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天空要塞
PHASE-1558【質量を持った影】
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「やる気があっていいのだけれど、こちらとしては美姫と小太刀使い二人の――三人を同時に相手取るのはつらいのよね」
「ぬぅ……」
小さく唸る俺……。
三人を強調してくるやん……。
三人と比べれば当然、実力は足元にも及ばないが、前衛で俺だけが脅威にカウントされないのはやはり悔しい。
「兄ちゃんをそこに含まなかったことを後悔させてあげるよ!」
俺の代わりに怒ってくれるミルモンに、
「失言だったようね。謝罪するわ」
「謝罪はいらないよ。兄ちゃんの前に敗北すればそれが答えになるからね!」
強気なミルモン。
対してベスティリスはなんか弱気だった。
堂々としたミルモンにまさか気圧されたのかな?
ともあれ、
「ミルモンの発言を有言実行にしないとな!」
「兄ちゃんなら問題ないよ!」
愛らしい小悪魔の鼓舞を受けて俺も仕掛ける。
「ああ、もう! これ以上の攻撃となれば一方的じゃない」
悔しそうなベスティリス。
これは勝利も近いのか?
脅威にカウントしてくれなかった役不足な俺が参加することに対し、なんだかんだ嫌なご様子。
更に後衛の三人も魔法の力負けに対してのリベンジとばかりに、魔法による掩護を放ってくれる。
「やっぱり八人を同時に相手にするなんて言わなきゃよかった」
同様の後悔を口にしながらも、
「だから、ちょっと数を割かせてもらうわね」
次には悪そうに口角を上げてみせる。
警戒をしたいけどもここは攻め時と皆が理解しているからか、動きを止めることなくベスティリスへと仕掛ける。
強者三人の後方で動く俺。
位置取りがそこだからこそ三人よりも視野が広く、先に捕捉することも出来た。
「ユーリさん右です!」
「んっ!?」
小太刀での刺突を中断し、急を知らせる俺の声を耳へと入れれば、直ぐさま右に顔を向ける。
ユーリさんに襲いかかるのは――影。
「助かったよ……。気配を感じ取れなかった……」
前回り受け身のような回避で難を逃れる。
「トール!」
次に急を知らせる声はシャルナのもの。
背後から聞こえる声に背中を押されるかのように、俺もユーリさんを真似て前方に転がって回避。
肩越しに見れば、これまた影。
この影には既視感がある。
人型の影。
人型の姿は、いま俺達が対峙している存在そっくり。
つまりは――、
「ドッペルゲンガーってやつか」
ヴァンパイアのゼノが使用してきた質量を持った分身。
――そうか。
そうだな。
そうだよな。
「影に潜んでのご挨拶でもあったしな。ゼノの主なんだから同様の力をあつかえてもおかしくはないか」
「あやつには妾が手ずから教えた」
「となれば、師と弟子の違いが見られるわけだ」
もう見てるけど。
ユーリさんと俺に一体ずつ。
――もちろんその程度じゃないんだろう。
「おっと、俺にもか」
ゲッコーさんの影の部分から出てくるドッペルゲンガー。
これで三体。
「これで一時は美姫にだけ集中できる状況を作れたと思いたいわね」
確定発言じゃないところが用心深くて好感が持てるよ。
「おう! はやっ!」
仕掛けてくるドッペルゲンガーの俊敏さよ。
ゲッコーさんとユーリさんは十分に対応できているけど、俺は押されまくり……。
影の能力がベスティリス本人の実力を十全で発揮しているわけじゃないだろうけど、それでも俺が単独で勝てる相手ではないのは、躱すだけで手一杯な貫手からも分かるというもの。
有り難いのは、誰を優先して掩護すればよいのかを理解している後衛の面々からの掩護魔法のお陰で、俺への攻撃回数が減るということ。
だが直撃には至らない。
ドッペルゲンガー自体が意思を持っているようで、徒手空拳での攻撃と回避にメリハリがある。
回避の中で障壁も展開してみせる。
影なのに魔法もありなんだな……。
「まずはその厄介な炎の剣に対応しないといけないわね」
俺が必死こいている時、唯一ベスティリスと一人で対峙するベル。
そんなベルと一対一の構図を作り上げたベスティリスは笑みを湛えていた。
「エアリアルスライス」
の、一言。
ベルの正面に格子状の切れ目が発生。
回避。
一歩下がったところから、
「はっ!」
纏っていた炎を直線上に放つ。
「斬撃だけでなく、それも当たるとダメなやつね」
返しつつ、再び唱えるのはエアリアルスライス。
空間が迫る炎を斬るが、完全にはかき消すことが出来ず、回避へとシフトチェンジするベスティリスだったが、
「少しは抵抗できたわね」
火力を調べるための魔法だったようだ。
「なら、もっと濃密にすれば、その厄介な炎ともいい勝負が出来そう」
継げば、右手に握る羽根がなくなった羽扇の柄を横に寝かせて前面へと突き出し構えれば――、
「エアリアルスライス」
三度継ぐ。
「おお」
と、爆発音や風切り音などが生じる中で俺が声を漏らす。
容赦のないドッペルゲンガーの攻撃に対応しつつ、二人のやり取りに目を向けることが可能なのは後衛のお陰。
多彩な攻撃魔法による掩護のお陰で、周囲の状況に目を向けながら戦うことが出来ている。
ベスティリスが発動したエアリアルスライスは今までのものとは違い、空間に格子が描かれるという事象ではなく、右手に握る柄の先端からの顕現。
顕現した格子はロングソードくらいの長さと刃幅を象っていた。
「ぬぅ……」
小さく唸る俺……。
三人を強調してくるやん……。
三人と比べれば当然、実力は足元にも及ばないが、前衛で俺だけが脅威にカウントされないのはやはり悔しい。
「兄ちゃんをそこに含まなかったことを後悔させてあげるよ!」
俺の代わりに怒ってくれるミルモンに、
「失言だったようね。謝罪するわ」
「謝罪はいらないよ。兄ちゃんの前に敗北すればそれが答えになるからね!」
強気なミルモン。
対してベスティリスはなんか弱気だった。
堂々としたミルモンにまさか気圧されたのかな?
ともあれ、
「ミルモンの発言を有言実行にしないとな!」
「兄ちゃんなら問題ないよ!」
愛らしい小悪魔の鼓舞を受けて俺も仕掛ける。
「ああ、もう! これ以上の攻撃となれば一方的じゃない」
悔しそうなベスティリス。
これは勝利も近いのか?
脅威にカウントしてくれなかった役不足な俺が参加することに対し、なんだかんだ嫌なご様子。
更に後衛の三人も魔法の力負けに対してのリベンジとばかりに、魔法による掩護を放ってくれる。
「やっぱり八人を同時に相手にするなんて言わなきゃよかった」
同様の後悔を口にしながらも、
「だから、ちょっと数を割かせてもらうわね」
次には悪そうに口角を上げてみせる。
警戒をしたいけどもここは攻め時と皆が理解しているからか、動きを止めることなくベスティリスへと仕掛ける。
強者三人の後方で動く俺。
位置取りがそこだからこそ三人よりも視野が広く、先に捕捉することも出来た。
「ユーリさん右です!」
「んっ!?」
小太刀での刺突を中断し、急を知らせる俺の声を耳へと入れれば、直ぐさま右に顔を向ける。
ユーリさんに襲いかかるのは――影。
「助かったよ……。気配を感じ取れなかった……」
前回り受け身のような回避で難を逃れる。
「トール!」
次に急を知らせる声はシャルナのもの。
背後から聞こえる声に背中を押されるかのように、俺もユーリさんを真似て前方に転がって回避。
肩越しに見れば、これまた影。
この影には既視感がある。
人型の影。
人型の姿は、いま俺達が対峙している存在そっくり。
つまりは――、
「ドッペルゲンガーってやつか」
ヴァンパイアのゼノが使用してきた質量を持った分身。
――そうか。
そうだな。
そうだよな。
「影に潜んでのご挨拶でもあったしな。ゼノの主なんだから同様の力をあつかえてもおかしくはないか」
「あやつには妾が手ずから教えた」
「となれば、師と弟子の違いが見られるわけだ」
もう見てるけど。
ユーリさんと俺に一体ずつ。
――もちろんその程度じゃないんだろう。
「おっと、俺にもか」
ゲッコーさんの影の部分から出てくるドッペルゲンガー。
これで三体。
「これで一時は美姫にだけ集中できる状況を作れたと思いたいわね」
確定発言じゃないところが用心深くて好感が持てるよ。
「おう! はやっ!」
仕掛けてくるドッペルゲンガーの俊敏さよ。
ゲッコーさんとユーリさんは十分に対応できているけど、俺は押されまくり……。
影の能力がベスティリス本人の実力を十全で発揮しているわけじゃないだろうけど、それでも俺が単独で勝てる相手ではないのは、躱すだけで手一杯な貫手からも分かるというもの。
有り難いのは、誰を優先して掩護すればよいのかを理解している後衛の面々からの掩護魔法のお陰で、俺への攻撃回数が減るということ。
だが直撃には至らない。
ドッペルゲンガー自体が意思を持っているようで、徒手空拳での攻撃と回避にメリハリがある。
回避の中で障壁も展開してみせる。
影なのに魔法もありなんだな……。
「まずはその厄介な炎の剣に対応しないといけないわね」
俺が必死こいている時、唯一ベスティリスと一人で対峙するベル。
そんなベルと一対一の構図を作り上げたベスティリスは笑みを湛えていた。
「エアリアルスライス」
の、一言。
ベルの正面に格子状の切れ目が発生。
回避。
一歩下がったところから、
「はっ!」
纏っていた炎を直線上に放つ。
「斬撃だけでなく、それも当たるとダメなやつね」
返しつつ、再び唱えるのはエアリアルスライス。
空間が迫る炎を斬るが、完全にはかき消すことが出来ず、回避へとシフトチェンジするベスティリスだったが、
「少しは抵抗できたわね」
火力を調べるための魔法だったようだ。
「なら、もっと濃密にすれば、その厄介な炎ともいい勝負が出来そう」
継げば、右手に握る羽根がなくなった羽扇の柄を横に寝かせて前面へと突き出し構えれば――、
「エアリアルスライス」
三度継ぐ。
「おお」
と、爆発音や風切り音などが生じる中で俺が声を漏らす。
容赦のないドッペルゲンガーの攻撃に対応しつつ、二人のやり取りに目を向けることが可能なのは後衛のお陰。
多彩な攻撃魔法による掩護のお陰で、周囲の状況に目を向けながら戦うことが出来ている。
ベスティリスが発動したエアリアルスライスは今までのものとは違い、空間に格子が描かれるという事象ではなく、右手に握る柄の先端からの顕現。
顕現した格子はロングソードくらいの長さと刃幅を象っていた。
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