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天空要塞
PHASE-1566【進退維谷】
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「兄ちゃぁぁぁぁぁぁぁぁん!!」
「おう! ミルモン!」
俺の上方から急降下で近づいてくるミルモン。
両腕を前へと突きだし、拳をつくり、羽を折り曲げての急降下は正義の味方を彷彿とさせる。
「なんでそんなに余裕なのさ!」
と、ミルモンには俺の表情がそう見えているようだ。
まったくもって余裕はないが、信じてはいる。
「ふんぎぃぃぃぃぃぃいいぃぃぃぃぃぃぃっ!!」
愛らしい小悪魔が落下する俺の足を掴んで必死に羽を羽ばたかせるも、落下速度は変わらない。
懸命な姿に感謝を述べつつ、周囲を見る。
「トール!」
と、ここでシャルナが合流。
「無事か!」
「なんとかね!」
レビテーションが発動可能となっている。
闘技場より外はラプスの効果範囲外のようだ。
そんなシャルナはコクリコを背負っての飛行。
背負われているコクリコはピクリともしない。
不安になるところで、
「大丈夫。気を失っているだけだから」
「それはよかった」
「よかった――じゃないよ!」
怒号を飛ばしながら俺に手を伸ばせば、ミルモンと一緒になって足を掴んでくれる。
――俺の落下速度が緩やかになり、止まる。
「助かる」
「抜本的な解決にはなっていないけどね……」
コクリコを背負い、俺の両足を掴んで現状を維持するので精一杯といったところ。
それでも少しでも! と、闘技場の方へと向かって進んでくれるシャルナとミルモン。
「これ……オイラ達の体力が先に尽きる気がする……」
「頑張るしかないよ!」
闘技場までとなればかなりの距離。
外殻付近まで吹き飛ばされていることに驚かされるが、ベスティリスが使用したのは大魔法かそれ以上の極位魔法だろう。
でも、皆、五体満足なんだよな。
ただ吹き飛ばすだけの魔法ってわけじゃないとは思うんだけど。
「兄ちゃん。この状況で腕組みしてるってのは中々にシュールだよ……。肝が据わりすぎだよ」
「皆のことを信じているからね。こうやって落下速度を緩和してくれているだけで助かる可能性が大いに跳ね上がる」
「だからって余裕ありすぎだよ!」
「本当だよ!」
呆れるシャルナとミルモン。
タロットカードのハングドマンを思わせる現在の俺。
下方へと目を向ければ……、
「あ! ユーリさん!?」
こちらの声が聞こえたのか、敬礼で返してくる余裕っぷり。
落下を少しでも遅らせるためにパラシュートを使用しているようだが、俺と違って底部の外殻へと近づいていく。
「トール……どうしよう……」
俺とユーリさんを交互に見るシャルナの顔が青ざめていく。
俺よりも下方にいるユーリさんを救いたくても救えないというジレンマでシャルナはパニック一歩手前。
「俺に任せとけ」
落ち着かせるため、冷静な声でシャルナへと伝えつつ――、
「ご苦労様でした」
継いで労いの言葉を述べ、プレイギアを取り出してユーリさんへと向ける。
ユーリさんが光となれば、プレイギアのディスプレイにその光が飛び込んで来る。
「これでユーリさんは問題なしだ」
「そ、そうなんだ……。良かったよ」
安堵するシャルナ。
次は――、
ベルとゲッコーさん。リンとオムニガル……。
「四人は」
「凄いよ。残ってる。外殻に飛ばされた後に闘技場にいるのを確認したよ」
「そうか」
あの訳の分からん風を受けて尚、闘技場に残ったのか。
流石としか言いようがないな。
「闘技場が遠すぎるよ……」
「諦めちゃ駄目だよミルモン」
コクリコを背負いつつ、俺をなんとか闘技場まで運ぼうとする二人。
連戦に次ぐ連戦からのこの状況ともなれば、体力も限界に近い。
そんな中で――、
「キュゥゥゥゥゥン!」
なんとも頼りになる愛らしい鳴き声が俺達の耳朶に届く。
心底、嬉しかったのだろう。シャルナとミルモンの耳が大きく上下に動く。
俺もそういった芸当が出来るならやってたね。
「「「待ってました!」」」
俺達はここにいるぞ! と、声を張り上げる。
声のタイミングに合わせるかのように、外殻から勢いよく飛び出してくるのは、巨大で愛らしい白きモフモフ。
羽を大きく羽ばたかせ、俺達の方へと大急ぎで駆けつけてくれれば、モフモフの背に俺達を乗せてくれるツッカーヴァッテ。
「グッボーイ!」
言いつつ優しく背を撫でてやれば、嬉しそうに鳴き声を上げてくれる。
相も変わらず口部もないのに何処から鳴き声を上げているのだろうという思いもあるが、今は安全が確保できた喜びだけを噛みしめよう。
全員が無事という事もあって、ツッカーヴァッテの背でシャルナとミルモンは腰砕けとばかりにヘロヘロになりながら、モフモフの体に全身を預けていた。
「闘技場まで頼むよ」
伝えれば、
「キュゥゥン」
と、まったりとした鳴き声を上げ、羽を大きく一度、羽ばたかせる。
――直ぐさま闘技場の上方へと到着。
「あら?」
「なんか全てが終わっているようだけど」
「なあ」
ツッカーヴァッテの背から闘技場を見下ろす。
ヘロヘロだったシャルナがなんとか匍匐にて移動し、俺の横までやって来てからの感想。
「シャルナ。これは――」
「勝ちでいいんじゃないかな?」
――勝った?
まあ、闘技場の光景からして間違いなく勝利している……。
――眼界に入ってくるのは、ベルのレイピアがベスティリスの首に触れるか触れないかの部分でピタリと止まっている光景だった。
それに合わせるかのように、ゲッコーさんの小太刀が背後から突きつけられ、前後から切っ先を向けられる存在は、進退これ谷まるといった状況。
だからだろう、ベスティリスは降参とばかりに諸手を挙げる――ことはまだ無理のようだから、左手だけを挙げて抵抗しないといった姿だった。
少し離れたところでは、リンとオムニガルがめしべ部分から上半身だけを出してぐったりとしている。
無事ではあるようだ。
二人によって顕現した巨大な花も、二人に連動するように力なくしおれていた。
闘技場での状況を眺めながら――着地。
「えっと、これは?」
「見て分からないのかしら? 妾が降伏しているという状態よ。それともそれを知って尚、勇者は敗者に辱めを与えるために、現在の状況を言わせているのかしら?」
「いえ、決してそんなつもりはありませんよ」
「冗談よ。妾がこんな状態であっても、一切の油断を見せないものね」
強者二人が切っ先を向けていても、なにが起こるかは分からないからな。
愛刀二振りを握って会話はさせてもらう。
「おう! ミルモン!」
俺の上方から急降下で近づいてくるミルモン。
両腕を前へと突きだし、拳をつくり、羽を折り曲げての急降下は正義の味方を彷彿とさせる。
「なんでそんなに余裕なのさ!」
と、ミルモンには俺の表情がそう見えているようだ。
まったくもって余裕はないが、信じてはいる。
「ふんぎぃぃぃぃぃぃいいぃぃぃぃぃぃぃっ!!」
愛らしい小悪魔が落下する俺の足を掴んで必死に羽を羽ばたかせるも、落下速度は変わらない。
懸命な姿に感謝を述べつつ、周囲を見る。
「トール!」
と、ここでシャルナが合流。
「無事か!」
「なんとかね!」
レビテーションが発動可能となっている。
闘技場より外はラプスの効果範囲外のようだ。
そんなシャルナはコクリコを背負っての飛行。
背負われているコクリコはピクリともしない。
不安になるところで、
「大丈夫。気を失っているだけだから」
「それはよかった」
「よかった――じゃないよ!」
怒号を飛ばしながら俺に手を伸ばせば、ミルモンと一緒になって足を掴んでくれる。
――俺の落下速度が緩やかになり、止まる。
「助かる」
「抜本的な解決にはなっていないけどね……」
コクリコを背負い、俺の両足を掴んで現状を維持するので精一杯といったところ。
それでも少しでも! と、闘技場の方へと向かって進んでくれるシャルナとミルモン。
「これ……オイラ達の体力が先に尽きる気がする……」
「頑張るしかないよ!」
闘技場までとなればかなりの距離。
外殻付近まで吹き飛ばされていることに驚かされるが、ベスティリスが使用したのは大魔法かそれ以上の極位魔法だろう。
でも、皆、五体満足なんだよな。
ただ吹き飛ばすだけの魔法ってわけじゃないとは思うんだけど。
「兄ちゃん。この状況で腕組みしてるってのは中々にシュールだよ……。肝が据わりすぎだよ」
「皆のことを信じているからね。こうやって落下速度を緩和してくれているだけで助かる可能性が大いに跳ね上がる」
「だからって余裕ありすぎだよ!」
「本当だよ!」
呆れるシャルナとミルモン。
タロットカードのハングドマンを思わせる現在の俺。
下方へと目を向ければ……、
「あ! ユーリさん!?」
こちらの声が聞こえたのか、敬礼で返してくる余裕っぷり。
落下を少しでも遅らせるためにパラシュートを使用しているようだが、俺と違って底部の外殻へと近づいていく。
「トール……どうしよう……」
俺とユーリさんを交互に見るシャルナの顔が青ざめていく。
俺よりも下方にいるユーリさんを救いたくても救えないというジレンマでシャルナはパニック一歩手前。
「俺に任せとけ」
落ち着かせるため、冷静な声でシャルナへと伝えつつ――、
「ご苦労様でした」
継いで労いの言葉を述べ、プレイギアを取り出してユーリさんへと向ける。
ユーリさんが光となれば、プレイギアのディスプレイにその光が飛び込んで来る。
「これでユーリさんは問題なしだ」
「そ、そうなんだ……。良かったよ」
安堵するシャルナ。
次は――、
ベルとゲッコーさん。リンとオムニガル……。
「四人は」
「凄いよ。残ってる。外殻に飛ばされた後に闘技場にいるのを確認したよ」
「そうか」
あの訳の分からん風を受けて尚、闘技場に残ったのか。
流石としか言いようがないな。
「闘技場が遠すぎるよ……」
「諦めちゃ駄目だよミルモン」
コクリコを背負いつつ、俺をなんとか闘技場まで運ぼうとする二人。
連戦に次ぐ連戦からのこの状況ともなれば、体力も限界に近い。
そんな中で――、
「キュゥゥゥゥゥン!」
なんとも頼りになる愛らしい鳴き声が俺達の耳朶に届く。
心底、嬉しかったのだろう。シャルナとミルモンの耳が大きく上下に動く。
俺もそういった芸当が出来るならやってたね。
「「「待ってました!」」」
俺達はここにいるぞ! と、声を張り上げる。
声のタイミングに合わせるかのように、外殻から勢いよく飛び出してくるのは、巨大で愛らしい白きモフモフ。
羽を大きく羽ばたかせ、俺達の方へと大急ぎで駆けつけてくれれば、モフモフの背に俺達を乗せてくれるツッカーヴァッテ。
「グッボーイ!」
言いつつ優しく背を撫でてやれば、嬉しそうに鳴き声を上げてくれる。
相も変わらず口部もないのに何処から鳴き声を上げているのだろうという思いもあるが、今は安全が確保できた喜びだけを噛みしめよう。
全員が無事という事もあって、ツッカーヴァッテの背でシャルナとミルモンは腰砕けとばかりにヘロヘロになりながら、モフモフの体に全身を預けていた。
「闘技場まで頼むよ」
伝えれば、
「キュゥゥン」
と、まったりとした鳴き声を上げ、羽を大きく一度、羽ばたかせる。
――直ぐさま闘技場の上方へと到着。
「あら?」
「なんか全てが終わっているようだけど」
「なあ」
ツッカーヴァッテの背から闘技場を見下ろす。
ヘロヘロだったシャルナがなんとか匍匐にて移動し、俺の横までやって来てからの感想。
「シャルナ。これは――」
「勝ちでいいんじゃないかな?」
――勝った?
まあ、闘技場の光景からして間違いなく勝利している……。
――眼界に入ってくるのは、ベルのレイピアがベスティリスの首に触れるか触れないかの部分でピタリと止まっている光景だった。
それに合わせるかのように、ゲッコーさんの小太刀が背後から突きつけられ、前後から切っ先を向けられる存在は、進退これ谷まるといった状況。
だからだろう、ベスティリスは降参とばかりに諸手を挙げる――ことはまだ無理のようだから、左手だけを挙げて抵抗しないといった姿だった。
少し離れたところでは、リンとオムニガルがめしべ部分から上半身だけを出してぐったりとしている。
無事ではあるようだ。
二人によって顕現した巨大な花も、二人に連動するように力なくしおれていた。
闘技場での状況を眺めながら――着地。
「えっと、これは?」
「見て分からないのかしら? 妾が降伏しているという状態よ。それともそれを知って尚、勇者は敗者に辱めを与えるために、現在の状況を言わせているのかしら?」
「いえ、決してそんなつもりはありませんよ」
「冗談よ。妾がこんな状態であっても、一切の油断を見せないものね」
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愛刀二振りを握って会話はさせてもらう。
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