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一章 細マッチョエルフの受難~転生しても腐れ縁?ありえねぇ……~
ビバ、よそよそしさ
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◇ ◇ ◇
話が決まってからオレたちはバタバタと出立の準備をして、翌朝には里を立った。
エルフの里は大森林の奥深い所にあるから、そこから出るっていうだけでも一苦労だ。数日は野宿確定。ああ、なんて面倒なんだ。
しかも転生したクウガと旅するなんて、最悪としか言えない。
オレたちが犬猿の仲がというのはみんなが知っていたのに、修学旅行は中学も高校もクウガと同じ班にさせられたことを思い出してしまう。
……確かに、いつも悪ぶって反発して扱いにくいヤツだったのは認める。
だからといって、クラス委員長のクウガにオレを押し付けるのはどうかと思う。
それで妙な使命感でも覚えてしまったんだろう。旅行中はいつにも増してクウガの小言が多かったし、四六時中ずっとオレから離れなかった。監視されて楽しめるはずもないし、寝ても休めなかった。
今回の旅は数日で済むものじゃない。
長々とクウガの小言監視付きだなんて、考えるだけでも最悪――。
「ルカ、危ない」
あれこれ考えながら森を歩いていたオレの腕を、不意にクウガがグイッと引っ張る。
我に返ってみれば、地面が大きな段差になっている所を危うく踏み外すところだった。
「す、すみません、クウガ様……助かり、ました」
条件反射で反発したくなるのを我慢して、オレがぎこちなく礼を告げる。
フッ、とクウガが表情を緩めた。
「そんなにかしこまらないで欲しい。これから長い道中になる。どうか無理しないでくれ」
お前、そんなこと言って、オレが素の態度見せた途端に「自重しろ」って言い出す気がろ? 思ってたのと違うって文句つけるんだろ?
本性を丸出しにして溜まりに溜まった文句をぶつけてやりたかったが、転生前よりも年を取ったせいか、しっかりブレーキをかけられる。
オレ、今は二十六歳。転生前の中身のままでも、ちゃんと大人になってるのって妙な気分だ。
「ありがとうございます、クウガ。そう言って頂けると気が楽になります」
敬称だけ外して、丁寧な外面は外さずにオレは微笑む。
下手に前世のオレっぽさを出したら、そのせいで記憶を思い出して口やかましくなるかもしれないし。
今のままなら、まだクウガにそっくりな別人だと割り切れる。ビバ、よそよそしさ!
オレがやんわりとクウガの手を退かして距離を取ると、先頭を歩いていたアグードがわざわざ引き返してオレの元へ駆けてきた。
「ルカ兄、大丈夫?」
「問題ない。ちょっと足を滑らせかけたってぐらいだし。ケガしても回復魔法ですぐ治るんだけどな」
「でも転倒した時の痛みはあるから……ルカ兄にそんな思いはして欲しくない!」
やけにアグードが拳を握って力説する。コイツのルカ兄至上主義っぷりは、たまについていけなくなる。弟分のはずなのに、オカン成分が入ってやがる。兄貴分を過保護にするなよなあ、まったく。
話しながら歩き出すと、少し離れてクウガの足音が聞こえてくる。
いつもアグードと二人で森にいることが多いから、足音が多いことに少し違和感を覚えてしまう。
きっと旅立って間もなくだから気になるんだろう。数日も立たない内に慣れるとは思う。
ただクウガの気配に慣れるほど、腐れ縁が復活して離れられなくなるんじゃないかって気がしてならない。
この距離感を忘れないようにしないとな。
オレは敢えてアグードに寄りながら森を歩いていった。
話が決まってからオレたちはバタバタと出立の準備をして、翌朝には里を立った。
エルフの里は大森林の奥深い所にあるから、そこから出るっていうだけでも一苦労だ。数日は野宿確定。ああ、なんて面倒なんだ。
しかも転生したクウガと旅するなんて、最悪としか言えない。
オレたちが犬猿の仲がというのはみんなが知っていたのに、修学旅行は中学も高校もクウガと同じ班にさせられたことを思い出してしまう。
……確かに、いつも悪ぶって反発して扱いにくいヤツだったのは認める。
だからといって、クラス委員長のクウガにオレを押し付けるのはどうかと思う。
それで妙な使命感でも覚えてしまったんだろう。旅行中はいつにも増してクウガの小言が多かったし、四六時中ずっとオレから離れなかった。監視されて楽しめるはずもないし、寝ても休めなかった。
今回の旅は数日で済むものじゃない。
長々とクウガの小言監視付きだなんて、考えるだけでも最悪――。
「ルカ、危ない」
あれこれ考えながら森を歩いていたオレの腕を、不意にクウガがグイッと引っ張る。
我に返ってみれば、地面が大きな段差になっている所を危うく踏み外すところだった。
「す、すみません、クウガ様……助かり、ました」
条件反射で反発したくなるのを我慢して、オレがぎこちなく礼を告げる。
フッ、とクウガが表情を緩めた。
「そんなにかしこまらないで欲しい。これから長い道中になる。どうか無理しないでくれ」
お前、そんなこと言って、オレが素の態度見せた途端に「自重しろ」って言い出す気がろ? 思ってたのと違うって文句つけるんだろ?
本性を丸出しにして溜まりに溜まった文句をぶつけてやりたかったが、転生前よりも年を取ったせいか、しっかりブレーキをかけられる。
オレ、今は二十六歳。転生前の中身のままでも、ちゃんと大人になってるのって妙な気分だ。
「ありがとうございます、クウガ。そう言って頂けると気が楽になります」
敬称だけ外して、丁寧な外面は外さずにオレは微笑む。
下手に前世のオレっぽさを出したら、そのせいで記憶を思い出して口やかましくなるかもしれないし。
今のままなら、まだクウガにそっくりな別人だと割り切れる。ビバ、よそよそしさ!
オレがやんわりとクウガの手を退かして距離を取ると、先頭を歩いていたアグードがわざわざ引き返してオレの元へ駆けてきた。
「ルカ兄、大丈夫?」
「問題ない。ちょっと足を滑らせかけたってぐらいだし。ケガしても回復魔法ですぐ治るんだけどな」
「でも転倒した時の痛みはあるから……ルカ兄にそんな思いはして欲しくない!」
やけにアグードが拳を握って力説する。コイツのルカ兄至上主義っぷりは、たまについていけなくなる。弟分のはずなのに、オカン成分が入ってやがる。兄貴分を過保護にするなよなあ、まったく。
話しながら歩き出すと、少し離れてクウガの足音が聞こえてくる。
いつもアグードと二人で森にいることが多いから、足音が多いことに少し違和感を覚えてしまう。
きっと旅立って間もなくだから気になるんだろう。数日も立たない内に慣れるとは思う。
ただクウガの気配に慣れるほど、腐れ縁が復活して離れられなくなるんじゃないかって気がしてならない。
この距離感を忘れないようにしないとな。
オレは敢えてアグードに寄りながら森を歩いていった。
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