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視線は南へ
PHASE-1774【相も変わらずのビッグマウス】
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「下らない握手などいいから、さっさと要塞へと向かおうか」
「あ、はい」
下らない団結を見せられたからか、視線同様に声も冷ややかだった……。
――――。
「アラムロス窟を訪れて以来だけど――」
「素晴らしいな」
「そうか。ベルは要塞を見ていないもんな」
「大したものだな。この短期間で」
一年前は魔王軍がコルレオン達コボルトに強制労働をさせて拠点を造ってたんだよな。
コボルト達の努力を無駄にすることなく、洞窟に加えて山自体を利用し、そこから壁を築いての要塞がトールハンマーとなったんだけども――、
「日に日に進化している様は王都の外周木壁みたいだよ」
感心していれば、
「どちら様でしょうか?」
と、以前は統一性の無い方言の面々からの誰何だったが、
「俺たちのことを忘れるには短い期間だと思うんだけどな」
「ふふん! よく来ましたね!」
なんでそんな強者感まる出しにしてるんだよ。
らしいと言えばらしいガイナ立ち。
壁上から俺たちを見下ろしてくるのは、琥珀色の瞳とラセットブラウンのミディアムヘアからなる美少女。
黄色と黒の二色からなるローブに、新たな装備である羽衣を身に纏った姿から――、
「とうっ!」
「馬鹿か!」
勢いよく壁上から飛び降りてくるというあり得ない行動。
だったが、
「おおっ!」
感心の声を上げてしまう。
「やるじゃないかコクリコ」
「そうでしょうとも! この短期間でこういった芸当が出来るのは私が天才であるからこそですね」
ビックマウスなのも変わりない。
変わるほど離れていたわけじゃないしな。
壁上から飛び降りると当時に、アドンとサムソンを自分の靴底に密着させての減速からの着地。
飛行能力とまではいかないけども、便利な芸当を身につけたようだな。
「大したものだな」
「ベルも元気そうでなによりです。この場は詳しくないでしょう。勝手知ったる我が要塞を案内してあげましょう」
「なにが我が要塞だよ」
話は聞いているからな。十万の大軍勢を壊走させた要因にもなっているからって、ちょっと調子に乗りすぎじゃないか。
「この地での私の活躍を耳にすれば、皆がこの要塞の主と判断しても仕方ないこと」
「してないしてない――してないよね……」
コクリコが飛び降りてきた壁上の立哨たちへと問えば苦笑いが返ってくる。
否定ではなく苦笑いを見せてくるってことは、少しは認められているということなのでしょうかね?
ふ~ん。
「やるじゃないか」
「この私の偉大さが分かったようで何より。なんならトールと一戦を交えてあげてもいいのですよ」
直ぐ調子に乗る。
「挑んでやってもいいけど場所が場所だからな。ここは最前線。そして十日後くらいには南へと打って出ることになると思うからな。無駄な体力は使わないようにしないと」
「私は直ぐにでも打って出てもいいと思いますけどね。十万が壊走。三百万の兵を有するからといっても十万が容易く壊走したという報告を受ければ衝撃は全体に伝わるでしょう。その混乱に乗じて攻める事で大混乱へとするというのは効果的だと思いますがね」
――…………。
――……。
「「……ええっ!? なんてまともな!」」
ベルと声が揃ってしまう。
「なんですか、随分と息が合っていますね! 二人で行動している時間があったからといっても、それは流石に声が合いすぎじゃないですか!」
なんでこの程度の事でムキになるんですかね……。
「仕方ないだろう。コクリコらしからぬ考えを言うからさ」
「失礼な! 私だって着眼小局だけでなく、着眼大局の力もこの地で養っていますよ」
「ちゃくがん――なんて?」
普段、使わないような言葉を使いやがって。
絶対に誰かの受け売りだ。
だってコクリコだもの。コイツは琴線が触れたら即、自分の知識としてひけらかそうとする所があるからな。
まあ、俺も似たようなところがあるけども。
「大方、高順氏の受け売りだろうな」
「ぬぅ……」
図星だったようだな。
高順氏としては、このまま要塞に籠もらずに一気呵成に攻めたいという気持ちがあるというのが、コクリコとのやり取りから窺い知れた。
それでも準備が整うまでは逸る気持ちを抑制し、動かないという堅実さがある。
口ではアレだけど、先生の戦略と戦術は信頼してくれているからね。
むしろイケイケになっている混成の兵達を押しとどめていると推測すれば、高順氏の指揮能力の高さには脱帽である。
ユニークスキル【陥陣営】が発動することで騎兵達にバフがかかる。
その強さが自分たちの地力と勘違いしてしまえば、傲慢な好戦思想になりそうだけど、それを纏めているのは高順氏の将器が本物であるからこそ。
「さて、こんなところで話し込んでもあれなので、さっさとこの要塞の指揮官に会いに行きましょうか」
「お前が主なんだろう?」
「私は主です。主の下に指揮官がいるのです」
「そうですか」
ぶれないヤツである。
――厩舎にダイフク達を預けて人力昇降機で壁上へと上がれば、以前にも目にしたゴーレム達による補強と補修。
これに加えて王都で活動していた白装束のスケルトン達も作業に参加。
近場にアンデッドがいる光景。混成軍となっているから驚きを持つ兵隊もいるだろうが、大きな混乱がないのも高順氏の能力の高さだな。
「あ、はい」
下らない団結を見せられたからか、視線同様に声も冷ややかだった……。
――――。
「アラムロス窟を訪れて以来だけど――」
「素晴らしいな」
「そうか。ベルは要塞を見ていないもんな」
「大したものだな。この短期間で」
一年前は魔王軍がコルレオン達コボルトに強制労働をさせて拠点を造ってたんだよな。
コボルト達の努力を無駄にすることなく、洞窟に加えて山自体を利用し、そこから壁を築いての要塞がトールハンマーとなったんだけども――、
「日に日に進化している様は王都の外周木壁みたいだよ」
感心していれば、
「どちら様でしょうか?」
と、以前は統一性の無い方言の面々からの誰何だったが、
「俺たちのことを忘れるには短い期間だと思うんだけどな」
「ふふん! よく来ましたね!」
なんでそんな強者感まる出しにしてるんだよ。
らしいと言えばらしいガイナ立ち。
壁上から俺たちを見下ろしてくるのは、琥珀色の瞳とラセットブラウンのミディアムヘアからなる美少女。
黄色と黒の二色からなるローブに、新たな装備である羽衣を身に纏った姿から――、
「とうっ!」
「馬鹿か!」
勢いよく壁上から飛び降りてくるというあり得ない行動。
だったが、
「おおっ!」
感心の声を上げてしまう。
「やるじゃないかコクリコ」
「そうでしょうとも! この短期間でこういった芸当が出来るのは私が天才であるからこそですね」
ビックマウスなのも変わりない。
変わるほど離れていたわけじゃないしな。
壁上から飛び降りると当時に、アドンとサムソンを自分の靴底に密着させての減速からの着地。
飛行能力とまではいかないけども、便利な芸当を身につけたようだな。
「大したものだな」
「ベルも元気そうでなによりです。この場は詳しくないでしょう。勝手知ったる我が要塞を案内してあげましょう」
「なにが我が要塞だよ」
話は聞いているからな。十万の大軍勢を壊走させた要因にもなっているからって、ちょっと調子に乗りすぎじゃないか。
「この地での私の活躍を耳にすれば、皆がこの要塞の主と判断しても仕方ないこと」
「してないしてない――してないよね……」
コクリコが飛び降りてきた壁上の立哨たちへと問えば苦笑いが返ってくる。
否定ではなく苦笑いを見せてくるってことは、少しは認められているということなのでしょうかね?
ふ~ん。
「やるじゃないか」
「この私の偉大さが分かったようで何より。なんならトールと一戦を交えてあげてもいいのですよ」
直ぐ調子に乗る。
「挑んでやってもいいけど場所が場所だからな。ここは最前線。そして十日後くらいには南へと打って出ることになると思うからな。無駄な体力は使わないようにしないと」
「私は直ぐにでも打って出てもいいと思いますけどね。十万が壊走。三百万の兵を有するからといっても十万が容易く壊走したという報告を受ければ衝撃は全体に伝わるでしょう。その混乱に乗じて攻める事で大混乱へとするというのは効果的だと思いますがね」
――…………。
――……。
「「……ええっ!? なんてまともな!」」
ベルと声が揃ってしまう。
「なんですか、随分と息が合っていますね! 二人で行動している時間があったからといっても、それは流石に声が合いすぎじゃないですか!」
なんでこの程度の事でムキになるんですかね……。
「仕方ないだろう。コクリコらしからぬ考えを言うからさ」
「失礼な! 私だって着眼小局だけでなく、着眼大局の力もこの地で養っていますよ」
「ちゃくがん――なんて?」
普段、使わないような言葉を使いやがって。
絶対に誰かの受け売りだ。
だってコクリコだもの。コイツは琴線が触れたら即、自分の知識としてひけらかそうとする所があるからな。
まあ、俺も似たようなところがあるけども。
「大方、高順氏の受け売りだろうな」
「ぬぅ……」
図星だったようだな。
高順氏としては、このまま要塞に籠もらずに一気呵成に攻めたいという気持ちがあるというのが、コクリコとのやり取りから窺い知れた。
それでも準備が整うまでは逸る気持ちを抑制し、動かないという堅実さがある。
口ではアレだけど、先生の戦略と戦術は信頼してくれているからね。
むしろイケイケになっている混成の兵達を押しとどめていると推測すれば、高順氏の指揮能力の高さには脱帽である。
ユニークスキル【陥陣営】が発動することで騎兵達にバフがかかる。
その強さが自分たちの地力と勘違いしてしまえば、傲慢な好戦思想になりそうだけど、それを纏めているのは高順氏の将器が本物であるからこそ。
「さて、こんなところで話し込んでもあれなので、さっさとこの要塞の指揮官に会いに行きましょうか」
「お前が主なんだろう?」
「私は主です。主の下に指揮官がいるのです」
「そうですか」
ぶれないヤツである。
――厩舎にダイフク達を預けて人力昇降機で壁上へと上がれば、以前にも目にしたゴーレム達による補強と補修。
これに加えて王都で活動していた白装束のスケルトン達も作業に参加。
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