この救われない世界で

NigerCamelia

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I believe in your heart.

F prologue 『神が人々を見捨てた日』

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 星が降っている。大気圏で焼き尽くされ、宙の藻屑と成るべき星々が、神々しき如く人々が築き上げた世界の有り様を変えていく。わあ、流れ星だ。願い事を三回唱えるんだよ。だとか、騒いでいた人々は既にいない。
 星は遥か遠く彼方そらより、大気突き抜け、多大なる威力ねつりょうを持ちて降り注ぎ、寸毫の間に、瞬く間に世界を焼き尽くした。文明の悉くを焼尽し、不幸にも残ってしまった人々に焦土という絶望を与え、そうして大地に還る。神よ神よ、我々が崇め、奉った神々よ。我々は要らない存在でしたか? ではなぜ産み出したのですか? その答えは永遠に現れない。ただ、人々は理解した。存在する神々は、存在しない我々を助けないのだと。元々、神は我々のことなど、見ていなかったのだと。嗚呼、嘆く。
——神は絶望という鞭を残し、人々を見捨てた。

 (一)

 少年は、人々が焦土で絶望に打ち拉がれる中、唯一その瞳に希望を宿していた。いや、それが希望なのか、というと多分大きく違う。憎悪だとか、親愛だとか、そういった正負の感情が全く感じられない無機質なものだが、それでも周りと比べれば幾分もましだ。悠々と焦土を歩けば、非常食として持ち歩いている燻製肉を齧りながら、晴天を見つめる。あれだけの悲劇が起きたというのに、煙で汚れてしまった空は、本来の姿を取り戻している。案外これは神々が進みすぎた文明に対する罰だとか、いや、罰はおかしいから、慈悲だとか、そういったものかもしれない。そんなことすら、神々が去ったこの世界では、知る由もないだろうが。苦笑する。
 この世界は実際神々がいたからこそ、大きく発展することができた。食料に、領土に、娯楽に、何にも困らず易々とこの世界は発展してきた。人々は神々が我らを見捨てた、眼中になどなかった。などと喚くが、それこそ筋違い。神は我々にずっと慈悲を与え続けていたにすぎない。それが今になって唐突に途切れようとも、おかしいことではないだろう。ただ、これは本当に自業自得だな、と少年は自嘲する。技術の発展を急き、その過程でうっかり炉心融解を何度か起こしたうえ、それの処理を神々に押し付けた。それを神々は粛々と行ったが、あまりに報われない。結局人々は神々を、恩人を道具としか見ていなかったのだ。そうして甘んじた結果がこれ。あたり一面広がる焦土。人々の絶望。それしか残らぬ世界。本当に世界を削除したわけではないのだから、更にたちが悪い。きっと技術の断片、行使するための資材。それらがこの世界にはいくつも埋まっている。今までの生活を取り戻すことができるかもしれない。中途半端な希望は人々を縛り付ける。
 すると不味い。もしも誰かがその希望を見つけてしまえば、その希望がたった数人分しかなければ、絶対に醜い争いが、生存競争が起きる。であれば、早々にこの集団から離れてしまうのが好手だろう。幸か不幸か、一応武術に心得がある。そう簡単に死ぬこともないだろう。さて、と少年はリュックサックを背負った。残存している食料では節約しても持って二週間。焦燥しきった眼が少年の眼と合うが、彼はそれを気にかけず、人々の向く真逆に走り出した。
 
 そうして一週間、少年は睡眠をこまめにとりながら、希望を求め走り続けた。別に前のような暮らしがしたいわけじゃない。ただ、”まとも”な人間と話したい。そういった願望が、少年の中で渦巻き続けていた。そうして少年は、案外と寂しがりなのだな、と気づく。
 既に夜の帳が落ちようとしている。であるから、少年はいそいそと野営の準備を始める。とはいっても、リュックから寝袋を出し、この荒野の中寝転がるだけだが。随分と離れたつもりだったが、ここからでも星々が作り出したクレーターがよく見える。それによって、やはり人とは矮小な存在なのだと、改めて自覚する。寝袋に入り、そろそろ眠りにつくであろうその時、少年は驚愕する。火が灯っていた。今まで見続けていた電灯ほど現代的ではなく、ただ木に火をつけただけの赤い、炎の煌めき。松明という原生的な道具を持つ、顔の彫りが深い男女がいる。すぐさま声を掛けようとするも、体が動かない。何故だ、と思えば、これは本能なのかもしれない。そう考えた。いきなり現れた人間。顔立ちからして欧米の出で立ちと考えられるが、何故か『帯剣』しているし、英語、フランス語辺りなら少しだけ嗜んでいるが、もし通じなければ切り捨て御免、なんてこともありえるかもしれない。しかし、このままでは埒があかない。さて、どうするべきか……。逡巡している間に、勘付いたのか何人かの男女がこちらを見つめている
「I think there is a person.」(私、あそこに人がいると思うんだけど。)
「Really? I don't feel sign near.」(本当か? 近くに気配は感じないぞ)
「But,If there is a person.What'll I do?」(でも、もし居たとしても、どうすればいいのかしら。)
 使用している言語は英語。どうやらこちらの存在に気づいて居ながらも、どうしようかと困惑しているらしい。あまりに拍子抜け。素っ頓狂な反応(敵かもしれない存在に気付きながらも大して警戒しない様子を指して)をするものだから、少年も警戒するのが馬鹿らしくなり、素直に姿を現した。
「こんにちは、私は如月 佳奈と言います。あなた方は何者でしょうか?」丁寧に自己紹介をすると、彼らは気さくな笑みを浮かべ、こちらに寄ってくる。
「私はエイル。そこの大男がガイ、隣がジェシカ、そして、一番後ろにいるのがケイです。私たちは冒険者をしているのですが、あなたはどうしてこちらに?」
「冒険者、ですか?……いえ、私は人村を探して居たところなんです。」冒険者、と余りに聞かない言葉を言われたものだから、思わず首を傾げてしまうが、今問い詰めることでもないだろうから、とすぐさま質問に対する答えを返す。
「村を探しているのですね。近くにありますので、私たちが案内しましょう。」彼らは言うと、目前の森へと入っていった。少年はそれに付いていき、ようやくゆっくりできると安堵する。村へ行く途中に皆が色々と絡んできたが、中々に楽しかった。善意の交流は快い。今まで大して人との関わりを築いてこなかった少年は、生まれて初めて、そう思った。
 
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