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天空要塞
PHASE-1469【十人張り】
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「トール。舌戦もいいが――」
「口論だけじゃすまないくらいに、殺意増し増しのようだな」
ベルへと返しながら城壁全体を見渡せば、デカ頭と話しをしている最中に狭間から鏃が生えてくれば、小塔や壁上からも同様に鏃を向けられる。
障壁魔法を使用せずに一斉射されてしまえば、瞬時にしてハリネズミみたいな体になることだろう。
「せっかく翼や羽があるというのに、それを活用せず壁に守られる戦い方をするとは」
鼻で笑うコクリコ。
――挑発をしたところで、返事はない。
「この程度の城壁なら私が破壊してあげましょう」
挑発しても返事がないから更なる挑発とばかりに、コクリコがワンドの貴石を輝かせながら語を継ぐ。
「なら私もちょっとは力を見せようかしら」
と、これにリンも続く。
コクリコと同じように口角を上げた笑みだが、リンのは蠱惑なのも混ざっているんだよな。
俺はその笑みに魅了されそうになっているけど、城壁側からは二人に対してリアクションを返してくることはなく、
「放て」
抑揚のない短い言葉が出てくるだけ。
発したのはこの場所で最初に俺達へと話しかけてきたグレートヘルムがデカいヤツ。
声に従い、城壁のあらゆる場所から矢を一斉に放ってくる。
「プロテクション」
「あ!?」
半円形状で顕現する障壁はリンによるもの。
自分が展開するつもりだったのか、先を越されて悔しそうなシャルナ。
如何に強力で大量な矢であろうも、放つだけ無駄とばかりに、リンが展開した障壁が悉くを防いでいく。
「通路からの戦いから思っていたことだけど、良い矢を使ってるよね」
地面に力なく落ちて転がる矢を見ながらシャルナが語る。
エルフという種族だからか、相手の矢の作りの良さに感心し、「ちょっとこの矢を放ってみたい」なんて呟いていた。
「無駄なことが大好きなようで」
「それは私が言うことじゃないかしら……」
「全くだね……」
プロテクションを展開してくれているリンではなく、コクリコが余裕の発言をするのはいつものこと。
さも自分が対処しているように見せるのがコクリコだからな。
リンと声だけ参加のオムニガルは呆れ口調。
だがコクリコが言うように、無駄だというのは本当。
どれだけ放とうがこちらには届くことはないのに射かけ続けてくる。
「各自、警戒を緩めるなよ」
と、ここでベルから注意を受ける。
意味の無い行為を相手がするのには意味があるということ。
注意を受ける中、
「来るぞ」
と、継ぐベルの視線は標準サイズより二回り大きいグレートヘルムに向けられる。
なので俺も視線を追えば、
「よい障壁のようだがこれはどうか?」
「デカッ!」
頭だけでなく、手にする弓もデカかった。
弓を縦にすれば下の部分である本弭が地面に触れてしまうからだろう、構え方は弓を横に寝かせての構え。
三メートルを超える長弓は長いだけでなく、各部も太い。
弦音はキリキリ――といったものではなく、ギチギチと歪さのある音。
「どんだけの強弓だよ」
「ハッ! 聞いて驚け! 十人張りだ!」
「源為朝の倍をいくんじゃねえよ」
「知らん名だ。分かるのは非力だということだな」
「お前より強いっての! 鎮西八郎なめんなよ! 悔しかったらその一矢で船を沈めてみせろ!」
「ほう、矢で船を沈めるか。大した御仁だ。会ってみたいものだな」
相手よりもベルの方が食いついてしまった……。
「船よりもまず先に、その障壁を砕いてくれる。我が一矢を受けよ!」
そう言って射れば、ゴヒュンと豪快な音が弓から発せられる。
次には、
「プロテクション!」
と、若干、焦るリンが次の障壁を展開。
ドーム状ではなく分厚い一枚からのモノを俺達の前面に展開。
「ふぅ~」
と、続けて出すのは安堵の息。
リンが安堵の息を漏らすのも驚きだが……、
「嘘だろ……」
矢はリンのドーム状のプロテクションを貫通し、続けて顕現させた分厚いのに突き刺さって止まった。
次のを出していなかったなら、間違いなく俺の頭部に向かってきたルートだった……。
分厚い障壁が消えると同時に地面へと落下する矢は、ガランとこれまた豪快な音。
「槍じゃねえか……」
何を人力でバリスタで撃ち出すようなデカい矢を撃ってんだよ……。
「どうだ! チンゼイハチロウなる者も肝を冷やす一矢であろう!」
「やるわね」
まさか自分の障壁を突破してくるとはリンも思っていなかったようで、称賛を口にしながらも、眉尻がやや上がっているから不愉快でもあるようだ。
「我に続け!」
デカ頭の声に、壁上、小塔、狭間から次射が無防備になったこちらへと放たれる。
「プロテクション」
今度は自分がと、シャルナがリンを真似てドーム状で展開。
並の矢は防ぐんだけども、
「そら!」
デカ頭の矢となれば、
「冗談じゃないわよ!?」
リンのプロテクションを貫通したように、シャルナのも貫かれる。
即座に三重からなるプロテクションを展開するも、ドームを貫き三重の内、二枚まで抜いてきた。
貫いてきた矢を見るシャルナは、鏃に魔法が付与されていると教えてくれる。
それでも矢で貫通されるとは思いもしなかったようで、障壁を展開してくれた一人目と二人目は悔しそうでもあり、貫かれることに得心がいかないといったところ。
こちらが大いに驚く反面、相手側は大いに沸く。
小数でありながら、味方を撃破してきた連中。
そんな連中が一矢に恐怖しているということで士気が高まっているようだった。
「調子に乗るのもそこまで」
士気の中心となっているデカ頭に対して不快感を見せるリンは、
「ダークフレイムピラー」
フィンガースナップと共に発せば、デカ頭の足元から黒炎の柱が立ち上る。
火炎系魔法とは違う、闇系の炎からなる上位魔法。
直撃だというのは分かる。
リンの上位。しかも闇魔法となればデカ頭も――、
「効果は無しだな!」
体を大の字にして闇の炎を振り払ってみせるデカ頭。
「おお、マジかよ!」
アレが通用しないってなると、間違いなくやべえヤツだ。
「口論だけじゃすまないくらいに、殺意増し増しのようだな」
ベルへと返しながら城壁全体を見渡せば、デカ頭と話しをしている最中に狭間から鏃が生えてくれば、小塔や壁上からも同様に鏃を向けられる。
障壁魔法を使用せずに一斉射されてしまえば、瞬時にしてハリネズミみたいな体になることだろう。
「せっかく翼や羽があるというのに、それを活用せず壁に守られる戦い方をするとは」
鼻で笑うコクリコ。
――挑発をしたところで、返事はない。
「この程度の城壁なら私が破壊してあげましょう」
挑発しても返事がないから更なる挑発とばかりに、コクリコがワンドの貴石を輝かせながら語を継ぐ。
「なら私もちょっとは力を見せようかしら」
と、これにリンも続く。
コクリコと同じように口角を上げた笑みだが、リンのは蠱惑なのも混ざっているんだよな。
俺はその笑みに魅了されそうになっているけど、城壁側からは二人に対してリアクションを返してくることはなく、
「放て」
抑揚のない短い言葉が出てくるだけ。
発したのはこの場所で最初に俺達へと話しかけてきたグレートヘルムがデカいヤツ。
声に従い、城壁のあらゆる場所から矢を一斉に放ってくる。
「プロテクション」
「あ!?」
半円形状で顕現する障壁はリンによるもの。
自分が展開するつもりだったのか、先を越されて悔しそうなシャルナ。
如何に強力で大量な矢であろうも、放つだけ無駄とばかりに、リンが展開した障壁が悉くを防いでいく。
「通路からの戦いから思っていたことだけど、良い矢を使ってるよね」
地面に力なく落ちて転がる矢を見ながらシャルナが語る。
エルフという種族だからか、相手の矢の作りの良さに感心し、「ちょっとこの矢を放ってみたい」なんて呟いていた。
「無駄なことが大好きなようで」
「それは私が言うことじゃないかしら……」
「全くだね……」
プロテクションを展開してくれているリンではなく、コクリコが余裕の発言をするのはいつものこと。
さも自分が対処しているように見せるのがコクリコだからな。
リンと声だけ参加のオムニガルは呆れ口調。
だがコクリコが言うように、無駄だというのは本当。
どれだけ放とうがこちらには届くことはないのに射かけ続けてくる。
「各自、警戒を緩めるなよ」
と、ここでベルから注意を受ける。
意味の無い行為を相手がするのには意味があるということ。
注意を受ける中、
「来るぞ」
と、継ぐベルの視線は標準サイズより二回り大きいグレートヘルムに向けられる。
なので俺も視線を追えば、
「よい障壁のようだがこれはどうか?」
「デカッ!」
頭だけでなく、手にする弓もデカかった。
弓を縦にすれば下の部分である本弭が地面に触れてしまうからだろう、構え方は弓を横に寝かせての構え。
三メートルを超える長弓は長いだけでなく、各部も太い。
弦音はキリキリ――といったものではなく、ギチギチと歪さのある音。
「どんだけの強弓だよ」
「ハッ! 聞いて驚け! 十人張りだ!」
「源為朝の倍をいくんじゃねえよ」
「知らん名だ。分かるのは非力だということだな」
「お前より強いっての! 鎮西八郎なめんなよ! 悔しかったらその一矢で船を沈めてみせろ!」
「ほう、矢で船を沈めるか。大した御仁だ。会ってみたいものだな」
相手よりもベルの方が食いついてしまった……。
「船よりもまず先に、その障壁を砕いてくれる。我が一矢を受けよ!」
そう言って射れば、ゴヒュンと豪快な音が弓から発せられる。
次には、
「プロテクション!」
と、若干、焦るリンが次の障壁を展開。
ドーム状ではなく分厚い一枚からのモノを俺達の前面に展開。
「ふぅ~」
と、続けて出すのは安堵の息。
リンが安堵の息を漏らすのも驚きだが……、
「嘘だろ……」
矢はリンのドーム状のプロテクションを貫通し、続けて顕現させた分厚いのに突き刺さって止まった。
次のを出していなかったなら、間違いなく俺の頭部に向かってきたルートだった……。
分厚い障壁が消えると同時に地面へと落下する矢は、ガランとこれまた豪快な音。
「槍じゃねえか……」
何を人力でバリスタで撃ち出すようなデカい矢を撃ってんだよ……。
「どうだ! チンゼイハチロウなる者も肝を冷やす一矢であろう!」
「やるわね」
まさか自分の障壁を突破してくるとはリンも思っていなかったようで、称賛を口にしながらも、眉尻がやや上がっているから不愉快でもあるようだ。
「我に続け!」
デカ頭の声に、壁上、小塔、狭間から次射が無防備になったこちらへと放たれる。
「プロテクション」
今度は自分がと、シャルナがリンを真似てドーム状で展開。
並の矢は防ぐんだけども、
「そら!」
デカ頭の矢となれば、
「冗談じゃないわよ!?」
リンのプロテクションを貫通したように、シャルナのも貫かれる。
即座に三重からなるプロテクションを展開するも、ドームを貫き三重の内、二枚まで抜いてきた。
貫いてきた矢を見るシャルナは、鏃に魔法が付与されていると教えてくれる。
それでも矢で貫通されるとは思いもしなかったようで、障壁を展開してくれた一人目と二人目は悔しそうでもあり、貫かれることに得心がいかないといったところ。
こちらが大いに驚く反面、相手側は大いに沸く。
小数でありながら、味方を撃破してきた連中。
そんな連中が一矢に恐怖しているということで士気が高まっているようだった。
「調子に乗るのもそこまで」
士気の中心となっているデカ頭に対して不快感を見せるリンは、
「ダークフレイムピラー」
フィンガースナップと共に発せば、デカ頭の足元から黒炎の柱が立ち上る。
火炎系魔法とは違う、闇系の炎からなる上位魔法。
直撃だというのは分かる。
リンの上位。しかも闇魔法となればデカ頭も――、
「効果は無しだな!」
体を大の字にして闇の炎を振り払ってみせるデカ頭。
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アレが通用しないってなると、間違いなくやべえヤツだ。
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