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天空要塞
PHASE-1548【お声だけ】
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開いたところで、
「見ない魔導技術ね」
リンが初めて目にする技法だったらしく、白壁に興味を持ったご様子。
開かれた部分を食指でなぞっている中――、
「さっさと入りなよ」
ポームスからの催促に後ろ髪を引かれつつ、リンも入ってくる。
相当、気になったんだな。
リンから視線を正面へと戻せば、
「真っ白ですね。トール」
「真っ白だな。コクリコ」
一面――白。
白い空間。
ここも階段同様、蛍光灯のような明るさが支配している。
加えて全体が白一色だから明るさが余計に際立つ。
「ここの主殿は白が好きなようだな」
「ベルの髪にも興味を持つかもね」
と、シャルナから返されれば、興味を持たれるのは嫌だったのか、困った表情になっていた。
しかし――、
「無機質で殺風景だな」
白色の空間は断捨離でもしたのかとばかりに何もない。
そう、何もない。
つまりは――、
「誰もいない」
「いや、それはない」
ベルの声音が鋭いものに変わる。
可愛いを相手にしている時のポンコツモードとは違い、軍人然とした涼やかで凛としたもの。
「いるな」
と、ゲッコーさん。
二人の強者に共通しているのは、今までに耳にしたことがない緊迫した声。
二人から伝わってくるただならぬひりつき。
それ程ということか。
そう思っていた矢先に、
「身構えなくてもいいわよ」
反響する声は女性のもの。
同時にポームスがちびっ子ワイバーンから飛び降り、小さな体で片膝をつく。
小さな体が更に小さくなる。
「ポームス。この者達の実力の評定はいかほど?」
「大立者を倒すだけの力は持っています」
「そのようね。だからこその随伴なのでしょうから」
「その通りです。ですが、勇者一人の力はたかが知れております」
言うね~。
事実だから反論はしないよ。
それにポームスの姿勢からして、横から口を挟むよりも問いかけられるまで静かにして待っていた方がいい存在のようだからな。
「――身構えなくてもいいと言っているのに。もっと楽にしてくれていいのよ」
反響。
7.1サラウンドを思わせる臨場感が原因で、何処から声が発せられているのかが把握できない。
身構えなくてもいいという発言があろうとも、把握できない限り油断はできない。
強者メンバーは言わずもがな。俺やコクリコも経験を積み重ねたことで危機に対処するだけのスキルは培っている。
――……アル氏の前例があるからコクリコには些か不安もあるが……。
とにかく、たとえ相手がクロウス氏たちが束になっても太刀打ち出来ないような存在であろうとも、隙を与えなければ簡単には手出しはできないはず。
「無駄口もなく、こちらからの反応を待つという常識は持っているようだから好感を持ちましょう。ちょっと融通が利かないようだけど」
「有り難うございます」
ここで初めて声の主に対して言葉を返す。
好感を持ってもらえるのはこちらとしても本心から有り難いからな。
「とはいえ、多くの同胞の命を奪った怨敵という立場は今後も変わる事はないでしょうね」
「その事に関しては申し訳なく思っております。しかしながら、無駄口なくこちらとの対話に応じてくださっていれば、また違った出会い方が出来たとも思っております。もちろん、外殻であるルドルクナスを無断で突破したことで警戒されるのは理解もしておりましたが、それでも話し合いには応じてほしかったです」
ひたすら謝罪による誠意も良いだろうけど、弱腰と思われるのもいやなので塩梅を考えつつの返事。
「長々と語るのは言い訳にも聞こえるけど、間違いでもないので発言内容は受け入れましょう」
「感謝します」
姿なき声はとても柔らかく魅力的で、油断していると引き込まれそうになる。
「敵対関係ではあれ、ルドルクナスを突破してきたことはお見事」
称賛にここでも素直に感謝で返す。
感謝を述べた次には、どうやってこの地へと降り立つ事が出来たのか。という質問が始まる。
――ツッカーヴァッテによるもの。
――そのツッカーヴァッテなる存在がどうやって誕生したのか。
――どうしてエビルレイダーを生み出していることを知り、自分たちの手中に収めることが出来たのか。
と、矢継ぎ早。
どうやってエビルレイダーを手中に収めたのかと問われたところで、
「オイラだよ。オイラの見通す力さ♪」
俺の左肩から飛び立ち、羽をパタパタと動かし宙を舞い、姿なき存在に自分をアピールするように胸を張るミルモン。
――……。
得意げなミルモンに対して、相手側からのリアクションは……無し。
自分の力を急に誇示してきたことが気に入らなかったようだと判断し、慌ててミルモンを俺の肩へと戻させる。
――……。
うむん……。
「……あの」
「――ああ! ごめんなさい。少し考え事をね」
「こちらに不作法があったのなら謝罪します」
「別にないわよ。そもそもが同胞の命を奪うという以上の不作法は今のところここでは起こってはいないし」
「ああ……はい……」
好感度の低さは仕方ないにしても、
「そろそろご尊顔を――」
「無理して難しい言葉を使わなくてもいいわよ。身の丈に合った喋り方のほうが貴男も楽でしょう」
「助かります。では――ご対面といきたいのですが」
「う~ん。どうしよかしら」
――……面倒くさそうな人物のようだな……。
「見ない魔導技術ね」
リンが初めて目にする技法だったらしく、白壁に興味を持ったご様子。
開かれた部分を食指でなぞっている中――、
「さっさと入りなよ」
ポームスからの催促に後ろ髪を引かれつつ、リンも入ってくる。
相当、気になったんだな。
リンから視線を正面へと戻せば、
「真っ白ですね。トール」
「真っ白だな。コクリコ」
一面――白。
白い空間。
ここも階段同様、蛍光灯のような明るさが支配している。
加えて全体が白一色だから明るさが余計に際立つ。
「ここの主殿は白が好きなようだな」
「ベルの髪にも興味を持つかもね」
と、シャルナから返されれば、興味を持たれるのは嫌だったのか、困った表情になっていた。
しかし――、
「無機質で殺風景だな」
白色の空間は断捨離でもしたのかとばかりに何もない。
そう、何もない。
つまりは――、
「誰もいない」
「いや、それはない」
ベルの声音が鋭いものに変わる。
可愛いを相手にしている時のポンコツモードとは違い、軍人然とした涼やかで凛としたもの。
「いるな」
と、ゲッコーさん。
二人の強者に共通しているのは、今までに耳にしたことがない緊迫した声。
二人から伝わってくるただならぬひりつき。
それ程ということか。
そう思っていた矢先に、
「身構えなくてもいいわよ」
反響する声は女性のもの。
同時にポームスがちびっ子ワイバーンから飛び降り、小さな体で片膝をつく。
小さな体が更に小さくなる。
「ポームス。この者達の実力の評定はいかほど?」
「大立者を倒すだけの力は持っています」
「そのようね。だからこその随伴なのでしょうから」
「その通りです。ですが、勇者一人の力はたかが知れております」
言うね~。
事実だから反論はしないよ。
それにポームスの姿勢からして、横から口を挟むよりも問いかけられるまで静かにして待っていた方がいい存在のようだからな。
「――身構えなくてもいいと言っているのに。もっと楽にしてくれていいのよ」
反響。
7.1サラウンドを思わせる臨場感が原因で、何処から声が発せられているのかが把握できない。
身構えなくてもいいという発言があろうとも、把握できない限り油断はできない。
強者メンバーは言わずもがな。俺やコクリコも経験を積み重ねたことで危機に対処するだけのスキルは培っている。
――……アル氏の前例があるからコクリコには些か不安もあるが……。
とにかく、たとえ相手がクロウス氏たちが束になっても太刀打ち出来ないような存在であろうとも、隙を与えなければ簡単には手出しはできないはず。
「無駄口もなく、こちらからの反応を待つという常識は持っているようだから好感を持ちましょう。ちょっと融通が利かないようだけど」
「有り難うございます」
ここで初めて声の主に対して言葉を返す。
好感を持ってもらえるのはこちらとしても本心から有り難いからな。
「とはいえ、多くの同胞の命を奪った怨敵という立場は今後も変わる事はないでしょうね」
「その事に関しては申し訳なく思っております。しかしながら、無駄口なくこちらとの対話に応じてくださっていれば、また違った出会い方が出来たとも思っております。もちろん、外殻であるルドルクナスを無断で突破したことで警戒されるのは理解もしておりましたが、それでも話し合いには応じてほしかったです」
ひたすら謝罪による誠意も良いだろうけど、弱腰と思われるのもいやなので塩梅を考えつつの返事。
「長々と語るのは言い訳にも聞こえるけど、間違いでもないので発言内容は受け入れましょう」
「感謝します」
姿なき声はとても柔らかく魅力的で、油断していると引き込まれそうになる。
「敵対関係ではあれ、ルドルクナスを突破してきたことはお見事」
称賛にここでも素直に感謝で返す。
感謝を述べた次には、どうやってこの地へと降り立つ事が出来たのか。という質問が始まる。
――ツッカーヴァッテによるもの。
――そのツッカーヴァッテなる存在がどうやって誕生したのか。
――どうしてエビルレイダーを生み出していることを知り、自分たちの手中に収めることが出来たのか。
と、矢継ぎ早。
どうやってエビルレイダーを手中に収めたのかと問われたところで、
「オイラだよ。オイラの見通す力さ♪」
俺の左肩から飛び立ち、羽をパタパタと動かし宙を舞い、姿なき存在に自分をアピールするように胸を張るミルモン。
――……。
得意げなミルモンに対して、相手側からのリアクションは……無し。
自分の力を急に誇示してきたことが気に入らなかったようだと判断し、慌ててミルモンを俺の肩へと戻させる。
――……。
うむん……。
「……あの」
「――ああ! ごめんなさい。少し考え事をね」
「こちらに不作法があったのなら謝罪します」
「別にないわよ。そもそもが同胞の命を奪うという以上の不作法は今のところここでは起こってはいないし」
「ああ……はい……」
好感度の低さは仕方ないにしても、
「そろそろご尊顔を――」
「無理して難しい言葉を使わなくてもいいわよ。身の丈に合った喋り方のほうが貴男も楽でしょう」
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「う~ん。どうしよかしら」
――……面倒くさそうな人物のようだな……。
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