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天空要塞
PHASE-1582【立候補】
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――殺伐とする最中での強者お三方の登場は、こちらにとってとても有り難いものだった。
この三人によって向こう側の精神が引き締まったからね。
「勝者に対し、敗者側の醜態を見せる事になってしまいました。申し訳ございません」
「いえ、忠誠心ゆえの言動ということで」
「お心遣い感謝いたします。しかし、忠誠心ゆえ――だからこそ、我らが主に恥を掻かせるような言動はよろしくないわけです」
――…………ひぇっ……。
静かな声音の中に潜む鋭利な刃物の如き怒気。
クロウス氏……こわっ……。
戦闘時は脅威からくる怖さってのがあったけども、これはまた違った怖さだな。
叱責する時の怖さは、何となく先生に近いものがある。
笑顔の中に隠す怒りの感情ってやつだ。
これにはストームトルーパーの面々も押し黙ってしまう。
プライドの高そうな生徒会長も、大立者や幹部が相手となれば素直になるようで、ラズヴァートを睨んでいた視線を直ぐさま下方へと落としていた。
睨み合っていたラズヴァートも同じ動作。
「では改めて、勇者殿御一行。見事に我らが主に勝利しましたね」
見事とか言っていいのでしょうか……。クロウス氏……。
「どうでしたか、我らが主のお力は?」
継いでくる。
問われた質問の後、こちらサイドのメンバー全員をぐるりと見渡せば、首肯が返ってくる。
俺と同じ気持ちってところだな。
「二度と戦いたくないですね。金輪際、絶対に! これがこっちサイドの感想ですよ」
強い思いを強い語調に乗せて打ち明ける。
「そうですか。ちなみに我らが主も二度と戦いたくないと先ほどおっしゃっておりました」
「こちらにとってその発言は、非常に喜ばしいものです」
俺の言葉に合わせて、こっちのメンバーも首肯で続く。
ベルやゲッコーさんでも戦いたくないって思うほどの戦闘だったってことだ。
俺自身、無様に宙を舞って、落下というのは二度と経験したくないしな。
今回はシャルナにミルモン、ツッカーヴァッテがいてくれたから心にゆとりもあったが、単身だったら発狂しながら外殻にダイブしていたことだろう。
「ちなみにですが、私も二度と戦いたくないですね」
と、クロウス氏。
これにはアル氏とグラスパール氏も続く。
特にグラスパール氏の声の熱量は凄まじかった。心の底から戦いたくないという気持ちが伝わってきた。
グラスパール氏の人生において、ベルの蹴りによる衝撃は初の経験だったのかもね。
「グラスパールは美姫――ではなく剣神殿と戦いたくないみたいですが、私は勇者殿と戦いたくないですね」
「俺だって嫌ですよ」
「戦闘不能へと追いやられた一撃は、思い出すだけでも鳥肌が立ちます」
鳥人タンガタ・マヌが鳥肌が立つと言えば、説得力がありますね。
わざとらしく自分の腕を擦る仕草を見せれば、周囲のストームトルーバー達は怪訝な表情で俺を見てくる。
――それほどの実力があるとは思えない。本当か? 眉唾なのでは? と、ばかりに、こちらの実力を外見から値踏みしようとしているようで、頭のてっぺんから足の爪先まで見てくる。
「なので、御一行の中で特に勇者殿とは戦いたくないですよ」
「はい」
この言い様。
自らが戦いにおいての上下関係を見せる事で、これ以上ストームトルーパーの面々が俺達に無礼な事をしないように。と、暗に伝えてくれているんだろうな。
気配りの出来るイケメン鳥人のクロウス氏。
――戦闘不能へと追いやった一撃か――。
「習得はしても、翼幻王殿との戦いでは打ち込むこと叶わず。ただただ実力差を見せつけられるだけでした」
「あれを我らが主に打ち込まれるのは困りものですよ。如何に主が強き存在であっても無事ではすまないでしょう」
声の調子からして嘘じゃないみたいだな。
てことは、俺の技でも当たれば大幹部にダメージを与えることは可能ってことだな。
水龍タレスから賜った胸鰭による新たなる戦術も生み出せそうだけども、
「自己の地力をもっともっと上げていかないとな」
「声に出す誓いは、心で唱える誓いよりも叶うものと考えております」
「そういうものですかね」
「ええ。ですので、声に出した誓いを叶えるためにも、勇者殿は更なる精進を」
「もちろんです」
返せばニッコリ笑顔のクロウス氏。
「声に出すなら誓いだけでなく、技名もだな」
目の前の強者に見舞った烈火とボドキンの合わせ技。
まだ新技としての名前を考えていなかった。
連戦に次ぐ連戦で考える暇がなかっただけだけど。
――どう命名するか。
烈火や爆刀、幻焔などに寄せた名前にするか、ボドキンのような横文字に寄せていくか。
「ふむん」
「技名を考えているご様子」
「はい」
「あの――よろしければ私の意見を聞いていただけますか」
「なんでしょう?」
「初めての技を見舞われた者として、名付け親に立候補したいのですが」
見舞われて、しかもそれが敗北に繋がった一撃となれば、普通なら忌避するんじゃないのかな……。
なのに名付け親になりたいと言うクロウス氏の瞳は輝いている……。
真面目が服を着ているような御仁だと思ったけど、以外とひょうきんなタイプなのかもしれない。
「どうでしょうか勇者殿!」
近い近い……。
俺の中でのクロウス氏のイメージが崩れちゃうよ。
真面目でクール系かと思えば、ひょうきんで熱量が高い系だよ……。
「い、いいんじゃないでしょうか」
「勇者殿の新たなる技に名をつけることが出来る。これは後世まで残る名誉!」
凄く喜んでいる。
で、そんな事を言われると俺も喜んでしまう。
先生は俺のことを人誑しの才があると言うが、目の前のタンガタ・マヌも十分に人誑しの才があると思う。
この三人によって向こう側の精神が引き締まったからね。
「勝者に対し、敗者側の醜態を見せる事になってしまいました。申し訳ございません」
「いえ、忠誠心ゆえの言動ということで」
「お心遣い感謝いたします。しかし、忠誠心ゆえ――だからこそ、我らが主に恥を掻かせるような言動はよろしくないわけです」
――…………ひぇっ……。
静かな声音の中に潜む鋭利な刃物の如き怒気。
クロウス氏……こわっ……。
戦闘時は脅威からくる怖さってのがあったけども、これはまた違った怖さだな。
叱責する時の怖さは、何となく先生に近いものがある。
笑顔の中に隠す怒りの感情ってやつだ。
これにはストームトルーパーの面々も押し黙ってしまう。
プライドの高そうな生徒会長も、大立者や幹部が相手となれば素直になるようで、ラズヴァートを睨んでいた視線を直ぐさま下方へと落としていた。
睨み合っていたラズヴァートも同じ動作。
「では改めて、勇者殿御一行。見事に我らが主に勝利しましたね」
見事とか言っていいのでしょうか……。クロウス氏……。
「どうでしたか、我らが主のお力は?」
継いでくる。
問われた質問の後、こちらサイドのメンバー全員をぐるりと見渡せば、首肯が返ってくる。
俺と同じ気持ちってところだな。
「二度と戦いたくないですね。金輪際、絶対に! これがこっちサイドの感想ですよ」
強い思いを強い語調に乗せて打ち明ける。
「そうですか。ちなみに我らが主も二度と戦いたくないと先ほどおっしゃっておりました」
「こちらにとってその発言は、非常に喜ばしいものです」
俺の言葉に合わせて、こっちのメンバーも首肯で続く。
ベルやゲッコーさんでも戦いたくないって思うほどの戦闘だったってことだ。
俺自身、無様に宙を舞って、落下というのは二度と経験したくないしな。
今回はシャルナにミルモン、ツッカーヴァッテがいてくれたから心にゆとりもあったが、単身だったら発狂しながら外殻にダイブしていたことだろう。
「ちなみにですが、私も二度と戦いたくないですね」
と、クロウス氏。
これにはアル氏とグラスパール氏も続く。
特にグラスパール氏の声の熱量は凄まじかった。心の底から戦いたくないという気持ちが伝わってきた。
グラスパール氏の人生において、ベルの蹴りによる衝撃は初の経験だったのかもね。
「グラスパールは美姫――ではなく剣神殿と戦いたくないみたいですが、私は勇者殿と戦いたくないですね」
「俺だって嫌ですよ」
「戦闘不能へと追いやられた一撃は、思い出すだけでも鳥肌が立ちます」
鳥人タンガタ・マヌが鳥肌が立つと言えば、説得力がありますね。
わざとらしく自分の腕を擦る仕草を見せれば、周囲のストームトルーバー達は怪訝な表情で俺を見てくる。
――それほどの実力があるとは思えない。本当か? 眉唾なのでは? と、ばかりに、こちらの実力を外見から値踏みしようとしているようで、頭のてっぺんから足の爪先まで見てくる。
「なので、御一行の中で特に勇者殿とは戦いたくないですよ」
「はい」
この言い様。
自らが戦いにおいての上下関係を見せる事で、これ以上ストームトルーパーの面々が俺達に無礼な事をしないように。と、暗に伝えてくれているんだろうな。
気配りの出来るイケメン鳥人のクロウス氏。
――戦闘不能へと追いやった一撃か――。
「習得はしても、翼幻王殿との戦いでは打ち込むこと叶わず。ただただ実力差を見せつけられるだけでした」
「あれを我らが主に打ち込まれるのは困りものですよ。如何に主が強き存在であっても無事ではすまないでしょう」
声の調子からして嘘じゃないみたいだな。
てことは、俺の技でも当たれば大幹部にダメージを与えることは可能ってことだな。
水龍タレスから賜った胸鰭による新たなる戦術も生み出せそうだけども、
「自己の地力をもっともっと上げていかないとな」
「声に出す誓いは、心で唱える誓いよりも叶うものと考えております」
「そういうものですかね」
「ええ。ですので、声に出した誓いを叶えるためにも、勇者殿は更なる精進を」
「もちろんです」
返せばニッコリ笑顔のクロウス氏。
「声に出すなら誓いだけでなく、技名もだな」
目の前の強者に見舞った烈火とボドキンの合わせ技。
まだ新技としての名前を考えていなかった。
連戦に次ぐ連戦で考える暇がなかっただけだけど。
――どう命名するか。
烈火や爆刀、幻焔などに寄せた名前にするか、ボドキンのような横文字に寄せていくか。
「ふむん」
「技名を考えているご様子」
「はい」
「あの――よろしければ私の意見を聞いていただけますか」
「なんでしょう?」
「初めての技を見舞われた者として、名付け親に立候補したいのですが」
見舞われて、しかもそれが敗北に繋がった一撃となれば、普通なら忌避するんじゃないのかな……。
なのに名付け親になりたいと言うクロウス氏の瞳は輝いている……。
真面目が服を着ているような御仁だと思ったけど、以外とひょうきんなタイプなのかもしれない。
「どうでしょうか勇者殿!」
近い近い……。
俺の中でのクロウス氏のイメージが崩れちゃうよ。
真面目でクール系かと思えば、ひょうきんで熱量が高い系だよ……。
「い、いいんじゃないでしょうか」
「勇者殿の新たなる技に名をつけることが出来る。これは後世まで残る名誉!」
凄く喜んでいる。
で、そんな事を言われると俺も喜んでしまう。
先生は俺のことを人誑しの才があると言うが、目の前のタンガタ・マヌも十分に人誑しの才があると思う。
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