異世界冒険記『ストレージ・ドミニオン』

FOX4

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天空要塞

PHASE-1509【改良が必要とのこと】

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 ――リンとしては、もっとバランスのよい編制をしてもらいたいようだが、リンという術者がいるからアンデッドの面々は活動できる。
 だからこそ本丸が落とされるのを避けるのは当然なので、リンに軍勢の多くを割くことは最適解だ。
 これにシャルナもいてくれるとなれば戦力は十分。
 言い合いはしても連携はとれるからな。

「俺の事は心配しなくていいよ。召喚に関しては俺だってちょっとしたもんだからな」

「だ、そうだ。主は兵を引き連れてハイエルフと行動してくれ」

「分かったわよ。トール。無理はしないことね」

「おうよ」

「本当に無理だけはしないようにね。回復役がいなくなるんだから」
 シャルナから心配の声を受けるも、

「ポーションで済ませるさ。シャルナに貰ったグレーターもあるしな」
 不安にさせないように笑顔で返す。
 CFコンバットフィールドから回復パックや回復箱を召喚して使用も出来るから、回復が枯渇するという心配はない。
 即死に近い攻撃を受けなければの話だけど。

「新しいのはまた作るから、持ってるのは全部使って良いからね」

「あいよ」
 と、返して別れる。
 俺の所に残るのは――、ルインリーダー。エルダーとピルグリムが一体ずつ。
 
 これに加えて、

「なんだよこの面子は! 最悪かよ!」

「最悪? 最高だろう」

「ふざけんな勇者! 野郎にアンデッドのお供が三体だぁ! 夢も希望もときめきもあったもんじゃねえ!」

「ときめきなんてのを求めなくても結構。そもそも、うちの女性陣はお前に脈無しだからな」

「そんなもんは口説いてみないと分からねえだろうが!」

「「「「ないない」」」」

「くっ! 勇者だけならいざ知らず、アンデッドにまで茶化されるなんてよ……」
 今のではっきりと分かったのはピルグリムも――、

「喋れるんですね」

「無論」
 と、頷きと共に短く返してくれた。
 会話が成り立つのは助かる。
 俺が指示を出せば聞き入れることは会話がなくても可能だろうけど、

「勇者殿、群れの追撃が来ます。対処しますか?」

「お願いします」
 と、相手からの提案を自分の耳で聞き入れることが出来るから、指示も出しやすくなる。
 返せば直ぐさま通路にプロテクション。
 これにより時間稼ぎをしつつ更に先へと駆ける。

「くそ!」
 ラズヴァートはキツそうだな。
 縛られた状態で走るからな。普通に走るより体力がいるよな。

「普段から翼ばかりに頼っている証拠だ」

「うるせえよ金ピカスケルトン!」
 疲れも知らないヤツが偉そうに口上を垂れるな! と、継ぐ。
 ムキになる辺り、ルインリーダーが言うように、普段は翼にばかり頼っての移動のようだ。
 まあ、怒号を飛ばしながら走れるんだからそこまで心配しなくてもいいようだけど。

 ――。

「ふぃ~」
 流石に走りすぎた。通路をひたすらに走った。
 その間に横道にも入ったりしてたので、何処にいるのか皆目、見当もつかないとラズヴァート。
 間違いなく迷ったと、俺よりもキツそうに肩で息をしながら言ってくる。

「ここを拠点としている者が少し走った程度で道が分からなくなるとは情けないな」

「然り、然り」
 ルインとエルダーによる小馬鹿にした発言。

「虚言かもしれません」
 と、ピルグリム。
 俺達に道が分からなくなったと言いつつ、実際はここら一帯で彷徨わせるという一計と疑っている。

「んなわけあるか」
 淡々と返してきながらも、

「とりあえず歩いていれば分かるだろうよ」

「歩く余裕はないぞ」
 背後からの無数の気配を感じ取りつつ言えば、

「もう走りたくねえよ……」
 本気でうんざりという弱々しい返しが来る。

「なんと情けない。貴公はそれでもこの居城に鎮座する者の側にて働く精鋭か」

「本当にうるせえ金ピカスケルトンだな。勇者! 少し黙らせろ!」

「よし! まだまだ元気な声が出せるな。だったら走るぞ」

「あだっ! くそが!」
 尻を蹴ってやれば、俺を睨みながらも走り出す。

 ――程なくして。

「ようやく広い所に出られたな」

「やっと見知った場所だ。ここまでくれば安全だ。もう走らねえぞ!」
 言いながら縛られた状態で仰向けに寝転がる。
 後ろ手で拘束されているから逆に疲れそうな寝方。
 でも、その安心しきった姿からして、ここが安全圏だというのは分かる。
 
 けども――、

「本当か?」
 と、一応の確認。

「ああ、この区画からはスカイフィッシュたちは近づけないようになっている」
 食の本能に従っているだけの生物なのに近づけないようになっている?
 つまりそれは、本能でここに近づいてはいけないと感じ取っているからか?
 天敵のような存在がいるということか?
 だとしたら――だ。

「なんでベルには襲いかかれたんだろうな。本能で挑んではいけないと判断するはずなんだけどな」

「末端は単純だからな。食欲で行動する以外、他は考えない――が、それを唯一、制御することが可能なのがいる」

「おん? 制御する? 指示に従うって事は立派に知性があるじゃないか」
 首を傾げて問えば、

「知性と言うよりはこれまた本能だな。生まれた時から刻まれた本能だ」

「言っている意味が分からん」

「社会性のある生物ということでいいのだろうか?」
 頭を傾げることしか出来ない俺の横で、ルインの答えにラズヴァートは気怠そうに頷く。
 脳みそもつまっていない空っぽの頭のくせに――と毒づきながら……。
 本当にアンデッドが嫌いなようだな。
 
 社会性――か。

「つまりは蟻みたいに女王がいるんだな」
 その女王に知性があり、末端は本能で活動しながらも生まれながらに刻まれた女王の命令には従って活動するということなのかな?

「その女王がこの辺りには近づかないようにと指示をしているってことは、要塞でも重要な部分って事だな?」

「別段、重要ではない。五月蠅く、こちらにも襲いかかってくるのが終日、要塞内を飛び回っていれば誰だってゆっくりできないだろう。閑静な場所が有ることで生活と心にゆとりが生まれるからな。試験的な生物であるから欠点があるのは仕方ないこと。女王を含めて更なる品種改良をせねばな。目下の課題は敵味方の識別を可能とすること。それが可能になれば、場所を限定させずに行動させることも出来る」

「お! 初めて聞く声で、喋々とした語りによる説明ありがとう」

「初めて耳にする声に緊張感を持たない。存外、大物か」
 室内に響き渡る声。

「声だけでなく初対面といきたいね」
 残火を抜刀して構えれば、スケルトン達も直ぐさま俺の側に来て隊伍を組んでくれる。
 
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