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驕った創造主
PHASE-1670【リミッター外れてるよね】
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――ベルとミルモンには廊下で待機してもらい、単身、会場内へと勢いよく踏み入れば、
「白煙が立ち込んで数メートル先も見えやしない……」
俺たちが会場から出て行く前は、細い煙を燻らせていただけだったのに、現在はG対策で力を遺憾なく発揮してくれる、隅々まで効くのと比肩するほどに勢いある白煙が会場内を支配していた。
「ニオイが最初の頃と比べて、甘いだけでなく刺々しいな」
ツンと鼻をついてくるけど、むせるって事はない。
これも勾玉の恩恵だろう。
もし勾玉がない状況なら――、
「アアァァァァアッ!」
「ここにいた連中みたいになっていたのかな」
白煙を掻き分けながら驀地してくる一人のおっさん。
贅肉たっぷりな腹を揺らしながらも動きは速い。
「舞姫の踊りを間近で見たいという時よりも勢いがあるじゃないか。ええっと――シミットっておっさんだったかな?」
成金連中の中心人物だったおっさんが白目を剥いて俺に躍りかかってくる。
体重を乗せたタックル。
猪突猛進なそれを横移動で躱せば、シミットのおっさんは勢いよくテーブルをなぎ倒していく。
そんなおっさんを横目に、白煙の中を捕捉できる範囲で見渡す。
「ドア前の私兵二人もか……」
休憩室のドアを守っていた二人は異変に気づいてここへと来たようだけど、この白煙が原因で自我を失っている。
シミットのおっさんがなぎ倒したテーブルの派手な音に反応すれば、私兵二名が俺をロックオン。
この二人だけじゃない。
――成金連中に貴族、素封家。他の私兵に楽団員。
この場にいた面々が自我を忘れ、叫び声を上げている。
「ガアアッ!」
「ごめんなさいよ」
踵を返して再び襲ってくるシミットのおっさんをいなして床に倒しつつ、次々に襲いかかってくる面々を縫うように躱す。
同じ状況下にいる者同士が、お互いを攻撃するということはないようだ。
自分たちと違う存在だけを攻撃するとか、まるで生者を敵視するアンデッドみたいじゃないか。
「ええっと、老公にルーフェンスさんは――」
遠くや暗闇を見渡せるビジョンを発動するも、白煙に阻害されれて視界が鮮明になる事はない。
「老公! ルーフェンスさん!」
大声で呼んでみても――反応はなし。
「アアァァァァァア゛」
代わりに上がるのは咆哮。
「あんたもかよ……」
ベルとデュオを望んでいたアプールのおっさんまで白目を剥いて襲いかかってくるという状態……。
手にした椅子を全力で振り上げ、ギリギリと歯ぎしりをする口元からはダラダラとヨダレを垂れ流す。
「気品ある姿からかけ離れた姿になられてしまって……」
凶暴化からの全力による椅子攻撃を躱せば、高価な椅子が床に激しくたたき付けられる。
椅子は装飾と補強目的の金属部分を除いて、派手に木っ端を舞わせる。
「なんて馬鹿力」
戦いとは無縁の細身の体には不釣り合いな膂力だ。
他のおっさん連中も一緒だ。
腹に溜まった贅肉を派手に揺らしながら突撃してくる勢いは、箍が外れた明らかに超えてはいけない力の出し方。
「このリミッターの外れ具合――」
以前にも目にしたことがある。
食した者を凶暴にし、攻撃力は跳ね上げるキノコと一緒。
「あの煙にはベルセルクルのキノコの成分でも入ってんのかな?」
会場の複数箇所に置かれた白磁の香炉。
上がる白煙から設置場所を把握している最中、
「おっと!」
暴走したアプールのおっさんが壊れた椅子をブンブンと振り回す。
躱す度に、床や壁に椅子の金属部分が当たり、衝撃がアープルのおっさんを襲う。
衝撃を受け止めるほど鍛えていない体には大きな負担があるようで、
「腕が折れてますよ……」
本来、曲がってはいけない方に曲がってしまっている……。
このまま暴れ続ければ、この場の連中は自傷で命を落としかねないね。
命を落とすよりは――、
「ボドキン」
弱めの威力にて打ち込む。
当て身なんて芸当は出来ないので、ボドキンにてアプールのおっさんをダウンさせつつ、パシュンパシュンと非殺傷時には頼りになる麻酔銃も使用。
技と銃を併用し、荒ぶる連中を戦闘不能へと追い込んでいく。
と、同時に、ラピッドを使用して白煙の上がる場所へと移動し――、
「この!」
香炉を踏みつけて破壊。
これを数回繰り返してから、眼前の面々が暴れ回った事で生まれた木片や壊れた陶器を手にとって――投擲。
会場の窓ガラスを次々と割っていく。
白煙を外へと流せば視界も良くなるというもの。
「う~ん」
ベルが舞を披露していた壇上へと移動して見渡すも、
「老公とルーフェンスさんはいないようだな」
危機を察知して会場から出たと思われる。
この場にいるのは逃げ遅れた面々ってところか。
老公たちの無事を確認するのが最重要だが、
「まずは――」
「眠らせようか」
「おうさ!」
白煙が晴れたのを確認してから登場の最強さん。
――ここからはあっという間。
ベルの参戦で瞬く間に会場に残った面々には床で寝てもらう。
「無茶をした者が多いようだ」
「そうなんだよ」
特にアプールのおっさんよ。
雑嚢からハイポーションを取り出して折れた腕の部分にかけてやる。
「トールがガラスを割ってくれたから良かったものの、ここまで充満したのは会場内を閉め切っていた事が原因だな」
閉め切った会場内で煙が充満したからこそ、逃げ遅れた連中の凶暴化の進行が早まったのかもしれない。
半刻の間に状況が大きく変化しすぎているね……。
「白煙が立ち込んで数メートル先も見えやしない……」
俺たちが会場から出て行く前は、細い煙を燻らせていただけだったのに、現在はG対策で力を遺憾なく発揮してくれる、隅々まで効くのと比肩するほどに勢いある白煙が会場内を支配していた。
「ニオイが最初の頃と比べて、甘いだけでなく刺々しいな」
ツンと鼻をついてくるけど、むせるって事はない。
これも勾玉の恩恵だろう。
もし勾玉がない状況なら――、
「アアァァァァアッ!」
「ここにいた連中みたいになっていたのかな」
白煙を掻き分けながら驀地してくる一人のおっさん。
贅肉たっぷりな腹を揺らしながらも動きは速い。
「舞姫の踊りを間近で見たいという時よりも勢いがあるじゃないか。ええっと――シミットっておっさんだったかな?」
成金連中の中心人物だったおっさんが白目を剥いて俺に躍りかかってくる。
体重を乗せたタックル。
猪突猛進なそれを横移動で躱せば、シミットのおっさんは勢いよくテーブルをなぎ倒していく。
そんなおっさんを横目に、白煙の中を捕捉できる範囲で見渡す。
「ドア前の私兵二人もか……」
休憩室のドアを守っていた二人は異変に気づいてここへと来たようだけど、この白煙が原因で自我を失っている。
シミットのおっさんがなぎ倒したテーブルの派手な音に反応すれば、私兵二名が俺をロックオン。
この二人だけじゃない。
――成金連中に貴族、素封家。他の私兵に楽団員。
この場にいた面々が自我を忘れ、叫び声を上げている。
「ガアアッ!」
「ごめんなさいよ」
踵を返して再び襲ってくるシミットのおっさんをいなして床に倒しつつ、次々に襲いかかってくる面々を縫うように躱す。
同じ状況下にいる者同士が、お互いを攻撃するということはないようだ。
自分たちと違う存在だけを攻撃するとか、まるで生者を敵視するアンデッドみたいじゃないか。
「ええっと、老公にルーフェンスさんは――」
遠くや暗闇を見渡せるビジョンを発動するも、白煙に阻害されれて視界が鮮明になる事はない。
「老公! ルーフェンスさん!」
大声で呼んでみても――反応はなし。
「アアァァァァァア゛」
代わりに上がるのは咆哮。
「あんたもかよ……」
ベルとデュオを望んでいたアプールのおっさんまで白目を剥いて襲いかかってくるという状態……。
手にした椅子を全力で振り上げ、ギリギリと歯ぎしりをする口元からはダラダラとヨダレを垂れ流す。
「気品ある姿からかけ離れた姿になられてしまって……」
凶暴化からの全力による椅子攻撃を躱せば、高価な椅子が床に激しくたたき付けられる。
椅子は装飾と補強目的の金属部分を除いて、派手に木っ端を舞わせる。
「なんて馬鹿力」
戦いとは無縁の細身の体には不釣り合いな膂力だ。
他のおっさん連中も一緒だ。
腹に溜まった贅肉を派手に揺らしながら突撃してくる勢いは、箍が外れた明らかに超えてはいけない力の出し方。
「このリミッターの外れ具合――」
以前にも目にしたことがある。
食した者を凶暴にし、攻撃力は跳ね上げるキノコと一緒。
「あの煙にはベルセルクルのキノコの成分でも入ってんのかな?」
会場の複数箇所に置かれた白磁の香炉。
上がる白煙から設置場所を把握している最中、
「おっと!」
暴走したアプールのおっさんが壊れた椅子をブンブンと振り回す。
躱す度に、床や壁に椅子の金属部分が当たり、衝撃がアープルのおっさんを襲う。
衝撃を受け止めるほど鍛えていない体には大きな負担があるようで、
「腕が折れてますよ……」
本来、曲がってはいけない方に曲がってしまっている……。
このまま暴れ続ければ、この場の連中は自傷で命を落としかねないね。
命を落とすよりは――、
「ボドキン」
弱めの威力にて打ち込む。
当て身なんて芸当は出来ないので、ボドキンにてアプールのおっさんをダウンさせつつ、パシュンパシュンと非殺傷時には頼りになる麻酔銃も使用。
技と銃を併用し、荒ぶる連中を戦闘不能へと追い込んでいく。
と、同時に、ラピッドを使用して白煙の上がる場所へと移動し――、
「この!」
香炉を踏みつけて破壊。
これを数回繰り返してから、眼前の面々が暴れ回った事で生まれた木片や壊れた陶器を手にとって――投擲。
会場の窓ガラスを次々と割っていく。
白煙を外へと流せば視界も良くなるというもの。
「う~ん」
ベルが舞を披露していた壇上へと移動して見渡すも、
「老公とルーフェンスさんはいないようだな」
危機を察知して会場から出たと思われる。
この場にいるのは逃げ遅れた面々ってところか。
老公たちの無事を確認するのが最重要だが、
「まずは――」
「眠らせようか」
「おうさ!」
白煙が晴れたのを確認してから登場の最強さん。
――ここからはあっという間。
ベルの参戦で瞬く間に会場に残った面々には床で寝てもらう。
「無茶をした者が多いようだ」
「そうなんだよ」
特にアプールのおっさんよ。
雑嚢からハイポーションを取り出して折れた腕の部分にかけてやる。
「トールがガラスを割ってくれたから良かったものの、ここまで充満したのは会場内を閉め切っていた事が原因だな」
閉め切った会場内で煙が充満したからこそ、逃げ遅れた連中の凶暴化の進行が早まったのかもしれない。
半刻の間に状況が大きく変化しすぎているね……。
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