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PHASE-1432【手札がない】
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「あたたた……」
「軽口程度の痛打だったようだな」
痛みを口にしつつ、地面に転がり仰向けになっている中、俺の視界に入ってくるのは――、
「ひやっしゅ!」
情けない声を上げながら、勢いよく横に転がって難を逃れる。
俺に向けられた攻撃はオーラの手刀だった……。
太い木の幹を思わせる手刀だった……。
「あっぶなかったぜ……」
中腰となり、振り下ろされた手刀が生み出す振動を足の裏から感じつつ、舞い上がる土煙を見つめる。
「う、うぅぅぅ……。気持ち悪い……」
俺の左肩では、高速横回転が原因で目が回ってしまったミルモン。
「悪い」
「き、気にしないでよ。オイラがここに残るって言ったんだからね……。それにしてもあの狼男、訓練なのに手加減なしだよ……」
「そうだな……」
「手心を加えたら勇者に失礼だからな」
オーラの腕を一振りすれば、濛々と舞う土煙が一掃される。
「高い継戦力みたいですけど、負担はないんですか?」
巨大なオーラアーマーを展開し続ける集中力を維持するガルム氏。
あれだけの力を使用しているなら、長時間の使用は難しいと思うのだけれども――、
「心配は無用。この戦いの間くらいなら豺覇を展開し続けることは難しくない」
「あ、そうですか……」
耳に入れたくない情報だったな。
相手の維持力を消耗させて、豺覇の消滅を狙うというのは出来ないと考えた方がいいわけだ。
となると――、やはりオーラアーマーの元となっているファースンを剥がし、内部のガルム氏に直接攻撃を加えないといけないってことだな。
――……初手よりも分厚くなったアレを剥がすのは、現状の装備では不可能に思えてしまう……。
対しても向こうの攻撃は、一撃を受けるだけでこちらは致命傷になってしまうレベル。
トロールやオーガの膂力から繰り出される一撃以上の攻撃を高速移動も駆使して繰り出してくるんだからな……。
何度も口にするし思うことだけど、本当にインチキだよ……。
「このまま続けばジリ貧でしかない」
「どうするのさ」
「……どうしようか……」
俺を格好いい主だと思ってくれているミルモンに、なんとも情けない声で返してしまう。
そんな声を受けても、ミルモンは俺を信じているとばかりに、強い瞳で見てくれる。
期待に応える為の方法を一つ挙げるとするならば――、
「貫通ダメージという手段が出来ればあるいは」
「出来るのかい?」
「出来たらいいよね」
衝撃貫通ダメージとなるとベルの攻撃だよな。
俺の大腿四頭筋に走る衝撃は、思い出すだけでその部分が痛くなるくらいだ。
ベルのような衝撃貫通攻撃が可能であれば、あの分厚いアーマーの中にいるガルム氏にダメージを与える事も可能。
――……だが俺にはそういった手札がない……。
無理クソにアーマーを打ち消して内部にダメージを与えるとなれば、烈火が効果的だろうけども、アレはネイコスであるイグニースを錬って作るものだからな。今回はネイコスの使用は禁止だからそもそも発動できない。
出来てたら初期のオーラアーマーの時に使ってるし。
俺が習得している攻撃的なピリアとなれば、マスリリースだ。
しかしコレは遠距離のもの。
さっきは直撃ではなかったものの、ダメージ交換覚悟の零距離で打ち込んで剥がすことは出来た。
だが現状の分厚いオーラアーマーを剥がしきるには斬撃系だと力不足。
「斬撃による線じゃなく、点でやらなきゃ通用しない」
「一点突破だね。高指揮官の騎馬突撃みたいなもんだよ」
「そんな感じだな」
敵陣を割くように突き進む高順氏が指揮する騎馬突撃。
あの時の突撃を思い返しつつ、オーラを裂くようにして貫くというイメージ。
斬撃ではなく、刺突をイメージしたマスリリースなら――、
「おっ! 兄ちゃんの顔つきがさっきと違って自信のあるものに変わったね」
「そう見えるかな」
「ああ、見えているぞ」
と、ここでガルム氏。
「少しは突破口が見えてきたか?」
「臨機応変が大事ってことですね。まあ、その臨機応変を実行可能とするには、実力と培ってきた経験が必要なんですけどね」
「それは――問題ないと思うが」
高く買ってくれている発言は嬉しいですよ。ガルム氏。
だらこそ――、
「ええ、問題ないと思います」
と、堂々と言い返しましょう。
「そうだ。それでいい! その強者然とした発言を聞けばこちらも滾ってくる!」
本日一番の喜色ある声音だった。
この戦いを楽しんでくれているようでなにより。
「さて、いっちょやってみますかね」
イメージってのは今までの戦闘経験で培っている。
後はそれをガルム氏に叩き込むだけなんだが――、
「アクセル!」
「本当にインチキだよ!」
見た目は巨体。でも動きはキレッキレ。
豺覇という奥義には欠点が見受けられない。
というのを背後から迫る豪腕ストレートを回避しながら思う。
俺の全身を丸ごと殴りつけることが出来るほどの拳打の直撃なんて受ければ、一発で昇天しちまう。
「躱すか!」
ギリギリでしたけどね。
言葉に出して返せない時点で本当にギリギリの回避。
引きつった表情で体をひねりながらのかろうじての対処。
冷や汗が頬を伝うのを感じつつ、オーラを纏うガルム氏の間合い外へと即座に移動して一呼吸。
相対する方もこの間に一息いれるためか、一旦動きを止めて佇む。
なのでその間に豺覇を眺める。
――面積が広くてリーチもある白打。
且つ速いという欲張りセットときている。
速くて重い一撃となれば、並の冒険者ならKOですよ。
俺は並じゃないけどね! 躱しまくってやりますよ!
「軽口程度の痛打だったようだな」
痛みを口にしつつ、地面に転がり仰向けになっている中、俺の視界に入ってくるのは――、
「ひやっしゅ!」
情けない声を上げながら、勢いよく横に転がって難を逃れる。
俺に向けられた攻撃はオーラの手刀だった……。
太い木の幹を思わせる手刀だった……。
「あっぶなかったぜ……」
中腰となり、振り下ろされた手刀が生み出す振動を足の裏から感じつつ、舞い上がる土煙を見つめる。
「う、うぅぅぅ……。気持ち悪い……」
俺の左肩では、高速横回転が原因で目が回ってしまったミルモン。
「悪い」
「き、気にしないでよ。オイラがここに残るって言ったんだからね……。それにしてもあの狼男、訓練なのに手加減なしだよ……」
「そうだな……」
「手心を加えたら勇者に失礼だからな」
オーラの腕を一振りすれば、濛々と舞う土煙が一掃される。
「高い継戦力みたいですけど、負担はないんですか?」
巨大なオーラアーマーを展開し続ける集中力を維持するガルム氏。
あれだけの力を使用しているなら、長時間の使用は難しいと思うのだけれども――、
「心配は無用。この戦いの間くらいなら豺覇を展開し続けることは難しくない」
「あ、そうですか……」
耳に入れたくない情報だったな。
相手の維持力を消耗させて、豺覇の消滅を狙うというのは出来ないと考えた方がいいわけだ。
となると――、やはりオーラアーマーの元となっているファースンを剥がし、内部のガルム氏に直接攻撃を加えないといけないってことだな。
――……初手よりも分厚くなったアレを剥がすのは、現状の装備では不可能に思えてしまう……。
対しても向こうの攻撃は、一撃を受けるだけでこちらは致命傷になってしまうレベル。
トロールやオーガの膂力から繰り出される一撃以上の攻撃を高速移動も駆使して繰り出してくるんだからな……。
何度も口にするし思うことだけど、本当にインチキだよ……。
「このまま続けばジリ貧でしかない」
「どうするのさ」
「……どうしようか……」
俺を格好いい主だと思ってくれているミルモンに、なんとも情けない声で返してしまう。
そんな声を受けても、ミルモンは俺を信じているとばかりに、強い瞳で見てくれる。
期待に応える為の方法を一つ挙げるとするならば――、
「貫通ダメージという手段が出来ればあるいは」
「出来るのかい?」
「出来たらいいよね」
衝撃貫通ダメージとなるとベルの攻撃だよな。
俺の大腿四頭筋に走る衝撃は、思い出すだけでその部分が痛くなるくらいだ。
ベルのような衝撃貫通攻撃が可能であれば、あの分厚いアーマーの中にいるガルム氏にダメージを与える事も可能。
――……だが俺にはそういった手札がない……。
無理クソにアーマーを打ち消して内部にダメージを与えるとなれば、烈火が効果的だろうけども、アレはネイコスであるイグニースを錬って作るものだからな。今回はネイコスの使用は禁止だからそもそも発動できない。
出来てたら初期のオーラアーマーの時に使ってるし。
俺が習得している攻撃的なピリアとなれば、マスリリースだ。
しかしコレは遠距離のもの。
さっきは直撃ではなかったものの、ダメージ交換覚悟の零距離で打ち込んで剥がすことは出来た。
だが現状の分厚いオーラアーマーを剥がしきるには斬撃系だと力不足。
「斬撃による線じゃなく、点でやらなきゃ通用しない」
「一点突破だね。高指揮官の騎馬突撃みたいなもんだよ」
「そんな感じだな」
敵陣を割くように突き進む高順氏が指揮する騎馬突撃。
あの時の突撃を思い返しつつ、オーラを裂くようにして貫くというイメージ。
斬撃ではなく、刺突をイメージしたマスリリースなら――、
「おっ! 兄ちゃんの顔つきがさっきと違って自信のあるものに変わったね」
「そう見えるかな」
「ああ、見えているぞ」
と、ここでガルム氏。
「少しは突破口が見えてきたか?」
「臨機応変が大事ってことですね。まあ、その臨機応変を実行可能とするには、実力と培ってきた経験が必要なんですけどね」
「それは――問題ないと思うが」
高く買ってくれている発言は嬉しいですよ。ガルム氏。
だらこそ――、
「ええ、問題ないと思います」
と、堂々と言い返しましょう。
「そうだ。それでいい! その強者然とした発言を聞けばこちらも滾ってくる!」
本日一番の喜色ある声音だった。
この戦いを楽しんでくれているようでなにより。
「さて、いっちょやってみますかね」
イメージってのは今までの戦闘経験で培っている。
後はそれをガルム氏に叩き込むだけなんだが――、
「アクセル!」
「本当にインチキだよ!」
見た目は巨体。でも動きはキレッキレ。
豺覇という奥義には欠点が見受けられない。
というのを背後から迫る豪腕ストレートを回避しながら思う。
俺の全身を丸ごと殴りつけることが出来るほどの拳打の直撃なんて受ければ、一発で昇天しちまう。
「躱すか!」
ギリギリでしたけどね。
言葉に出して返せない時点で本当にギリギリの回避。
引きつった表情で体をひねりながらのかろうじての対処。
冷や汗が頬を伝うのを感じつつ、オーラを纏うガルム氏の間合い外へと即座に移動して一呼吸。
相対する方もこの間に一息いれるためか、一旦動きを止めて佇む。
なのでその間に豺覇を眺める。
――面積が広くてリーチもある白打。
且つ速いという欲張りセットときている。
速くて重い一撃となれば、並の冒険者ならKOですよ。
俺は並じゃないけどね! 躱しまくってやりますよ!
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