異世界冒険記『ストレージ・ドミニオン』

FOX4

文字の大きさ
1,482 / 1,861
天空要塞

PHASE-1482【突撃歩兵】

しおりを挟む
「なんだァ? てめェ」
 即座にベルとそいつの間に割り込めば、両手を上げつつ作り笑いと共に距離を取ってくる。

「いやいや、あまりにも美しいからね。話しかけないと失礼だろう。もちろん他の女性陣にも挨拶をさせてもらうよ。皆して美しいのだから」
 言いながら片目をぱちりと閉じるという所作。
 ――……ウインク!? ウインク!
 クサい発言をしながらウインクをする。よくもまあ恥ずかしがらずにそんな事が出来ますわ!
 
 明らかに俺とは違う世界で楽しんでいるヤツだ。
 
 ――陽の者。コイツは間違いなく陰の者である俺とは対極の位置にいる陽の者。
 絶対に相容れないし、馴れ合いたくないヤツだ。
 
 しかも――、

「中々に整った顔じゃない」
 そう! リンの言うとおりイケメンですわ!
 人間フェイスのイケメンですよ!
 先生のような爽やかスマイルで嫌味のないイケメンとは違って、ひたすらに女が好きで下半身でまず考えるタイプのイケメンだね!
 こっちが殺意を宿すには十分な理由を持っていると言ってもいいイケメン。
 ワンコンタクトでコイツの全てを否定してやりたいくらいの女たらしのイケメン。

「コイツは女を駄目にして、女を快楽目的だけでしか見ていない駄目なヤツだ!」

「初対面でまだ名乗りもしていないのに、随分な言い方じゃないか。女を駄目にするってのは合ってるけどさ。でもそれは俺が悪いんじゃなくて、俺に惚れた女たちが俺だけを見るようになって、他がおざなりになるんだよ」
 喋々と!

「よし、殺す!」

「兄ちゃん。発言がストレートすぎるよ……。その発言、勇者としてどうなのさ。まあ、負の感情は美味しいけど」

「ミルモン、ありゃ人様の畑を荒らす悪いハゲタカだ! 駆除せねばならん!」

「凄い殺意だね……。兄ちゃん」

「まったくだね。初対面でそこまで悪く言われると、こっちの心が痛むってもんだよ」

「心どころか体もボロ雑巾のようにしてやる!」

「とても最初の頃は話し合いでこの地を訪れたとは思えない言い様だ」
 肩を竦めるな! 男前の小馬鹿にした笑いとその動作は俺の神経を苛立たせてくる!

「とりあえず、自己紹介くらいさせてほしいね」

「倒しヤツの名など覚える必要などない!」

「落ち着けトール。敵視しすぎだ。話が先に進まない」

「感謝するよ。白銀の美女」

「必要ない」

「つれないな~。俺の情熱でその閉ざした心を温めてあげたいね」
 かゆい、かゆい!
 体がかゆい! なんでここに来てこんなナンパなのが出てくるんだよ!
 苦手な顔ではあるけども、ジージーの方を相手にし続けていた方がまだましなレベルのヤツだな。

「それにしても美しく愛らしい女性陣だ」
 ああ! かゆい!

「下心をまる出しにした、にたつく笑みを浮かべていないで名乗ったらどうだ!」

「いや、君……。こっちが名乗ろうとしたら話を遮ってきたでしょう……」

「黙れい!」

「凄い横柄だな勇者というのは……」
 呆れるイケメン。
 まるで俺が嫉妬しているように思っているのかな?
 嫉妬ではなく殺意だというのを理解してもらいたいよ!

「俺の名はラズヴァート・エッケレン。フェイレンの出自」

「――フェイレンてなんや?」

「翼人の種族の一つだよ」
 俺の問いかけにシャルナが教えてくれれば、

「有り難うハイエルフの美人さん。お礼に食事でもどうだい?」

「ハハハ……」
 渇いた笑いで返すシャルナに脈無しと思ったのか、残念と一言。

「フェイレン族の男前、続けんかい!」

「怖いね~」
 スマイルで返してくるところに更に殺意を抱いてしまう狭量な俺氏。
 イケメン――テキ! オレ、コイツ、キライ!

「兄ちゃん……」
 俺の感情を察したミルモンが呆れるけども、嫌いなものは嫌いでしかない。
 整った顔に褐色の肌。金色の瞳に短髪の黒紙。
 耳には蛇を模した金ピアス。これまた金で出来ている太いチェーンネックレスには、魔力向上のためと思われる緑色のタリスマンがはめ込まれている。
 服装は全身黒で差し色は金。
 ノースリーブで胸元をはだけさせた上半身。
 下半身はニッカポッカ風。
 
 褐色肌に金色のアクセサリー。
 でもってゆったりと着こなす防御力がなさそうなファッションは、俺が苦手とするもの。
 ルックスも服装もまったくもって受け付けないね。

「こっちは続けたいのに、もの凄く敵意を持って凝視してくるね……」
 俺の睨みに話を続ける事が出来ないと言いながらも、笑みには余裕があるところが気に入らないんだよね!

「トール。いい加減にしろ」

「――おう!」
 ここでもベルに感謝をするラズヴァート。
 
 典雅な一礼を行って姿勢を戻したところで、

「自分は翼幻王ジズ様の側仕えである部隊に所属している。所属部隊名はストームトルーパー」

「なんだその銀河帝国の兵と同名な部隊名は! なめてんのか!」

「ギンガ帝国?」
 首を傾げるラズヴァート。

「突撃歩兵の事だろう」
 と、ベル。

「飛んでるのに歩兵かよ。で、側仕えって事はストームトルーパーの立ち位置は近衛兵と考えていいのか?」
 問えば、

「近衛と言うよりは、何かしらの問題が発生した時、主の目となる為の先駆けと言ったところかな」

「なるほど。先駆けの割には随分と遅い出会いだったけどな」
 こっちはここを訪れてそこそこの時間が経過しているし、戦闘も行ってきたんだけどな。
 
 だが、まあいい。
 
 そうかそうか。コイツは翼幻王ジズの側仕えか。
 願ってもない相手だ。

しおりを挟む
感想 588

あなたにおすすめの小説

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

最強の異世界やりすぎ旅行記

萩場ぬし
ファンタジー
主人公こと小鳥遊 綾人(たかなし あやと)はある理由から毎日のように体を鍛えていた。 そんなある日、突然知らない真っ白な場所で目を覚ます。そこで綾人が目撃したものは幼い少年の容姿をした何か。そこで彼は告げられる。 「なんと! 君に異世界へ行く権利を与えようと思います!」 バトルあり!笑いあり!ハーレムもあり!? 最強が無双する異世界ファンタジー開幕!

夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~

青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。 彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。 ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。 彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。 これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。 ※カクヨムにも投稿しています

貧弱の英雄

カタナヅキ
ファンタジー
この世界では誰もが生まれた時から「異能」と「レベル」呼ばれる能力を身に付けており、人々はレベルを上げて自分の能力を磨き、それに適した職業に就くのが当たり前だった。しかし、山奥で捨てられていたところを狩人に拾われ、後に「ナイ」と名付けられた少年は「貧弱」という異能の中でも異質な能力を身に付けていた。 貧弱の能力の効果は日付が変更される度に強制的にレベルがリセットされてしまい、生まれた時からナイは「レベル1」だった。どれだけ努力してレベルを上げようと日付変わる度にレベル1に戻ってしまい、レベルで上がった分の能力が低下してしまう。 自分の貧弱の技能に悲観する彼だったが、ある時にレベルを上昇させるときに身に付ける「SP」の存在を知る。これを使用すれば「技能」と呼ばれる様々な技術を身に付ける事を知り、レベルが毎日のようにリセットされる事を逆に利用して彼はSPを溜めて数々の技能を身に付け、落ちこぼれと呼んだ者達を見返すため、底辺から成り上がる―― ※修正要請のコメントは対処後に削除します。

冷遇された聖女の結末

菜花
恋愛
異世界を救う聖女だと冷遇された毛利ラナ。けれど魔力慣らしの旅に出た途端に豹変する同行者達。彼らは同行者の一人のセレスティアを称えラナを貶める。知り合いもいない世界で心がすり減っていくラナ。彼女の迎える結末は――。 本編にプラスしていくつかのifルートがある長編。 カクヨムにも同じ作品を投稿しています。

異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。

もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。 異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。 ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。 残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、 同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、 追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、 清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……

異世界へ行って帰って来た

バルサック
ファンタジー
ダンジョンの出現した日本で、じいさんの形見となった指輪で異世界へ行ってしまった。 そして帰って来た。2つの世界を往来できる力で様々な体験をする神須勇だった。

はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~

緋色優希
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。

処理中です...