異世界冒険記『ストレージ・ドミニオン』

FOX4

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驕った創造主

PHASE-1664【ナイスですね】

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 どんだけ金を貢いでも手の届かない傾国の美女。
 それが今、自分を呼んでいるとなれば、

「俺が行く!」
 半身から全身を入室させれば、ドアを無理矢理に閉める。
 閉める時のもう一人の寂しそうな顔が印象的だった。
 心配するな。後で直ぐにお宅も呼んであげるから。

「困っている事があるそうで」

「え、ええ。装飾品が引っかかっておりまして」

「それはいけない」
 なんて良い声を出すんだろう。
 ムードを作る為ってのもあるんだろうけど、チラチラと俺を見てくるのは邪魔だということからなんだろうな。
 こっちに目を向けられると困るので、ベルにアイコンタクト。

「どうぞこちらに」
 言ってもらえば、

「喜んで!」
 ベルが座るソファにダイブするかように座り込み、

「何処から外しましょうか?」

「え、ええと……」

「遠慮なさらず! 全て外しますか!」
 装飾品以外に視線を向けてくる事と、ズレたものを直すのではなく外すという発言。
 作戦内容とかみ合っていないことに怪訝な表情となるベル。
 鼻息荒い私兵がにじり寄ってくる姿は明らかに性的興奮があると判断しているご様子。
 兜を外しつつベルトにも手を掛ける男。
 有り難いのは兜を外してくれた事だね。
 
 にじり寄ってくる相手の行動に対し、迫る相手ではなく俺を睨んでくるベルが怖かったので――、

「ちょいさ」
 目の前の美女に意識を注力し、隙だらけとなった後頭部に麻酔銃を撃ち込んでやれば、ベルへと辿り着く前にソファに突っ伏す。
 直ぐさま聞こえてくる高いびき。

「素晴らしい威力」
 精鋭であるストームトルーパーでも簡単にダウンさせられたんだから、私兵程度なら余裕だな。

「かなり興奮していたようだな。装飾品のズレを直してもらいたいと頼んだのだが――明らかに目的が違ったな」

「仕方ないだろう。装飾品のズレを直すって内容で呼び寄せるのが無理だったんだから。そっちでなんとかしろって言われたし」

「だからその場しのぎの口八丁で誘い入れたわけだ」

「その通り。後はただ座って手招きをするだけで相手は魅了される」

「そんなものなのか」

「そんなものなんだよ。美人が微笑んで手招きをすれば、男ってのは飛んでやって来るもんだ。実際そうだっただろ」

「なんとも単純だな」

「美人を前にすれば思考なんて単純になるのが男ってもんだ。ベルの魅力は最高だぜ」

「あ、ああ」
 ――さらっと恥ずかしい事を言ってしまった。
 普通に魅力は最高とか言ってしまった。
 雑嚢を見れば、頭だけを出しているミルモンがそれでいいとばかりに鷹揚に頷いていた。
 で、言われたベルはちょっと顔が赤くなっておりました。
 おべっかなく素直な感想を述べたからか、喜んでくれているようだった。

「よし!」
 今の表情で気合いが入ったので、ちゃちゃっといきたいところだが――、

「十五分くらい待っとく?」

「なぜ?」
 ドア向こうのもう一人は行為が始まっていると思っているだろうからな。
 終わるまでの時間も考えないといけない。
 正直、十五分ってどうなのかね?
 事が始まって終わるまでに十五分は早いのだろうか? 
 クソッ! 童貞の俺ではその辺の時間が分からない。
 エロエロな映像なんかだと、十五分以上は組んず解れつだけども。
 玄人プロの時間と、童貞ニュービーの時間の差というのは?
 
 ――……後者の俺には分からない……。
 
 分かる事があるとすれば、ドア向こうのもう一人の立哨は高確率でドアに耳を当てているって事くらいだろう。
 全神経を耳へと集中させて、美女の嬌声を聞き逃すまいと必死になっているはず。
 
 ――はたして正にだった。
 
 右手に持った麻酔銃を背中の方に移動させてから左手でドアをゆっくりと開ければ、ドアに体を沿わせて聞く事に注力。
 俺と目が合えば気恥ずかしそうに笑顔を向けてくる。
 賄賂には強いくても、誘ってくる美人を前にすれば性欲の赴くままになるみたいだ。

「もう少しお待ちください」
 作りに作ったアルカイックスマイルで言ってやれば、

「お、おお。はい」
 立ち上がって返してくる。
 コイツにもいい夢を見せてあげよう。

 ――十五分ほど待ってから――、

「お待たせいたしました。お待たせしすぎたかもしれません」

「おおっ!」
 待機していた残りの一人は満面の笑みで足早に室内へと入ってきてくれた。

 ――。

「よし」

「容易かったな」

「これもベルの魅力のお陰ですよ」

「うるさい」
 返してくる声には照れたものもあった。
 なんか可愛かった。
 
 二人目の入室時、一人目が気持ちよさそうにソファで寝ているのを目にして、なんて良い思いをしたんだ! と、怒りの表情だったが、直ぐさま自分も幸せな時間を過ごせるんだ! と、だらしない笑みを浮かべたところで、俺が背後から麻酔銃で眠らせる。
 
 リアリティを出す為、二人目が入ってくる前に一人目の鎧を外して上半身を裸にし、ベルには羽織り物で体を隠させ、気恥ずかしそうな仕草もしてもらった。
 これにより作戦成功。

 ――ふむん。

「何をしている……」

「リアリティだよ」
 二人目も上半身を裸にしてから、一人目が眠るソファへと寝せてあげる。

「私兵なだけあって躍動する筋肉を持っているようだから、もっとこう強い抱擁をさせることで薔薇味バラみが出ると思うんだよね」
 悪い笑みを湛える演出家ミルモン

「だな」
 同じ笑みを浮かべる俺氏。
 こういう時にも便利なピリア。
 インクリーズとストレンクスンを併用しての俺の膂力なら問題なく男二人を自由に動かす事が出来るというもの。
 
 ――よっし!

「ナイスですね」

「何がだ……。馬鹿なのかトール……」

「トール? 違う。ワイは異世界の西村とおるや!」

「は?」

「まあいいや。ベル、写真で一言」
 眠る二人に手を向けて感想を聞こうとすれば、

「やはり馬鹿のようだな……」
 呆れられてしまった。
 でもって、頬が紅潮しているあたり、薔薇色の世界をちょっと妄想してしまったのかな。
 
 ツッコむと蹴りが来るのが分かっているので、これ以上の悪乗りは避けておく。
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