。
ドワーフさん達が肝硬変にならないかが心配になってくる。
「我が友――心の友であるトールよ!」
心の友に言い直すあたり、お願い事だろうな。
この場合――、
「ここを出るとき地底湖によって、ビールとブランデーを用意しますよ」
「おお! 心の友よ!」
そう言いながら抱きつかないで……。
ぶっとい腕のおっさんに抱きつかれても嬉しくないからな……。
身長差で俺の腹部分に顔を埋めてくるとか罰ゲームだよ。女の子にチェンジして……。
「それはそうと」
言いながら親方様の抱擁から逃げ出し、
「もう一つ戦利品があるんですよ。親方様に」
「ワシにか?」
「はい」
「酒か!?」
の、発言に周囲のドワーフさん達からもざわつきが生まれる。
「違いますよ」
「違うのか……」
と、トーンダウンすれば、これまた周囲も同様のリアクション。
主が不羈奔放なら、下の連中も同じような性格に染まるのかな……。
やれやれと首を左右に振って肩を竦めつつ、プレイギアを取り出す。
「出てこい」
と、軍用トラックを召喚。
「なんだ! やはり酒か!」
「違いますよ」
「違うのか……」
なんで同じやり取りをせにゃならんのだ……。
光が消えて出てくる軍用トラック。
「お?」
親方様が何かに気付く。
「なにやら荷台の位置が以前より低いな」
一度見ただけなのに、二度目でわずかな違いを見抜いてくるとはね。
「重いモノを積んでまして」
「それがワシへの贈り物か?」
「はい。じゃあ、お願いします」
石庭の四阿の側で大人しく座っていたキュクロプス三兄弟とパロンズ氏のマッドゴーレム。
そして――、
「ゴロ丸」
曲玉で地面を擦って喚び出す。
「頼むぞ」
「キュ!」
短く返して皆して荷台から戦利品を降ろしてくれる。
「どうぞ」
「お、おお……っ!!」
フフフ――。これは喜んでくれるだろう。
俺が三兄弟の作業場で手に入れたモノは、親方様が欲するモノにぴったりだろうからな。
戦利品を眺めてさぞ喜んで……くれ……る?
「親方様?」
「トールは容易くミスリルゴーレムを召喚できるのだな」
ミスリルの塊であるゴロ丸を見る目は驚きと興味。
鉱物大好きな種族にはゴロ丸は魅力的な存在。
せっかく喜んでもらおうと思って持ってきたんだけども、そっちには興味を持ってくれていない。
「親方様。会頭はこちらを見てほしいのですが」
パロンズ氏が嘘くさい咳を一つ打ちつつ意識を誘導してくれる。
「お、おお。こっちか」
なんて温度差なんでしょう……。
「お、おお! これは!」
ようやく自分が欲していたモノがなんだったのかを思いだしてくれたようだ。
「これはなんとも良い物を見つけてくれたものだ」
「そうでしょう。コレを見た時にビビッときたんですよ」
「このワシの欲しい物を覚えてくれていたのも嬉しい限りだ」
トラックから降ろされたモノをバシバシと叩いて喜んでくれる。
俺が良いと思ったモノ――それは楕円形からなる一枚岩。
綺麗に研磨されたソレは、キュクロプス三兄弟が作業場でテーブルとして使用していたもの。
天板部分も綺麗に研磨されており、さわり心地は申し分なし。
触れば摩擦を感じさせない一枚岩からなる作業台。妥協を許さない製作をするドワーフさん達からみても良い物のはず。
「実に素晴らしい」
と、はたして正にで、親方様はうっとりと一枚岩の作業台を見入る。
これでこの四阿のテーブル問題も解決だ。
「さあさあ、労わせてくれ」
王都に戻る前に少しは休んでくれと、館は四阿にて食事をいただく。
ドワーフさん達と一緒になって食事に参加するゲノーモス達は、ミルモンとコクリコの戦闘時の大車輪の活躍を耳にし、瞳を輝かせて二人を見つめていた。
些か誇張もあるけども――いいとしよう。
コクリコはいつものことだけども、初めての冒険に心おどるミルモンも大げさに言っているが、そういったところも可愛い。
シャルナにはダダイル氏たちが矢の感想を聞いていた。
実戦において、ドワーフの矢の性能はいかほどだったかと問えば、狙ったところに素直に飛んでくれるし、威力も申し分ないとハイエルフが合格点を与えれば、ドワーフさん達はご満悦。
戦闘で消費した分の矢はこちらで準備すると言ってくれれば、親方様から貰った矢筒に直ぐさま補充してくれた。
俺達が森に行っている間もフル可動とばかりに矢の製作に携わってくれたそうで、一定の量ができたところで要塞トールハンマーまでの輸送も行ってくれたそうだ。
「感謝です」
「それはこちらの台詞だぞトールよ。森からの脅威がなくなったのだからな」
「完全に無くなったとは言いがたいですけどね」
「森に生息する者達に淘汰されるだろうし、もし生き残れても、こちらに挑めるだけの戦力もなければ指揮能力もない。こちらが寡兵であっても十分に対処できる程度にまでなった時点で問題ない」
「それは何よりです」
「まったくもって大したものだ。我々を危機的な状況に陥れた連中をわずかな手勢で壊滅させるのだからな。流石は勇者とその一行である」
言って親方様は手にした杯を高らかに掲げ、ドワーフさん達が好む強い酒気を纏った酒を一気に呷る。
ビールやブランデーは飲まないのか? と質問すれば、淋しそうな瞳になった親方様は、
「もう無い」
と、一言。
「美味くも儚かった……」
要は美味すぎて俺達が森に行った直ぐに飲み干してしまったということのようだな……。
ドワーフさん達が肝硬変にならないかが心配になってくる。
「我が友――心の友であるトールよ!」
心の友に言い直すあたり、お願い事だろうな。
この場合――、
「ここを出るとき地底湖によって、ビールとブランデーを用意しますよ」
「おお! 心の友よ!」
そう言いながら抱きつかないで……。
ぶっとい腕のおっさんに抱きつかれても嬉しくないからな……。
身長差で俺の腹部分に顔を埋めてくるとか罰ゲームだよ。女の子にチェンジして……。
「それはそうと」
言いながら親方様の抱擁から逃げ出し、
「もう一つ戦利品があるんですよ。親方様に」
「ワシにか?」
「はい」
「酒か!?」
の、発言に周囲のドワーフさん達からもざわつきが生まれる。
「違いますよ」
「違うのか……」
と、トーンダウンすれば、これまた周囲も同様のリアクション。
主が不羈奔放なら、下の連中も同じような性格に染まるのかな……。
やれやれと首を左右に振って肩を竦めつつ、プレイギアを取り出す。
「出てこい」
と、軍用トラックを召喚。
「なんだ! やはり酒か!」
「違いますよ」
「違うのか……」
なんで同じやり取りをせにゃならんのだ……。
光が消えて出てくる軍用トラック。
「お?」
親方様が何かに気付く。
「なにやら荷台の位置が以前より低いな」
一度見ただけなのに、二度目でわずかな違いを見抜いてくるとはね。
「重いモノを積んでまして」
「それがワシへの贈り物か?」
「はい。じゃあ、お願いします」
石庭の四阿の側で大人しく座っていたキュクロプス三兄弟とパロンズ氏のマッドゴーレム。
そして――、
「ゴロ丸」
曲玉で地面を擦って喚び出す。
「頼むぞ」
「キュ!」
短く返して皆して荷台から戦利品を降ろしてくれる。
「どうぞ」
「お、おお……っ!!」
フフフ――。これは喜んでくれるだろう。
俺が三兄弟の作業場で手に入れたモノは、親方様が欲するモノにぴったりだろうからな。
戦利品を眺めてさぞ喜んで……くれ……る?
「親方様?」
「トールは容易くミスリルゴーレムを召喚できるのだな」
ミスリルの塊であるゴロ丸を見る目は驚きと興味。
鉱物大好きな種族にはゴロ丸は魅力的な存在。
せっかく喜んでもらおうと思って持ってきたんだけども、そっちには興味を持ってくれていない。
「親方様。会頭はこちらを見てほしいのですが」
パロンズ氏が嘘くさい咳を一つ打ちつつ意識を誘導してくれる。
「お、おお。こっちか」
なんて温度差なんでしょう……。
「お、おお! これは!」
ようやく自分が欲していたモノがなんだったのかを思いだしてくれたようだ。
「これはなんとも良い物を見つけてくれたものだ」
「そうでしょう。コレを見た時にビビッときたんですよ」
「このワシの欲しい物を覚えてくれていたのも嬉しい限りだ」
トラックから降ろされたモノをバシバシと叩いて喜んでくれる。
俺が良いと思ったモノ――それは楕円形からなる一枚岩。
綺麗に研磨されたソレは、キュクロプス三兄弟が作業場でテーブルとして使用していたもの。
天板部分も綺麗に研磨されており、さわり心地は申し分なし。
触れば摩擦を感じさせない一枚岩からなる作業台。妥協を許さない製作をするドワーフさん達からみても良い物のはず。
「実に素晴らしい」
と、はたして正にで、親方様はうっとりと一枚岩の作業台を見入る。
これでこの四阿のテーブル問題も解決だ。
1
あなたにおすすめの小説
凡人がおまけ召喚されてしまった件
根鳥 泰造
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。
仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。
それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。
異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。
最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。
だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。
祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。
最強の異世界やりすぎ旅行記
萩場ぬし
ファンタジー
主人公こと小鳥遊 綾人(たかなし あやと)はある理由から毎日のように体を鍛えていた。
そんなある日、突然知らない真っ白な場所で目を覚ます。そこで綾人が目撃したものは幼い少年の容姿をした何か。そこで彼は告げられる。
「なんと! 君に異世界へ行く権利を与えようと思います!」
バトルあり!笑いあり!ハーレムもあり!?
最強が無双する異世界ファンタジー開幕!
夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~
青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。
彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。
ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。
彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。
これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。
※カクヨムにも投稿しています
貧弱の英雄
カタナヅキ
ファンタジー
この世界では誰もが生まれた時から「異能」と「レベル」呼ばれる能力を身に付けており、人々はレベルを上げて自分の能力を磨き、それに適した職業に就くのが当たり前だった。しかし、山奥で捨てられていたところを狩人に拾われ、後に「ナイ」と名付けられた少年は「貧弱」という異能の中でも異質な能力を身に付けていた。
貧弱の能力の効果は日付が変更される度に強制的にレベルがリセットされてしまい、生まれた時からナイは「レベル1」だった。どれだけ努力してレベルを上げようと日付変わる度にレベル1に戻ってしまい、レベルで上がった分の能力が低下してしまう。
自分の貧弱の技能に悲観する彼だったが、ある時にレベルを上昇させるときに身に付ける「SP」の存在を知る。これを使用すれば「技能」と呼ばれる様々な技術を身に付ける事を知り、レベルが毎日のようにリセットされる事を逆に利用して彼はSPを溜めて数々の技能を身に付け、落ちこぼれと呼んだ者達を見返すため、底辺から成り上がる――
※修正要請のコメントは対処後に削除します。
冷遇された聖女の結末
菜花
恋愛
異世界を救う聖女だと冷遇された毛利ラナ。けれど魔力慣らしの旅に出た途端に豹変する同行者達。彼らは同行者の一人のセレスティアを称えラナを貶める。知り合いもいない世界で心がすり減っていくラナ。彼女の迎える結末は――。
本編にプラスしていくつかのifルートがある長編。
カクヨムにも同じ作品を投稿しています。
異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。
もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。
異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。
ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。
残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、
同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、
追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、
清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……
異世界へ行って帰って来た
バルサック
ファンタジー
ダンジョンの出現した日本で、じいさんの形見となった指輪で異世界へ行ってしまった。
そして帰って来た。2つの世界を往来できる力で様々な体験をする神須勇だった。
はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~
緋色優希
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる