異世界冒険記『ストレージ・ドミニオン』

FOX4

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天空要塞

PHASE-1542【一階制圧?】

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「執事という立場で、俺達をこの要塞の主である翼幻王ジズ殿に会わせてくれるという考えはありますか。クロウス氏?」

「ございません」
 即答。
 圧倒的強者であるベルを前にしてもぶれることのない忠誠心は流石。

「ですが、皆様の道中が気になるのも事実。下まではお付き合いしましょう」
 ――てことで、皆して謁見の間を後にし、立哨をしていたストームトルーパーの美人二人も起こしてから下へと移動。
 さっきまで戦っていた面々と螺旋階段をくだっていく中、ベルはポームスと話しを弾ませ、ここにミルモンも参加させられる。
 俺の肩から再びベルの肩へと移動。
 ミルモンとポームスという同サイズの二人に囲まれて幸せそうなベルとは違い、同サイズ故なのか、ミルモンとポームスは睨み合っていた。
 ライバル視するような相手の出現ってところかな。

 ――。

 帰りは行きと違ってゆっくりとした移動だった。
 螺旋階段をくだり一階まで到着。

「一階へと到着したのはいいけどさ。これからどうするんだい? 大変なことになると思うんだけど」
 手綱を引いてちびっ子ワイバーンと共にベルから離れれば、ポームスが悪い笑みとなる。

「止めておきなさいポームス」
 クロウス氏が止めようとするも、

「いやだね!」
 小さな角笛を手提げ鞄から取り出し、長い吸気で胸を膨らませてからの――プィィィィィィィィィィィィィィ―――と、何とも気の抜ける音。
 気の抜ける音ではあるも、小さな角笛から生まれる甲高い音は、通路の壁に反響しながら一帯に響き渡っていく。

「これでお前達も終わりだよ!」

「全く無粋な。やはり勇者殿たちついてきて正解でした」
 ポームスの行動に呆れるクロウス氏。

「何をしたんだい。小さいの?」
 ライバル関係に発展しそうなミルモンからの質問。

「これからお前達は、ここいらに待機している連中と戦うことになるのさ! 理解したか小っこいの!」

「何が小っこいのだよ。チビスケ!」

「お前の方がボクよりチビだよ!」
 と、身の丈マウントによる応酬が始まる中、

「迎撃準備!」
 二人のやり取りなどどうでもいいとばかりに全体に伝え、隊列を整える。
 ゲッコーさんとユーリさん。
 コクリコとスケルトンの面々。
 で、合流したベル。
 正直、どんなのが来ても負ける気はしない。
 翼幻王ジズを除けば最高戦力であろうクロウス氏に勝利した後だから余計にそう思ってしまう。
 だからといってここで弛緩した姿勢を見せれば最強さん達に怒られるので、号令も発した立場でもあるから、隊列の先頭に立って構える。
 
 ――……。

「――ふむん」

 ――……。

「なにも起きませんね」

「だな」
 肩すかしをくらうように俺とコクリコは構えが緩くなってしまう。
 一応ベルの方を見れば、俺達のように構えを緩くし、直ぐさまポームスが騎乗するちびっ子ワイバーンを両手で捕まえてからの抱っこ。

「あれれ~」
 おかしいな~。とばかりにもう一度、角笛を吹いてみせるが、角笛に呼応するようなアクションは起こらない。

「これは……」
 クロウス氏も怪訝な表情になる。
 角笛は緊急事態を知らせるもの。
 この一帯にいる面々なら、まず間違いなく素早い行動をするはずなのにそれがない。
 だからこそ、クロウス氏とアル氏は困惑。

「カイディル――どう見る?」

「不測の事態が起こっていると考えるべきでしょうね」
 三つ揃え二人の声は不安なのも。

「おい、ちびっ子。ここいらに待機してるって言ったけど、どこに待機してたんだい?」
 ここで不安な声音の二人と違い、自信に満ちた声のミルモンがポームスへと問いかける。

「ちびっ子が偉そうに! この通路にはいくつもの部屋があるんだ。そこにはこの要塞でもえり抜きの者達が待機してるんだぞ」
 謁見の間を訪れた時、クロウス氏が俺達に戦ってほしかったと言っていた面々だな。
 
「――ふふん♪」
 ニヤリと口角を上げるミルモン。
 宙を舞い、腕組みをし、勝ち気な笑みを湛えてポームスを見下ろせば、

「部屋の連中は来ないよ」

「どういう事でしょうか?」

「簡単だよカラス人間。部屋の連中は既に戦闘不能になっているからね。ことごとく――ねっ!」

「馬鹿な!?」
 嘴を大きく開いて驚くのはアル氏。
 一体どういうことでしょうか? と、驚くアル氏の横でクロウス氏がミルモンへと質問すれば、

「簡単な事だよ。オイラ達が謁見の間に赴く前に各部屋を探索してたってことさ」

「ええっと……。つまりは謁見の間へと来る前に、この一帯で待機していた者達を全て倒した……と?」

「そうだよ。でも安心しなよ。お姉ちゃんは無益な殺生はしてないよ。皆、おねんねしているだけさ。ね、お姉ちゃん♪」

「ミルモンの言うとおり。手心は加えました」

「あ、ああ……。その……慈悲には感謝いたします」
 ここでも執事然とした一礼ではなく、深々とした会釈のクロウス氏。

「そんな馬鹿な!? 自分同様、この区画にはグラスパールがいたはず! いくら貴女が強くともそんな簡単に……」
 上擦りながらも質問をするアル氏。
 アル氏が信頼していると思われるグラスパールと呼ばれる存在は、かなりのやり手のようだ。

「グラスパール。貴方と同種族の御仁ですね」

「そうです」

「素晴らしい実力の持ち主でした」
 ――以前にクロウス氏と一緒にいたもう一人のガーゴイルだな。
 アル氏と同等のレベルくらいだろうから間違いなく強い存在。
 ベルが素晴らしいと言っている以上、手間取った相手だったようだ。

「なに言ってんのさお姉ちゃん。簡単に倒したじゃないか。綺麗なキック一撃だったよ。とっても凄かったよ!」

「そ、そうか! ミルモンがそんなにも喜んでくれたのなら何よりだ!」
 ミルモンのお褒めの言葉に凄く喜んでいらっしゃる……。
 反面、相手サイドは蹴り一発という発言を耳にして、衝撃を通り越して意気消沈ですよ……。
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