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前準備
PHASE-1409【大きな家を建てないとな】
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――ほうほう、昨日の今日で既に励んでくれている。
「精が出ますね」
「これは勇者殿――ではなく会頭」
ギルドハウスから外へと出て厩舎の方へと向かえば、キュクロプス三兄弟が畳一畳はありそうな鉄板を運んでいた。
人間だと大変なサイズの鉄板も、身の丈が八メートルを超える三兄弟なら片手でも軽々だ。
この光景を目にするだけでも、頼りになる方々だと分かる。
軽々と鉄板を持つ側には、新米冒険者さん達もいる。
手持ちの金が心許ない新米さん達は厩舎を寝食の場に利用しており、突如として同居人となった三人の巨人の存在には驚きっぱなしのようで、井戸から水を汲んで、顔を洗ったり朝食の準備を行いながらも、視線は巨人に注ぎっぱなし。
「ここを使用する方々にご迷惑をかけているようで……」
「窮屈な思いをさせているようで……」
「本当に申し訳なく思っております……」
長男アルゲース氏。次男ステロペース氏。末弟ブロンテース氏が言葉のリレーにて、新米さん達にペコペコと頭を下げて謝罪。
巨人が頭を下げる動作は迫力があり、新米さん達はその動作に圧倒されつつ空笑いで返しながら距離を取っていた。
――ふふん。この程度で距離を取るようでは、まだまだ難易度の高いクエストは任せられないな。
と、新米さん達の初々しさに微笑みを浮かべてしまう俺。
「我々はここにいても良いのでしょうか? 会頭」
「良いに決まってるじゃないですか。お三方は既にギルドメンバーですからね。それに、こちらも申し訳なく思っています」
ギルドが所有する物で、巨人三人が寝食可能な場所となると、大型生物も収容することが出来る修練場側の厩舎だけになるからね。
巨人専用の建物がないことを謝罪すると、今までの環境からすればまほろばです。と、返してくれる。
「それで、その鉄板は何に使用するんです?」
「昨日ギムロンさんに指示を受けまして、大型生物の装備は一任すると言われました」
青色級としての責任ある立場だからか、先達としてお三方の面倒を見てくれるようだな。
ギムロンに任せておけば、お三方も伸び伸びと作業をすることが出来るだろう。
三兄弟はチコ達マンティコアや、オルトロスモドキのシグルズなんかの大型生物の装備製作、改修だけでなく、馬甲などの製作にも携わってくれるという。
その他にもハルダームが有していたパルチザン・プロトスのように、魔法を封じた武器の製作にも励んでくれるということだった。
「今までは無理矢理に作らされていましたが――」
「ここでは自由に製作できるぶん、良質で有りながらも手早く作り出すことが可能となりますね」
末弟であるブロンテース氏の発言に続くように発せば、大きな頭が頷きで返してくれる。
「頼りにさせてもらいます」
と、継げば、今度は三兄弟が揃って大きな頭で首肯。
巨人の鍛冶職人とか本当に大助かりだ。
大型の装備だけでなく、建築技術も高いお三方。様々な分野で大活躍してくれるのは想像に難くない。
「材料を揃えさせますので、お三方の住居の建築もしましょう。ギルド総出で手伝いますよ」
「重ね重ね感謝いたします。会頭」
代表して長男のアルゲース氏。
多種多様な種族が集まり、王都の更なる繁栄へと繋がる。
俺が転生してきたばかりの地獄から、一年でここまで発展しているのは感動だよ。
「会頭」
「なんでしょうアルゲース氏」
「エビルレイダーの事ですが」
「成虫に育ってもらわないといけませんね。で、何処に? 全長が二十メートルを超える生物を厩舎に収容は出来ないからな。いや、可能だけども他に迷惑がかかるか」
「ですので、修練場側の防御壁部分をお借りしております」
「屋根のない場所で休ませるのは申し訳ないですね」
天空要塞フロトレムリへと俺達を導いてくれる存在が野ざらし状態とはね。
お三方は気にしなくていいと言ってくれるけども――、
「天気がよくて何よりだね」
「そうだな。雨が降らなくて良かったよ」
左肩に乗るミルモンに返しつつ、三兄弟を伴って修練場側の防御壁まで移動。
修練場を使用しているギルドメンバーや王都兵が、物珍しそうに壁の側にいる巨大生物を見入っていた。
「オラッ! 見てないで体を動かせ!」
と、ちょっと離れた位置から聞こえてくるのは、ドッセン・バーグの怒号。
本日も朝早くから新米さん達をしごいているようだな。
その中にはコルレオンもいたりするんだろうね。
「夜は冷えただろうに。大丈夫か?」
壁に体を預けるようにして丸まっているエビルレイダーに声をかければ、
「ギュイ」
短く返してくる。
鳴き声の調子からして問題ないといったところだろう。
「健康そのもの。見たこともない異形で巨大なティタノモスの幼虫ですが、知能は非常に高いようですね」
「これはザジーさん」
右足を引きずらせながら俺達へと足を進めてくれるのは、冒険者の時テイマー職として活躍していた人物。
ワックさんが制作したモンスターの鎧皮から作られた軽くて丈夫な義足は、ロングブーツからなるデザイン。
無事な左足も同様のデザインからなるブーツを使用しているから、右足が義足に見えない気配りもばっちり。
「ザジーさんがエビルレイダーの世話を?」
「はい。昨日今日の付き合いですけどね」
言いつつも、ザジーさんに対して心を許しているのか、エビルレイダーが鋭利な腹脚の一本をザジーさんの方へと伸ばす。
それに対して礼を述べ、
「よっこいしょ」
と、言いつつ、その腹脚へと腰をおろす。
「本当に出来のいい子ですよ」
テイマー職として様々な生物に触れてきたが、その中でも接しやすい生物だとエビルレイダーを褒める。
まあ、俺はソイツに殺されかけたけどね……。
ザジーさんが腰掛ける腹脚を優しく撫でれば、心なしか複眼が喜んでいるように見えた気がした。
複眼の形が変わることはないので、本当に気がしただけだけど。
昨日の交渉で気疲れもあったからな。こういった光景を目にすると癒やされるもんだよ。
俺以上に気疲れをした先生にも見てもらいたいね。
「精が出ますね」
「これは勇者殿――ではなく会頭」
ギルドハウスから外へと出て厩舎の方へと向かえば、キュクロプス三兄弟が畳一畳はありそうな鉄板を運んでいた。
人間だと大変なサイズの鉄板も、身の丈が八メートルを超える三兄弟なら片手でも軽々だ。
この光景を目にするだけでも、頼りになる方々だと分かる。
軽々と鉄板を持つ側には、新米冒険者さん達もいる。
手持ちの金が心許ない新米さん達は厩舎を寝食の場に利用しており、突如として同居人となった三人の巨人の存在には驚きっぱなしのようで、井戸から水を汲んで、顔を洗ったり朝食の準備を行いながらも、視線は巨人に注ぎっぱなし。
「ここを使用する方々にご迷惑をかけているようで……」
「窮屈な思いをさせているようで……」
「本当に申し訳なく思っております……」
長男アルゲース氏。次男ステロペース氏。末弟ブロンテース氏が言葉のリレーにて、新米さん達にペコペコと頭を下げて謝罪。
巨人が頭を下げる動作は迫力があり、新米さん達はその動作に圧倒されつつ空笑いで返しながら距離を取っていた。
――ふふん。この程度で距離を取るようでは、まだまだ難易度の高いクエストは任せられないな。
と、新米さん達の初々しさに微笑みを浮かべてしまう俺。
「我々はここにいても良いのでしょうか? 会頭」
「良いに決まってるじゃないですか。お三方は既にギルドメンバーですからね。それに、こちらも申し訳なく思っています」
ギルドが所有する物で、巨人三人が寝食可能な場所となると、大型生物も収容することが出来る修練場側の厩舎だけになるからね。
巨人専用の建物がないことを謝罪すると、今までの環境からすればまほろばです。と、返してくれる。
「それで、その鉄板は何に使用するんです?」
「昨日ギムロンさんに指示を受けまして、大型生物の装備は一任すると言われました」
青色級としての責任ある立場だからか、先達としてお三方の面倒を見てくれるようだな。
ギムロンに任せておけば、お三方も伸び伸びと作業をすることが出来るだろう。
三兄弟はチコ達マンティコアや、オルトロスモドキのシグルズなんかの大型生物の装備製作、改修だけでなく、馬甲などの製作にも携わってくれるという。
その他にもハルダームが有していたパルチザン・プロトスのように、魔法を封じた武器の製作にも励んでくれるということだった。
「今までは無理矢理に作らされていましたが――」
「ここでは自由に製作できるぶん、良質で有りながらも手早く作り出すことが可能となりますね」
末弟であるブロンテース氏の発言に続くように発せば、大きな頭が頷きで返してくれる。
「頼りにさせてもらいます」
と、継げば、今度は三兄弟が揃って大きな頭で首肯。
巨人の鍛冶職人とか本当に大助かりだ。
大型の装備だけでなく、建築技術も高いお三方。様々な分野で大活躍してくれるのは想像に難くない。
「材料を揃えさせますので、お三方の住居の建築もしましょう。ギルド総出で手伝いますよ」
「重ね重ね感謝いたします。会頭」
代表して長男のアルゲース氏。
多種多様な種族が集まり、王都の更なる繁栄へと繋がる。
俺が転生してきたばかりの地獄から、一年でここまで発展しているのは感動だよ。
「会頭」
「なんでしょうアルゲース氏」
「エビルレイダーの事ですが」
「成虫に育ってもらわないといけませんね。で、何処に? 全長が二十メートルを超える生物を厩舎に収容は出来ないからな。いや、可能だけども他に迷惑がかかるか」
「ですので、修練場側の防御壁部分をお借りしております」
「屋根のない場所で休ませるのは申し訳ないですね」
天空要塞フロトレムリへと俺達を導いてくれる存在が野ざらし状態とはね。
お三方は気にしなくていいと言ってくれるけども――、
「天気がよくて何よりだね」
「そうだな。雨が降らなくて良かったよ」
左肩に乗るミルモンに返しつつ、三兄弟を伴って修練場側の防御壁まで移動。
修練場を使用しているギルドメンバーや王都兵が、物珍しそうに壁の側にいる巨大生物を見入っていた。
「オラッ! 見てないで体を動かせ!」
と、ちょっと離れた位置から聞こえてくるのは、ドッセン・バーグの怒号。
本日も朝早くから新米さん達をしごいているようだな。
その中にはコルレオンもいたりするんだろうね。
「夜は冷えただろうに。大丈夫か?」
壁に体を預けるようにして丸まっているエビルレイダーに声をかければ、
「ギュイ」
短く返してくる。
鳴き声の調子からして問題ないといったところだろう。
「健康そのもの。見たこともない異形で巨大なティタノモスの幼虫ですが、知能は非常に高いようですね」
「これはザジーさん」
右足を引きずらせながら俺達へと足を進めてくれるのは、冒険者の時テイマー職として活躍していた人物。
ワックさんが制作したモンスターの鎧皮から作られた軽くて丈夫な義足は、ロングブーツからなるデザイン。
無事な左足も同様のデザインからなるブーツを使用しているから、右足が義足に見えない気配りもばっちり。
「ザジーさんがエビルレイダーの世話を?」
「はい。昨日今日の付き合いですけどね」
言いつつも、ザジーさんに対して心を許しているのか、エビルレイダーが鋭利な腹脚の一本をザジーさんの方へと伸ばす。
それに対して礼を述べ、
「よっこいしょ」
と、言いつつ、その腹脚へと腰をおろす。
「本当に出来のいい子ですよ」
テイマー職として様々な生物に触れてきたが、その中でも接しやすい生物だとエビルレイダーを褒める。
まあ、俺はソイツに殺されかけたけどね……。
ザジーさんが腰掛ける腹脚を優しく撫でれば、心なしか複眼が喜んでいるように見えた気がした。
複眼の形が変わることはないので、本当に気がしただけだけど。
昨日の交渉で気疲れもあったからな。こういった光景を目にすると癒やされるもんだよ。
俺以上に気疲れをした先生にも見てもらいたいね。
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