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天空要塞
PHASE-1467【歴とした軍人】
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――。
「アンタで最後」
地上から五メートルほどの位置で飛行する最後の一人に食指を伸ばして発する。
現在、愛刀二振りは鞘の中。
二刀から無手スタイルになったのは、ここでの戦闘を始めて直ぐだった。
命を奪うということを忌避するというより、無手による技を実戦で培っていくためだ。
最後の一人となっても挑む姿勢を崩さない相手は、翼の動きを緩やかにして地上へと降り立つ。
疲労困憊から飛行も辛いといったところ。
肩で息をし、俺達と同じ目線になりながらも最後まで穂先を地面に向けるということはなかった。
「一兵となっても挑む姿はお見事」
心からの称賛を送れば、
「クソが!」
と、辛辣な返事と共に、翼を使わず両足を使っての疾駆。
肩で息をする姿は弱々しいけど、槍による刺突には鋭さがあった。
が、経験を積み重ねてきた現在の俺から見れば回避は容易い。
穂先が体に触れそうになったところで上体を捻って躱し、一気に距離を詰める。
回避で捻った姿勢を維持しつつ、白打の距離に踏み込んで、
「ボドキン」
と、一言。
足から力を伝え、腰を回転させての左ストレートを叩き込む。
「……」
声を発することもなく吹き飛べば、ガシャガシャと金属音をたてながら芝生の上をゴロゴロと転がっていく最後の一人。
「こぉぉぉぉぉぉ――」
息吹を行い、呼吸を整えつつ残心。
周囲だけでなく空も見渡し、敵性勢力に抵抗力がないことを確認。
ベル達が合流してから戦闘を開始して約十分といったところか。
こちらに怪我人なし。対して二百を超える相手は起き上がることはない。
「些か手こずったな」
「そうね」
「さいですか」
ベルとリンとしてはもっと早くに終わらせたかったようだ。
実際、この二人だけで戦うとなればもっと早く終わっていたんだろうな。
俺達の戦闘スタイルに合わせているから時間がかかったといったところだろう。
この差を縮められるようにならんとな。
「ともあれ――勝ちです」
俺が周辺の確認を終えると同時に声を発するコクリコ。
「ベルと性悪が参加すると一気に楽になったね」
「性悪が性悪って言ってもね~」
「はぁ!」
コクリコに続くシャルナの発言をリンが拾えば、シャルナの顔は真っ赤。
どう考えても最初に性悪って言ったシャルナが悪いんだけどな……。
――お互い言い合いながらも良い連携をしてくれた。
以前のポルパロング戦でも目にしたけども、言い合いながらも連携には無駄がないんだよね。
シャルナが近距離にシフトすれば、即座に遠距離からリンが掩護してくれていたからな。
「良い動きだったが、仲間が倒れる度に慌てふためくのは実戦経験の浅さからだな」
と、ベルは倒した相手に向けての感想。
長く艶のある白髪を靡かせながらレイピアを振る動き。
剣技を見切れることは出来なかったけども、ベルの一挙一動は誰もが魅入る剣舞だった。
体に炎を纏うことなく、ただひたすらにレイピアを振るだけ。
一度振れば確実に一人が倒れる。
一合決殺と名付けたい。
――いや、違うか。刃が触れ合うことなく相手は倒れてんだから、無合決殺って造語のほうが似合ってるかな。
「何を考え込んでいる」
「いや。なんか久しぶりにベルの実戦を目にしたもんだからな。やっぱりとんでもなく強いなって思ったんだよ」
相手が空を飛んでいようが問題なしだったからな。
迫る相手を踏み台にして高所をとり、相手の有利な領域であってもお構いなしの空中戦を仕掛けて勝利するんだからね。
コクリコ以上の軽業師だった。
本調子である時の赤髪ではなく、白髪という弱体化状態でこの強さなんだからな。
訓練ではなく、実戦を行うベルの姿を近くで見せられれば、まだまだ俺はベルの足元すら見えてないってのを痛感させられる。
「もっと精度を上げないとな」
実戦においてもっともっとボドキンを使用して体に馴染ませないと。
最後の相手だけでなく、無手になってからはボドキンと烈火による攻撃を主軸に戦った。
二つの技は決まればワンパンなんだが、練りに時間を要してしまう。
練りを短縮させて、連続技としても使用できるように昇華させないとな。
「精度を上げるためにも励むことだ」
「おうよ」
「良い返事だ」
柔和なベルの笑み。
これだけで頑張れる!
でもって、
「ボドキンと烈火を織り交ぜたオリジナルの新技を作りたいね」
「修練次第では可能でしょうね」
と、リン。
マナの知識に関しては、俺のパーティーだけでなく、対魔王軍の中でもリズベッドと双璧を成す人物。
そんな人物が可能と言うんだから、新たな技を生み出したいね。
コクリコだってサーバントストーンであるアドンとサムソンに新たな利用の可能性を見いだしたからな。
負けられない。
さてさて、
「弔ってやりたいけども――」
「敵地でそのような時間はない」
「だよね。気を失っているのも多いけど、ここで半数――百名程の命を奪っちまったな」
「これで話し合いでの解決は絶望的となったな」
「だよね……」
「相手が耳を貸さなかったのも原因だ。こうなれば武力によってここを落とすしかあるまい」
「おう」
最近はモフモフとばかり戯れていたから忘れていたけど、ベルは歴とした軍人だったな。
武力によって落とすという発言を耳にすれば、プロニアス帝国ラドリア方面軍所属の中佐という立場を再確認できる。
いや本当……。最近はポンコツすぎたからな……。
「どうした?」
「いやなんでもないよ。先に進もう」
現在の俺の思考を読まれたくないので、次の目的地となりそうな方向へと誰よりも早く駆け出す。
次の目標は庭園の先にある城壁。
「アンタで最後」
地上から五メートルほどの位置で飛行する最後の一人に食指を伸ばして発する。
現在、愛刀二振りは鞘の中。
二刀から無手スタイルになったのは、ここでの戦闘を始めて直ぐだった。
命を奪うということを忌避するというより、無手による技を実戦で培っていくためだ。
最後の一人となっても挑む姿勢を崩さない相手は、翼の動きを緩やかにして地上へと降り立つ。
疲労困憊から飛行も辛いといったところ。
肩で息をし、俺達と同じ目線になりながらも最後まで穂先を地面に向けるということはなかった。
「一兵となっても挑む姿はお見事」
心からの称賛を送れば、
「クソが!」
と、辛辣な返事と共に、翼を使わず両足を使っての疾駆。
肩で息をする姿は弱々しいけど、槍による刺突には鋭さがあった。
が、経験を積み重ねてきた現在の俺から見れば回避は容易い。
穂先が体に触れそうになったところで上体を捻って躱し、一気に距離を詰める。
回避で捻った姿勢を維持しつつ、白打の距離に踏み込んで、
「ボドキン」
と、一言。
足から力を伝え、腰を回転させての左ストレートを叩き込む。
「……」
声を発することもなく吹き飛べば、ガシャガシャと金属音をたてながら芝生の上をゴロゴロと転がっていく最後の一人。
「こぉぉぉぉぉぉ――」
息吹を行い、呼吸を整えつつ残心。
周囲だけでなく空も見渡し、敵性勢力に抵抗力がないことを確認。
ベル達が合流してから戦闘を開始して約十分といったところか。
こちらに怪我人なし。対して二百を超える相手は起き上がることはない。
「些か手こずったな」
「そうね」
「さいですか」
ベルとリンとしてはもっと早くに終わらせたかったようだ。
実際、この二人だけで戦うとなればもっと早く終わっていたんだろうな。
俺達の戦闘スタイルに合わせているから時間がかかったといったところだろう。
この差を縮められるようにならんとな。
「ともあれ――勝ちです」
俺が周辺の確認を終えると同時に声を発するコクリコ。
「ベルと性悪が参加すると一気に楽になったね」
「性悪が性悪って言ってもね~」
「はぁ!」
コクリコに続くシャルナの発言をリンが拾えば、シャルナの顔は真っ赤。
どう考えても最初に性悪って言ったシャルナが悪いんだけどな……。
――お互い言い合いながらも良い連携をしてくれた。
以前のポルパロング戦でも目にしたけども、言い合いながらも連携には無駄がないんだよね。
シャルナが近距離にシフトすれば、即座に遠距離からリンが掩護してくれていたからな。
「良い動きだったが、仲間が倒れる度に慌てふためくのは実戦経験の浅さからだな」
と、ベルは倒した相手に向けての感想。
長く艶のある白髪を靡かせながらレイピアを振る動き。
剣技を見切れることは出来なかったけども、ベルの一挙一動は誰もが魅入る剣舞だった。
体に炎を纏うことなく、ただひたすらにレイピアを振るだけ。
一度振れば確実に一人が倒れる。
一合決殺と名付けたい。
――いや、違うか。刃が触れ合うことなく相手は倒れてんだから、無合決殺って造語のほうが似合ってるかな。
「何を考え込んでいる」
「いや。なんか久しぶりにベルの実戦を目にしたもんだからな。やっぱりとんでもなく強いなって思ったんだよ」
相手が空を飛んでいようが問題なしだったからな。
迫る相手を踏み台にして高所をとり、相手の有利な領域であってもお構いなしの空中戦を仕掛けて勝利するんだからね。
コクリコ以上の軽業師だった。
本調子である時の赤髪ではなく、白髪という弱体化状態でこの強さなんだからな。
訓練ではなく、実戦を行うベルの姿を近くで見せられれば、まだまだ俺はベルの足元すら見えてないってのを痛感させられる。
「もっと精度を上げないとな」
実戦においてもっともっとボドキンを使用して体に馴染ませないと。
最後の相手だけでなく、無手になってからはボドキンと烈火による攻撃を主軸に戦った。
二つの技は決まればワンパンなんだが、練りに時間を要してしまう。
練りを短縮させて、連続技としても使用できるように昇華させないとな。
「精度を上げるためにも励むことだ」
「おうよ」
「良い返事だ」
柔和なベルの笑み。
これだけで頑張れる!
でもって、
「ボドキンと烈火を織り交ぜたオリジナルの新技を作りたいね」
「修練次第では可能でしょうね」
と、リン。
マナの知識に関しては、俺のパーティーだけでなく、対魔王軍の中でもリズベッドと双璧を成す人物。
そんな人物が可能と言うんだから、新たな技を生み出したいね。
コクリコだってサーバントストーンであるアドンとサムソンに新たな利用の可能性を見いだしたからな。
負けられない。
さてさて、
「弔ってやりたいけども――」
「敵地でそのような時間はない」
「だよね。気を失っているのも多いけど、ここで半数――百名程の命を奪っちまったな」
「これで話し合いでの解決は絶望的となったな」
「だよね……」
「相手が耳を貸さなかったのも原因だ。こうなれば武力によってここを落とすしかあるまい」
「おう」
最近はモフモフとばかり戯れていたから忘れていたけど、ベルは歴とした軍人だったな。
武力によって落とすという発言を耳にすれば、プロニアス帝国ラドリア方面軍所属の中佐という立場を再確認できる。
いや本当……。最近はポンコツすぎたからな……。
「どうした?」
「いやなんでもないよ。先に進もう」
現在の俺の思考を読まれたくないので、次の目的地となりそうな方向へと誰よりも早く駆け出す。
次の目標は庭園の先にある城壁。
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