彼女と彼

おかゆ

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彼女と彼2

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彼女の家に彼は今日も訪れます。
壁のドアが少し開いていました。
彼女の声が聞こえてきます。
「そのドアから中に入って。」

彼が中に入るとドアは重い音をたてて閉まりました。

彼女の家は窓はなく、ドアが一つついているだけでした。
彼はドアの傍に座ります。
彼女の笑い声が聞こえました。
「貴方はドアの傍に座るのが好きね」

彼は、久しぶりに聞く彼女の笑い声に微笑みながら言います。
「今日は君の話が聞きたいな」

彼女は笑うのをやめ、静かに呟きました。
「私は...愛していた友と彼に裏切られ、捨てられ、居場所も無くなった惨めで存在価値もない女よ。」
「何で君はここに居るんだ?」
「ここに居ればもう誰にも傷つけられないもの。私はもう傷つきたくない。壊れていく自分を見たくない。全部怖いの。」

彼女は悲しそうに笑いながらたずねました。。
「ねぇ、貴方も私を利用しに来たんでしょう?自分から裏切って捨てたのに都合の良い男よね。」
彼は苦笑いをうかべながら答えます。
「君を裏切ったことも捨てたことも認めるさ。でも君を利用するつもりはない。今の君に利用価値なんてないよ」

彼女は不思議そうな顔をしました。
「利用しに来たんじゃないなら何でここに来るの?」
懐かしそうに、愛おしそうに彼は言いました。
「君の隣は居心地が良いんだ。暖かくて、落ち着く。昔と変わらずここは居心地が良いよ。」

「私の隣に居たいって意味分かって言ってるわよね?貴方に私の闇を理解して支えきれるの?」
「いいよ、君の隣がいい。」
「本当、どこまで分かってるのか掴めない人ね」
笑いながら彼女が家から出てきました。
出てきた彼女は全身に鎧を纏っていました。

「いくつか約束して欲しいの。家は私の最後の砦。許可するまで踏み込まないこと。私を傷つけないなら私も傷つけない。裏切るならその前に捨てて。」
「分かった、一つ聞きたいんだがその鎧は脱がないのか?」
「この鎧は貴方をある程度信用したら脱ごうかしら」

笑いながら彼に近づくと優しく、それでいて不安気に抱き締めました。
彼は彼女が震えていることに気づかないふりをし、勇気を出して自分を受け入れようとしていることに愛おしさが込み上げ、壊れ物を抱くように優しく、力強く抱き締めました。


彼女の鎧はきっと不安と恐怖から出来ている。
この小さな身体でどれだけ辛いこと、悲しいことを我慢して独りで耐えてきたのだろう。
他人を庇って自分を責めて、自分を嫌って追い詰めて壊して。


「一緒に背負ってやるから、だからそんなに強がらなくていい、自分をもっと信じてやれよ。自分を責めるな。君は何も悪くなかったんだ。」
彼がそう苦しそうに呟くと彼女は泣き出してしまいました。

彼女は何も言わず、今までの苦しみを吐き出すように子供の様に泣きじゃくっていました。
彼はそんな彼女を抱き締めながら微笑んでいました。


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