上 下
17 / 39
一章 細マッチョエルフの受難~転生しても腐れ縁?ありえねぇ……~

雑な態度取ってるのに、好感度上げるなよ!

しおりを挟む



 朝になって、オレは気だるい体をゆっくりと起こす。

 ヤりまくったおかげで体の疼きは収まっている。
 隣では今も寝息を立てているアグードがいるが……なんか前よりも男前に見えてしまうのは気のせいか?

 ってか弟分に童貞卒業を先越されるって……しかもオレで卒業って……。

 なんとも言えないモヤモヤが胸に込み上げてくる。嫌って訳じゃないけど……っ。男としての何かが揺らぐっていうか。

 めっちゃ良かったけど。
 でも――まだ、体の奥がもどかしい。

 もしかして、呪いが解けるまでヤらなきゃいけないのか?
 アグードに抱かれ続けて、女の子を抱けない体にさせられちまうのか?

 前世も童貞だったのに――。

 視界の脇でクウガが起き上がるのが見えた。

「おはよう、ルカ。昨日は俺の呪いのせいで迷惑をかけてすまなかった。大丈夫だったか――」

「クウガ、てめぇ……っ、お前のせいでっ、オレの体が取り返しのつかないことになっただろうが!」

 敬語の壁を作ることも忘れて、オレはクウガに詰め寄って胸倉をつかむ。

「何があったんだ?」

「そ、それは……オレも、サダナックに呪われた……」

 嘘ではない。だけど、どんな呪いかは絶対に言えない。

 昨夜の抱かれっぷりを思い出して、顔が火照ってしまう。マジでクウガが寝ていてくれて良かった。あんな姿を見られた日には、もう生きていけない。

 呪いの中身を知らないクウガの顔が、痛ましそうに歪んでいく。

「すまない、君を巻き込んでしまって……」

「ああっ、巻き込みやがって! いいかクウガ。オレもお前も呪われた。さっさと魔物倒して呪いを解くぞ。自由になって別れるぞ!」

 クウガの同情も罪悪感もいらない。お前はオレのことを背負うな。

 こうして同じ所にいるだけでも腹立たしいのに。
 もうお前との縁を断ち切りたいんだよ――頼むから。

 胸の奥に滾る苛立ちに混じって、小さく鋭い痛みが走る。

 一度深呼吸をして自分を鎮めると、オレはクウガから手を放した。

「そろそろ森を出るが、そこからどうするんだ? 行く当てはあるのか?」

「一旦街に戻って、前に世話になった占い師を頼ろうと思う」

「占いで魔物の居場所を見つけてもらって、ブッ倒しに行くってことか。それは分かりやすくていいな。メシ食ったらさっさと行くぞ」

 オレが仕切っていると、クウガの目が優しく笑っていることに気づく。

「……な、なんて顔して見てるんだよ……」

「いや、これだけ元気なほうが、俺も接しやすくて嬉しくなる」

 雑な態度取ってるのに、好感度上げるなよ!

 やめろ、オレをそんな目で見るな。
 前世の時にたまに見せていたそれを向けるな……っ、この、オカン野郎!

 薄く繋がり始めていた腐れ縁が、がっつり結び直されそうな気がして、オレはクウガから背を向けた。
しおりを挟む

処理中です...