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驕った創造主
PHASE-1600【確定もしてないのに】
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「こうしちゃいられない。暴走気味のベルを野放しにしていたら、大変な事に発展しそうだ。俺達も王城に行こう!」
俺の号令に執務室にいる面々は強く頷いてくれる。
――。
ダイフクに騎乗し王城へと向かって走る。
後続も用意された馬でついてきてくれる。
皆して馬で移動……。
――……馬で移動なんだが……、ベルに追いつけない……。
修復と片付けで忙しい中、ザジーさんが俺達の馬を用意してくれた。
でも、ベルが騎乗時に頼っている黒馬は厩舎に残っており、ベルはここを訪れていないとザジーさん。
十中八九、勢いに任せて自らの足で王城まで走っているな……。
その足に対して追いつけないってのがね……。
市中を移動しているから速度を落としているとはいえ、背中すら捉えることが出来ないんだからな。
最強さんの健脚には驚かされる。
――。
「どうも。おつとめご苦労様です」
「お、おお!? お、お帰りなさいませ!」
呆気にとられ、開かれた城門の内側に目を向けていた門番二人に挨拶をすれば、はたとなってこちらの言葉に返事をくれる。
間違いなくベルが高速で通り過ぎたのが原因だな。驚きの余韻が残っていたようだ。
馬で駆けつつ門を通過し、入城前で下馬。
「ベルは通りましたか?」
「はい! 謁見の間へと疾走にて向かいました」
立哨へと問えばそう返ってくる。
急ぎ謁見の間へと赴けば――、
「速えんだよ!」
「お前たちが遅いだけだ」
眉尻を吊り上げて、かなりご立腹のご様子。
「よくぞ無事に帰ってきてくれたなトールよ。嬉しいぞ……」
ベルの剣幕に気圧されつつも、王様が俺達を労う。
無事に帰ってきた事を本気で喜んでくれているのもあるんだろうけども、謁見の間の現在の状況を打破してくれるという思いからの――よく来てくれた! って意味合いの方が強そうだ。
俺達の登場に、王様だけでなくバリタン伯などいつもの面々も安堵した表情になっている。
――と、なんとも珍しいヤツが貴族の中に並んでいるな。
場違いすぎるぞ。
まあ、それは後でいいとして。
まずは目の前の対処だ。
「ハダン伯! よくぞこの城に留まっていただいた」
「わ、私ですか!?」
「そうだ!」
怒気を纏わせて謁見の間に並ぶハダン伯へと目がけてベルが強い足取りで接近。
身長が百九十を超えているハダン伯だが、ベルの勢いにお偉方で列を成している場から後退り。
「なぜ下がられるのか!」
「いや、美姫殿の勢いが凄まじいので……」
「美姫などと呼ばないでいただきたい」
「申し訳ない……」
ここでまた一歩下がるハダン伯。
「また下がる。勢いだけが理由ではないのでは?」
「なんの事でしょうか?」
「我々に対して後ろめたい感情を持っているから、私から離れたいと思うのでは?」
「いや、美姫――ベル殿。一体なにをおっしゃっているのか、わかりかねます」
「ぬけぬけと!」
――あ!?
「おいベル! やめないか! 相手は貴族。伯爵だぞ。マグナートだぞ!」
「だからなんだ。疑わしい者であり否定をしてくるのならば、武をちらつかせるのも時には必要だろう。そもそもこの者達の爵位がなんだというのだ! 私が忠誠を誓うのはプロニアス帝国と皇帝陛下であり、この地の王侯貴族の威光など通用はせん!」
おう、普段とは全くもって違った思考だな……。
しかも堂々と王侯貴族に対しても言い切ったよ……。
いつもはちゃんと礼節を以て対応もできる人間の言い様じゃないぞ……。
大体、確定もしていないのに、疑わしいだけで力をちらつかせようとするのは、ベルの思考からかけ離れている……。
完全に冷静さを欠いているな。
「公爵様! これは一体どういう事でしょうか!? 私になにか落ち度があるのならば、是非ともベル殿に謝罪をさせていただきたい!」
ここで伯爵という権力を盾にしないで謝罪って言ってくるんだから、以前のミルモンの見立て通り、ハダン伯は真っ当な貴族だと考えていい。
後退りするハダン伯の前に他の貴族の面々が守るように立ち、代表してバリタン伯がベルをなだめようと励むも、
「バリタン伯、そこをどいていただきたい。その者には造反の疑いがあります」
「疑い? そのような噂を我々は聞いたこともないですが……」
禿頭が王様の方を向けば、
「バリタンの言うとおりだ。ハダンはクセのある自信家ではあるし、些か金銭に執着するところもあるが、悪道に足を踏み入れるのには無縁の男だ。ただ、無駄な自信が周囲に迷惑をかけるだけだ」
――……フォローしてんですよね……。王様?
ともあれ、善悪で判断したら善よりの中庸ってところだろう。
正道を歩んでいることには違いない。
「ベルは落ち着こう。この場で一人だけぞ。みっともなく空回りしてるの」
「くっ!」
納得がいかないと俺を睨んでくる。
普段なら俺もハダン伯のように後退りするが、鋭い眼光による睨みに負けてやるものか! と、気合いを入れ、炯眼を正面から受けて立つ。
――訪れるしじま。
向かい合う俺達に、皆さん固唾を呑んだ状況。
特に、自分の進退がどうなるかがまだ分からないハダン伯のゴクリという音は、耳朶にはっきりと届いた。
俺の号令に執務室にいる面々は強く頷いてくれる。
――。
ダイフクに騎乗し王城へと向かって走る。
後続も用意された馬でついてきてくれる。
皆して馬で移動……。
――……馬で移動なんだが……、ベルに追いつけない……。
修復と片付けで忙しい中、ザジーさんが俺達の馬を用意してくれた。
でも、ベルが騎乗時に頼っている黒馬は厩舎に残っており、ベルはここを訪れていないとザジーさん。
十中八九、勢いに任せて自らの足で王城まで走っているな……。
その足に対して追いつけないってのがね……。
市中を移動しているから速度を落としているとはいえ、背中すら捉えることが出来ないんだからな。
最強さんの健脚には驚かされる。
――。
「どうも。おつとめご苦労様です」
「お、おお!? お、お帰りなさいませ!」
呆気にとられ、開かれた城門の内側に目を向けていた門番二人に挨拶をすれば、はたとなってこちらの言葉に返事をくれる。
間違いなくベルが高速で通り過ぎたのが原因だな。驚きの余韻が残っていたようだ。
馬で駆けつつ門を通過し、入城前で下馬。
「ベルは通りましたか?」
「はい! 謁見の間へと疾走にて向かいました」
立哨へと問えばそう返ってくる。
急ぎ謁見の間へと赴けば――、
「速えんだよ!」
「お前たちが遅いだけだ」
眉尻を吊り上げて、かなりご立腹のご様子。
「よくぞ無事に帰ってきてくれたなトールよ。嬉しいぞ……」
ベルの剣幕に気圧されつつも、王様が俺達を労う。
無事に帰ってきた事を本気で喜んでくれているのもあるんだろうけども、謁見の間の現在の状況を打破してくれるという思いからの――よく来てくれた! って意味合いの方が強そうだ。
俺達の登場に、王様だけでなくバリタン伯などいつもの面々も安堵した表情になっている。
――と、なんとも珍しいヤツが貴族の中に並んでいるな。
場違いすぎるぞ。
まあ、それは後でいいとして。
まずは目の前の対処だ。
「ハダン伯! よくぞこの城に留まっていただいた」
「わ、私ですか!?」
「そうだ!」
怒気を纏わせて謁見の間に並ぶハダン伯へと目がけてベルが強い足取りで接近。
身長が百九十を超えているハダン伯だが、ベルの勢いにお偉方で列を成している場から後退り。
「なぜ下がられるのか!」
「いや、美姫殿の勢いが凄まじいので……」
「美姫などと呼ばないでいただきたい」
「申し訳ない……」
ここでまた一歩下がるハダン伯。
「また下がる。勢いだけが理由ではないのでは?」
「なんの事でしょうか?」
「我々に対して後ろめたい感情を持っているから、私から離れたいと思うのでは?」
「いや、美姫――ベル殿。一体なにをおっしゃっているのか、わかりかねます」
「ぬけぬけと!」
――あ!?
「おいベル! やめないか! 相手は貴族。伯爵だぞ。マグナートだぞ!」
「だからなんだ。疑わしい者であり否定をしてくるのならば、武をちらつかせるのも時には必要だろう。そもそもこの者達の爵位がなんだというのだ! 私が忠誠を誓うのはプロニアス帝国と皇帝陛下であり、この地の王侯貴族の威光など通用はせん!」
おう、普段とは全くもって違った思考だな……。
しかも堂々と王侯貴族に対しても言い切ったよ……。
いつもはちゃんと礼節を以て対応もできる人間の言い様じゃないぞ……。
大体、確定もしていないのに、疑わしいだけで力をちらつかせようとするのは、ベルの思考からかけ離れている……。
完全に冷静さを欠いているな。
「公爵様! これは一体どういう事でしょうか!? 私になにか落ち度があるのならば、是非ともベル殿に謝罪をさせていただきたい!」
ここで伯爵という権力を盾にしないで謝罪って言ってくるんだから、以前のミルモンの見立て通り、ハダン伯は真っ当な貴族だと考えていい。
後退りするハダン伯の前に他の貴族の面々が守るように立ち、代表してバリタン伯がベルをなだめようと励むも、
「バリタン伯、そこをどいていただきたい。その者には造反の疑いがあります」
「疑い? そのような噂を我々は聞いたこともないですが……」
禿頭が王様の方を向けば、
「バリタンの言うとおりだ。ハダンはクセのある自信家ではあるし、些か金銭に執着するところもあるが、悪道に足を踏み入れるのには無縁の男だ。ただ、無駄な自信が周囲に迷惑をかけるだけだ」
――……フォローしてんですよね……。王様?
ともあれ、善悪で判断したら善よりの中庸ってところだろう。
正道を歩んでいることには違いない。
「ベルは落ち着こう。この場で一人だけぞ。みっともなく空回りしてるの」
「くっ!」
納得がいかないと俺を睨んでくる。
普段なら俺もハダン伯のように後退りするが、鋭い眼光による睨みに負けてやるものか! と、気合いを入れ、炯眼を正面から受けて立つ。
――訪れるしじま。
向かい合う俺達に、皆さん固唾を呑んだ状況。
特に、自分の進退がどうなるかがまだ分からないハダン伯のゴクリという音は、耳朶にはっきりと届いた。
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