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PHASE-1404【ロイル領主】
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「曇った表情からして、交渉が原因で先生が拘束され続けているようだね」
「そうなのです。副会頭も長時間にわたり相手をしておりまして、流石に辟易としているのですが、いかんせん――」
「相手が伯爵だとね~」
いっそのこと状況を知っていた王侯貴族の面々が、間に入ってくれていればよかったのにな。
王様が出てきて、大抵にせよとか言えばそれで終わるのに。
普段は娘のプリシュカに政務を任せて土いじりとかしてんだからさ。
と、漏らせば、ロイドルは苦笑いを顔に貼り付けながらも首肯で返してくれる。
ロイドル自身もそう思っているってことだな。
先生のことだから王様にわざわざ出張ってもらうと、王と貴族の間で軋轢が生まれるかもしれないと判断したとも考えられるけどね。
「やっぱりここは俺だな」
公爵でありここの会頭である俺が先生を救わないとな。
「是非ともお願い致します」
恭しく頭を下げてくるロイドルに任せておけ! と、胸を張って応えてやる。
――ほほう。
廊下にもそこそこいるね。
どんだけ護衛兵に囲まれないと不安なのかな?
廊下にも十数人の護衛が壁に沿って立っていた。
外と一階の連中も含めると八十人以上はいるな。
数にモノを言わせての圧力による交渉ってのを考えていようとも、この場においてソレは通用しない。
「もっと壁に寄れ。ここの主が歩きにくいだろうが」
低くドスの利いたクラックリックの声に従うように、護衛兵の面々は背中を壁に密着させるようにして道を開けてくれる。
一人の冒険者の圧に呑まれるくらいなんだから、兵が有能であろうとも、猛者が活動するギルドハウスにおいては高圧的な交渉は出来ない。
「では――」
先行するロイドルが先生の仕事部屋兼私室の前で足を止めノックをするも――反応は返ってこない。
中では延々と話が続いているといったところか。
こちらに目を向けてくるロイドル。
地位の低い自分が許可も出ないままにドアを開いて入室するのは失礼と考えているようだ。
胸を張って応えた以上、俺が率先して動くさ。
「邪魔するで~」
言いながらドアを開いて入室。
「邪魔をするなら出て行ってくれるかな」
「あ、それはすみませんでした」
室内からの聞き覚えのない声にしたがって百八十度回頭。
「って、違うわ! なにこの新喜劇! まあ俺の発言が根源だけども」
更に百八十度回頭して室内へと入っていく。
「なんだ騒がしい」
と、聞き覚えのない声の人物が俺を睨んでくる。
「これは主。出迎えも出来ずに申し訳ありません」
腰掛けていた姿勢から矢庭に立ち上がって両手を重ねながらの一礼で迎え入れてくれる先生。
「――主……このギルドの……主……ぃい!? これは大変に失礼な発言を!」
と、聞き慣れない声の人物もつと立ち上がって駆け寄ってくると、俺の前で片膝をつく。
これに連動して室内にもいた護衛兵も同様の動き。
ここの護衛は四人。
装備が外の連中よりワンランク上だな。
まったく、どんだけ連れ込んでんだよ……。
対してギルド側は、マイヤと二人の黄色級が先生の側に侍っている。
交渉中に刃傷沙汰が発生したとしても問題ない面子だ。
後、なんで護衛以外にも美人さんを五人も侍らせているんだろうか?
圧力だけでなく、色仕掛けなんかも含めた多方向からの交渉術で先生を籠絡しようと思っていたのかな?
俺ならともかく、先生にはそんな手段は通用しないけどね。
むしろ五人の美人さん達が先生のルックスに見とれてしまっているようだけども。
なんて考えている中で――、
「お初にお目にかかります公爵様。ロイル領主、ハダン・ネイチャル・カプレルと申します」
見上げてくる人物。
切れ長の目にブラウンの瞳。
肩口まで伸びたウェービーヘアーは瞳と同色。
中高フェイスの壮年男性。
「ご丁寧に有り難うございます伯爵」
「そのような畏まった言い方はおやめください公爵様。まだまだ襲爵したばかりの若輩者です」
なんとも腰の低い人物だな。
こんな人が先生を長時間も拘束していたのか。
確か統治しているところのクルーグ商会ってののパトロンだったよな。
で、やり方が強引でその商会は他の商人から嫌われている。
実質この伯爵が、その嫌われ商会の元締めと考えてもいいよな。
「自分も襲爵したばかりの若輩者ですよ」
「では私と公爵様は共通点のある間柄となりますね」
物腰は穏やかだけども切れ長の目には力強さがあり、それが態度に出るかのようにグイグイとくる感じの人物だな。
暑苦しさがある。先生もこの暑苦しさにまいっていたか?
「とりあえずその姿勢はやめて座ってください」
「おお! なんとお優しい!」
すっくと立てば、
「ほう」
190を超える長身だった。
見上げていたのが直ぐさま俺を見下ろしてくる。
筋肉質となじゃなく標準的な体格だけど、中々に圧を感じさせる人物だな。
「よもや公爵様とお近づきになれるとは! なんたる僥倖!」
嬉しそうに言ってくれるのは気分がいいけども、建前なんだろうな。
発言を耳にする度に、マイヤが眉間に皺を寄せているからね……。
佞言を発するロイル領主の事が気に入らないといったところだろう。
「おかけになってください。伯爵」
「重ね重ねのご厚意いたみいります」
あまりにも恭しいね。
慇懃無礼って四字熟語が似合いそうだ。
とはいえ、まだ俺はこの人物のことを理解していないから評価は出来ない。
前評判とマイヤの表情から大体は理解できるけどさ。
だとしても先入観を持たずにまずは接しないとな。
「公爵様は勇者として東奔西走の日々。ですので出会うことあたわずと思っておりました。まさかご尊顔を拝することが出来るとは! この邂逅は我が生涯において一番の宝となりましょう!」
僥倖だの宝だのと、こちらの気分をよくするような発言がつらつらと出てくる表情は、声音同様に明るいもの。
正直、悪い気はしない。
懐に入ってくるのが上手いタイプだというのも分かった。
「そうなのです。副会頭も長時間にわたり相手をしておりまして、流石に辟易としているのですが、いかんせん――」
「相手が伯爵だとね~」
いっそのこと状況を知っていた王侯貴族の面々が、間に入ってくれていればよかったのにな。
王様が出てきて、大抵にせよとか言えばそれで終わるのに。
普段は娘のプリシュカに政務を任せて土いじりとかしてんだからさ。
と、漏らせば、ロイドルは苦笑いを顔に貼り付けながらも首肯で返してくれる。
ロイドル自身もそう思っているってことだな。
先生のことだから王様にわざわざ出張ってもらうと、王と貴族の間で軋轢が生まれるかもしれないと判断したとも考えられるけどね。
「やっぱりここは俺だな」
公爵でありここの会頭である俺が先生を救わないとな。
「是非ともお願い致します」
恭しく頭を下げてくるロイドルに任せておけ! と、胸を張って応えてやる。
――ほほう。
廊下にもそこそこいるね。
どんだけ護衛兵に囲まれないと不安なのかな?
廊下にも十数人の護衛が壁に沿って立っていた。
外と一階の連中も含めると八十人以上はいるな。
数にモノを言わせての圧力による交渉ってのを考えていようとも、この場においてソレは通用しない。
「もっと壁に寄れ。ここの主が歩きにくいだろうが」
低くドスの利いたクラックリックの声に従うように、護衛兵の面々は背中を壁に密着させるようにして道を開けてくれる。
一人の冒険者の圧に呑まれるくらいなんだから、兵が有能であろうとも、猛者が活動するギルドハウスにおいては高圧的な交渉は出来ない。
「では――」
先行するロイドルが先生の仕事部屋兼私室の前で足を止めノックをするも――反応は返ってこない。
中では延々と話が続いているといったところか。
こちらに目を向けてくるロイドル。
地位の低い自分が許可も出ないままにドアを開いて入室するのは失礼と考えているようだ。
胸を張って応えた以上、俺が率先して動くさ。
「邪魔するで~」
言いながらドアを開いて入室。
「邪魔をするなら出て行ってくれるかな」
「あ、それはすみませんでした」
室内からの聞き覚えのない声にしたがって百八十度回頭。
「って、違うわ! なにこの新喜劇! まあ俺の発言が根源だけども」
更に百八十度回頭して室内へと入っていく。
「なんだ騒がしい」
と、聞き覚えのない声の人物が俺を睨んでくる。
「これは主。出迎えも出来ずに申し訳ありません」
腰掛けていた姿勢から矢庭に立ち上がって両手を重ねながらの一礼で迎え入れてくれる先生。
「――主……このギルドの……主……ぃい!? これは大変に失礼な発言を!」
と、聞き慣れない声の人物もつと立ち上がって駆け寄ってくると、俺の前で片膝をつく。
これに連動して室内にもいた護衛兵も同様の動き。
ここの護衛は四人。
装備が外の連中よりワンランク上だな。
まったく、どんだけ連れ込んでんだよ……。
対してギルド側は、マイヤと二人の黄色級が先生の側に侍っている。
交渉中に刃傷沙汰が発生したとしても問題ない面子だ。
後、なんで護衛以外にも美人さんを五人も侍らせているんだろうか?
圧力だけでなく、色仕掛けなんかも含めた多方向からの交渉術で先生を籠絡しようと思っていたのかな?
俺ならともかく、先生にはそんな手段は通用しないけどね。
むしろ五人の美人さん達が先生のルックスに見とれてしまっているようだけども。
なんて考えている中で――、
「お初にお目にかかります公爵様。ロイル領主、ハダン・ネイチャル・カプレルと申します」
見上げてくる人物。
切れ長の目にブラウンの瞳。
肩口まで伸びたウェービーヘアーは瞳と同色。
中高フェイスの壮年男性。
「ご丁寧に有り難うございます伯爵」
「そのような畏まった言い方はおやめください公爵様。まだまだ襲爵したばかりの若輩者です」
なんとも腰の低い人物だな。
こんな人が先生を長時間も拘束していたのか。
確か統治しているところのクルーグ商会ってののパトロンだったよな。
で、やり方が強引でその商会は他の商人から嫌われている。
実質この伯爵が、その嫌われ商会の元締めと考えてもいいよな。
「自分も襲爵したばかりの若輩者ですよ」
「では私と公爵様は共通点のある間柄となりますね」
物腰は穏やかだけども切れ長の目には力強さがあり、それが態度に出るかのようにグイグイとくる感じの人物だな。
暑苦しさがある。先生もこの暑苦しさにまいっていたか?
「とりあえずその姿勢はやめて座ってください」
「おお! なんとお優しい!」
すっくと立てば、
「ほう」
190を超える長身だった。
見上げていたのが直ぐさま俺を見下ろしてくる。
筋肉質となじゃなく標準的な体格だけど、中々に圧を感じさせる人物だな。
「よもや公爵様とお近づきになれるとは! なんたる僥倖!」
嬉しそうに言ってくれるのは気分がいいけども、建前なんだろうな。
発言を耳にする度に、マイヤが眉間に皺を寄せているからね……。
佞言を発するロイル領主の事が気に入らないといったところだろう。
「おかけになってください。伯爵」
「重ね重ねのご厚意いたみいります」
あまりにも恭しいね。
慇懃無礼って四字熟語が似合いそうだ。
とはいえ、まだ俺はこの人物のことを理解していないから評価は出来ない。
前評判とマイヤの表情から大体は理解できるけどさ。
だとしても先入観を持たずにまずは接しないとな。
「公爵様は勇者として東奔西走の日々。ですので出会うことあたわずと思っておりました。まさかご尊顔を拝することが出来るとは! この邂逅は我が生涯において一番の宝となりましょう!」
僥倖だの宝だのと、こちらの気分をよくするような発言がつらつらと出てくる表情は、声音同様に明るいもの。
正直、悪い気はしない。
懐に入ってくるのが上手いタイプだというのも分かった。
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