異世界冒険記『ストレージ・ドミニオン』

FOX4

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驕った創造主

PHASE-1707【掲げる正義】

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「暗君コールブランドと違い魔王様は偉大だ。我々が必要とする材料や被検体を用意してくださったからな」
 マンティコアを魔大陸に移す間は交流があったということか。
 でも交流は断たれた。
 こいつらにとって欲するものが手軽に調達できるのもわずかの間だったわけだ。

 原因は当然ながら――俺たちだろう。

「貴様等が我々の繋がりを分断してくれたのは非常に腹立たしいことだ!」
 と、はたして正にな怒気が飛んでくる。
 王都へと進行してきた魔王軍を撃退し、要塞トールハンマーの存在によって魔王軍の北伐も悉く阻止されている。
 欲するものが手に入りにくくなり、様々なところに暗躍して活動しなければならなくなったと吐露する。

 カリオネルに関しては本当に役に立ったそうだ。
 頭の程度が低く、プライドが高く、欲深い。
 そういった部分を上手く刺激し、ミルド領ではかなり自由に活動できたという。
 
 それでも魔王サイドからの調達がバルバダイ達にとっては非常に魅力的だったようで、

「貴様が倒したドラウグだって最高の被検体だったのに!」
 と、歯を軋らせる。

「ドラウグの語り方からして、武人であるのは伝わったけどな。生前は名のある御仁だったようだ」

「波濤のカーンと呼ばれるオーガだったそうだぞ」

「ほう」
 あ、波濤ってところに琴線が触れたようで、鋼鬼のガリオンが反応している。

「それは中々の御仁だな」
 ここにジージーも反応。

「有名?」
 問えば、

「アルスン殿たちと行動していた御仁ですね」

「なるほど……」
 つまりは前魔王であるリズベッド派ってことか。
 前魔王派閥であるガルム氏や翁たちは集落で無事に過ごしていたけども、ぶつかり合っている最中には当然だが犠牲になった方々もいる。
 そして、そんな方々は処されたり、巡り巡ってカイメラのような連中の被検体という結末を迎えてしまった犠牲者も出たわけだ。

「宜しくないね。何よりもこっちの大陸サイドの面子が魔王軍から力を提供されて、しかも悪事に使用するってのは」

「悪事とはなんだ! 我々は我々の正義を行使しているだけだ!」

「なにが正義だよ。悪そのものだろうが!」

「馬鹿めが!」

「ああっ! んだコラッ!」

「馬鹿と言われて声を荒げる様が正に馬鹿そのものだな」

「テメエに言われたかねえよ!」
 感情の起伏が激しいくせに!

「貴様等が掲げる正義だけが正義だと思うな! 我々には我々の掲げる正義があるのだ! 相容れなければ悪と決めつけるのは馬鹿の発想よ!」
 むかつく! 
 むかつくけどもその点に関しては言い返せないところもある。

 だとしても、

「生物の尊厳を奪ってまで生み出すというのはどう考えても禁忌。人の命も多く奪っているからな」

「確かに人は使っている。だが我々とて倫理は持っている」
 どこがだよ……。
 冷ややな目で睨めば、

「我々が使用している人間は罪人だ。それも罪のない人々を殺めた賊だ。裁かれれば死罪は確定している者達。こういった者達が世の役に立つとなればこういった扱いくらいよ」

「んなわけあるか! 法のもとで裁くべきであって、罪人だからといってお前たちが自由に扱っていいなんてあるかよ!」

「綺麗事どうも。だが綺麗事だけで解決できればどれほど楽だろうな。お前たちの歩みを見る限り楽ではないようだが」
 小馬鹿な嗤いだな。

「俺たちはお前たちとは違うからな。ボコボコにしてから法で裁かせてもらう!」

「出来ない事は言わないことだ!」
 まだまだ余力があるって感じだな。
 ここまで押し込んでいるのに余裕がある。
 声は荒いものだけども、焦りというのを見せていないからな。
 次なるジャンパーってのがあるのかね?
 
 しかしながら、

「一足飛びだぞ」

「なめるなよ!」
 俺とバルバダイの距離は指呼の距離。
 一気に間合いを詰めれば、

「プロテクション!」

「へ~」
 正面から攻める俺の動きを光の壁が遮ってくる。
 最低限の魔法は使用できるようだな。
 大方、

「マジックカーヴ」

「ご名答」
 白衣の裾をまくし上げて前腕を見せれば、魔法発動が可能な入れ墨が彫られていた。

「だとしてもただの時間稼ぎだぞ」

「まだまだ兵力はあるのだ!」

「……ブルルル……」

「またかよ」
 のっそりとジャンパーより出てくるのは、

「アローンガット」

「ん!? なぜ名を知っている」

「それは秘密」
 プレイギアで調べたことは内緒。
 この驚き方からして、自分たちだけしか知らない存在だったようだな。
 その証拠とばかりに、次々とジャンパーから現れる次の敵に対してソドンバアムと私兵たちが驚きの表情。
 タイニーガーゴイルである空飛ぶゴブリンゾンビの存在は知っていても、アローンガットのことは知らされていない。
 製造所で襲われた私兵の面々同様、ここの面子にも秘匿にされていたようだ。

「対処済みの相手を出されてもな」

「だが時間を稼ぐには十分だ!」

「いやいや、もう余裕だから。観念するんだな」
 ブレイズを纏った残火で断ち切る。
 内部にあるコアを破壊さえすれば、それだけで終わらせられる。
 うん……。

「倒した後、グロさが増すのだけは勘弁だけどな」
 肉玉がほどけて地面に広がる光景は何度目にしても慣れない。
 対処が可能とはいえ、連戦はゴメンだな……。

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