異世界冒険記『ストレージ・ドミニオン』

FOX4

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驕った創造主

PHASE-1743【後は追い込むだけ……】

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 ――直線から作られる角に宿る力こそが、ティンダロスというこの具現世界における能力。
 角から角への瞬間移動ってのにはたまげたよ。
 縮地やアクセルとは違って限定された出現場所だけども、高速移動とは違った瞬間移動は脅威だからな。

 ――でも今は、

「予想しやすくなったのは大きい。有利に立ち回れるようになる」

「ほお。本当にいい直感を持っている」

「だろ。だからそっちが俺の冴えを削ぐ前に、こっちがお前を倒すってのも可能だというのを理解してくれたかな?」

「それはどうだろうな。難しいと思うぞ」
 言えば消える。

「ミルモン」

「お任せさ!」
 可愛い頭を力強く縦に振ってくれる。
 俺とミルモンの四つの目があれば、何処から現れても即対応できる。
 特に見通す小悪魔であるミルモンは、俺よりも先に気づくことが多いから頼りになるってもんだ。

「下だよ!」

「おうよ!」
 指示に従って下方に向かってスクワッドリーパーを打ち込んで迎え撃てば、

「よく反応したな!」
 褒めてくるけど、声は悔しそうだった。
 攻撃に失敗すれば追撃を止めて潔く後退。姿を消す。

「もぐら叩きだな」
 出現する場所が予測できればそこまで難しくはない。
 ハリボテの角は多いけども、大概が俺の背後を狙ってくる。
 後はその場所を予測しつつ、出来るだけ角の少ない場所で陣取る。

「固有結界――具現世界ティンダロスも無事攻略だね」

「いや、まだだぞミルモン。勝って兜の緒を締めよってやつだ。兜は被ってないけど」

「その通りだね」
 と、

「おりゃ!」
 ギンッと、爪を弾いてやる。
 ――大分、慣れてきたぞ。
 俺が決着を付けると言ったが、危険と判断すれば動いてくれるであろうベル達は不動の姿勢。
 動かないってことは、俺とミルモンに任せても問題ない相手と判断したようだ。
 最強の中佐殿は、大方、俺には良い相手だと考えているんだろう。  
 実際、強い相手と戦うのは成長に繋がるからね。
 技量だけでなく、周囲を見てからの状況判断能力の向上にもなる。
 ハリボテ建築の直線が作り出す角からの出現を看破するというのも、今までの経験があればこそ。
 落ち着いて立ち回れているのは偏に経験のお陰。
 
 戦闘経験が浅いままに対峙していたなら、ルルハリルの動きに翻弄されて手痛い目に遭っていただろう。
 
 さて、ルルハリルの次の手を予想するなら――、

「後ろだな!」
 反転してピーカブースタイルにて防御態勢を取ると同時に聞こえてくるのは――、

「ファイアフライ」

「でしょうね」
 読んでいたよ。
 ランドイーターでの揺さぶりからの不意打ちに、角からの出現が見抜かれれば、俺に見せた手持ちの攻撃方法で現状ティンダロスで使用していないのはファイアフライだからな。
 
 目つぶし攻撃には、先んじて光を遮断していれば問題なし。
 予想して対策していれば、後手に回ることなく先手を取れるってもんだよ――、

「ねっ!」
 左手に持つマラ・ケニタルにて左袈裟斬り。

「お、おのれ……」

「悔しいのはこっちも一緒」
 柔軟な体を捩らせて致命傷を避けたな。
 鎖骨から脇腹までを一気に断つつもりだったのに。

「そっちも直感が冴え渡ってるじゃないか」

「フンッ」
 強めの鼻息で返事をしてくれば姿が消える。

「相手はジリ貧だろうね」

「でも」

「勝って兜ってやつだよね」

「その通り」
 勝ち筋は見てきたけど、まだまだ対処が出来はじめた程度。
 確実に戦闘不能へと追い込むためには、相手の動きを完全に封じないことにはどうにもならない。
 封じるとなれば俺の足りない頭だと一つしか思いつかない。
 その思いつく一つの手段が上手くハマれば、ルルハリルを追い詰めることが出来るかもしれない。
 その為にもまずは有利な状況を作らなければ。
 肉体よりも精神面にダメージを与えて追い込んでいかないとな。

「ランドイーター」

「それしか出来ないのかよ!」
 もう意味なし。
 跳躍から角のある場所へわざと飛ぶ。
 俺の背後に角が存在せず、前面の角だけに注力すればいいだけの位置。
 
 目を配れば、

「仕掛けてこなかったね」

「正面からだと仕掛ける余裕がなかったんだろうな」
 やはり角さえ警戒しておけば問題ない。
 身を潜めたルルハリルは今ごろ焦燥していることだろう。
 もっと追い込んでいってミスに繋げる。無理矢理に追い込むことをせず、じっくりと時間をかけていこう。
 
 ――繰り返される攻撃。
 対処していく中で段々とルルハリルの口数も少なくなっていく。
 最初の頃に比べれば容易に見切れてきた。
 立ち回る位置も角が少ない場所を選び、角の位置も頭の中に記憶。

「なるほど。勇者という称号を持っているだけはある」

「お、喋ったな。降参するか? 降参するタイプじゃないだろうけど」

「無論! 俺が膝をつくのは聖祚の御身を前にしてのみ!」

「捨て鉢かよ」
 背後からの攻撃は大声と共に。
 狙ってくださいと言っているようなものだ。
 構える右からの攻撃を躱してからの抜き胴を打ち込むと決めた刹那。

「はぇ!? 右腕は!?」
 腰を捻って右拳を後ろへと引く姿勢を見せるルルハリルが次のモーションへと移行すれば、肝心の右腕が前腕部分から欠損していた。
 
 かと思えば……、

「!? い゛ってぇぇぇぇぇぇぇ……」

「あ、兄ちゃん!?」
 突如として襲ってくる顔へと走る痛み。
 地面に倒れ込んでしまう……。
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