異世界冒険記『ストレージ・ドミニオン』

FOX4

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驕った創造主

PHASE-1617【似た効果】

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「どんな皮膚してんだよ」

「粗製も粗製。誰だって出来る芸当だ」

「ガリオンはそう言うけど、今の芸当で向こうさんは静まり返っているぞ」
 力の推量が判断できなくても、ナイフを握り折るって芸当を見せてやれば、力の差ってのを嫌が応にも理解したようだ。
 
 だったら俺の隠忍自重からの解放の拳打フライアウェイを見ておののいてほしかったもんだな。

「道を開け! 木っ端ども!」
 先頭に立って野太い声で威圧をしてくれるのはジージー。
 通常よりも倍はあるバケツタイプのグレートヘルムからの一喝に腰が引ける面々。

「他愛ない連中よ! その程度でよくもまあ我々の前に立ち塞がろうとしたものだ!」
 ズンズンと強い足取りでジージーが進む度に、相手側は壁の方へと向かって後退り。
 最終的に皆して背中を壁にくっつけていた。

「なんだい。歯ごたえのない連中だね。オイラとしては兄ちゃんを中心に大立ち回りして、ここにいる連中に床の冷たさを教えて上げるつもりだったのに」

「然り、然り」
 ミルモンとジージーは大暴れしたかったご様子。
 こっちにはワックさんもいるからね。無駄な戦いが避けられるならそれに越したことはない。
 この辺では大手のギルドみたいだし、ギルド未所属でも繋がりのある冒険者なんかもいるだろうからな。
 わざわざ多くの敵を作るのは面倒。
 最強格をワンパンでのしてしまったから、こっちに対する印象は既に最悪だろうけど。

「ここの責任者がいるなら、謝罪の一つでもしたいんだけど」
 受付のお姉さんに尋ねるも、

「い、今は留守にしてるよ……」

「ああ、そう。だから初顔の面子に対して最強格(笑)が絡んできても、それに注意をする人間がいなかったと」
 問えばヘドバンを思わせる頷き。

「受付なんだから、今回の事はちゃんと上に伝えないといけないですよ。じゃないと、ここのギルドの心証が悪くなりますからね」

「わ、わかったよ……」
 素直になってくれてなにより。

「じゃあ、俺達はこれで」

「ちょっと待て」

「どうした? ガリオン」

「そこの給仕、こっちに来い」

「じ、自分ですか!?」

「目線をお前に合わせてからの発言だ。一々と自分ですか!? なんて下らん返事をしてないでさっさとこっちに来い。ここは馬鹿しかいないのか」
 お~こわ。
 ドスの利いた声と睨み。
 破邪の獅子王牙とかへんてこな名前の組織ではあるが、下はともかく、上澄みは幹部だけでなく兵も強かったからな。
 クセのあるそいつ等を統率する立場の凄味は、そこいらのチンピラなら萎縮してしまう。
 ましてやただの給仕となれば、震えも止まらないってもんだ。

「おい!」

「は、はひぃ!」

「震えるのはいいが、トレーに載るモノは落とすなよ」

「は、はい!」
 トレーに載っているのは、ブリオレが注文した酒の入ったタンカードが二つと、大瓶が一つ。
 後者は茶褐色の陶器で出来たもの。
 ガリオンは後者の方を手に取り、キュポンと栓を外せば、おもむろにトレーへと垂らす。
 紫の液体。
 赤ワインを思わせる色。
 それを指ですくってニオイを嗅ぐガリオン。
 俺も気になったので真似てみる。

「――ニオイは別にないな」

「そうだな」

「で、何すんの?」

「せっかくだから回収しようと思ってな」

「えぇ……なんだよガリオン。四十路近いからって、もうあっちの方は元気がないのか? いくら何でも早くないか」

「殺すぞオルト。別に酒に混ぜて使用する側に興味があるわけじゃねえ」
 真っ当な使い方のほうね。
 眠気を覚ましたり恐怖を緩和させるってほうか。

「って、またドープかよ」

「戦いでそういったモノを使用するのは悪い事じゃねえよ。生き残る為だ。自分が有利になるなら使って当然だ」
 流石はベルセルクのキノコを使いまくっていた組織のトップ陣営。
 ガリオンに至っては、ベルセルクのキノコから抽出した効果が更に高いエッセンスを使用していたからな。
 副作用も心配だけども……。
 ――……ん? あれ!?

「ちょっと待って。これってさ、なんかベルセルクのキノコに効果が似てないか?」
 戦闘時に恐怖を取り除くってのは、ベルセルクのキノコの効果にもあった。
 あっちはそれに加えてリミッターを外して膂力を上げるってのがあったけども。

「良く気づいたな。もしかしたらコイツはそのベルセルクのキノコから作られた可能性があるかもしれん」
 一般的に使用しやすいように効果を弱めたバージョンってことか。
 ベルセルクのキノコといえば、マジョリカの父親が統治していたところで手に入っていた。
 それが原因で隣の領主といざこざが起こり、マジョリカはその後、大変な人生を歩む事にもなった。
 で、このキノコに関係しているのはまだいる。

「もしベルセルクのキノコが素材に使用されているなら、カイメラの関与も――」

「無いとはいえんな」

「販売元はクルーグ商会。その中にカイメラが潜んでいる可能性があるかもしれない」
 ゴロ太を狙っていた連中はこの地に潜んでいる。
 となれば、既にゴロ太はカイメラに囚われていると考えるべきなのか……。

「ゲスな連中とのやり取りは不快でしかなかったが、俺達が欲していた情報に、意外と簡単に辿り着けたと考えていいかもな」

「だな。ガリオンの言うようにギルドハウスを訪れて正解だった」
 ここの連中――主にブリオレにはムカついたけど、それでも有益な情報を得る事が出来たのは僥倖。
 ここでの情報でゴロ太へと近づければいいな。
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