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一話 『至高英雄』に強さを求め

戦の作戦

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   ◇ ◇ ◇

「流石ですね、誠人サマー。まさかすぐに炎舞撃を覚えられるなんて、すごいですー」

 夕方になり、城の自室へ戻った俺の目前で、白澤が浮かびながら声を弾ませて賞賛してくれる。

 純粋に褒めてくれているのは分かる。だが俺としては複雑だった。

「あれは炎舞撃というのか……だが華候焔には効かなかった。普通の攻撃も軽くいなされて、一瞬たりとも本気を出してはくれなかった」

「あんな人でも最強ですからねー。究極の奥義なんて放とうものなら、こんな小さな城なんて吹き飛んでしまいそうですしー」

「き、規模がすごいな……」

「げぇむですからー。必殺技を使い続けると練度が上がって、さらに強い技となりますから、積極的に使って下さいねー」

 どうやら俺が使えた技は初歩的なものらしい。
 技を磨けば強くなるというのは魅力的だと思っていると、開放していた出入口の前に華候焔が現れた。

 ――すぐ後ろに誰かを引き連れて。

「誠人、邪魔するぞ。今から明日の作戦を立てる」

「コラ華候焔ーっ! 勝手に誠人サマの部屋へ入らないで下さいー!」

「ちゃんと声をかけてから入っただろうが。いちいち細かいぞ毛玉」

「アナタが立場を弁えなさすぎるんですよー! しかも誰ですか後ろの者はー? 武将じゃない人を連れてこないで下さいーっ!」

 言い合う華候焔と白澤を尻目に、俺は後ろの人物を覗き込む。

 俺と同じくらいの背丈の青年だ。体格も筋肉の付き方も俺と似ている気がする。
 不思議と体の認識はできが、顔がうまく認識できない。ちゃんと目にしているのに、なぜか頭に入ってこない。かろうじて髪は俺より少し長めの、柔らかな茶髪だと認識はできた。

 うまく顔が認識できりない彼と視線が合い、フッと微笑まれる。
 表情も目線も分かるのに顔が分からない。困惑する俺に気づいて華候焔がニヤリと笑った。

「コイツは鍛錬中の兵士の中から、誠人の背格好に近いヤツを選んできた。強さはただの歩兵だが、育成武将に選ぶと忠実な臣下になってくれるぞ。明日の作戦に重要なヤツだ。武将にしてやってくれ」

「勝手なことをしないで下さいー。今から育成しても、明日の戦に使える武将の強さには届きませんからー。早く元の場所へ戻してあげて下さいー」

 反発する白澤へ「少し抑えてくれ」となだめてから、俺は華候焔へ訪ねる。

「彼を武将にしてどうするんだ? まさか囮に使うのか?」

「ああそうだ。だが危ない目には合わせない。俺が間近で守る」

 領主である俺でなく、この彼を?

 狙いが読めずに顔をしかめた俺へ、口端を引き上げて不敵さを色濃くする。

「まだ誠人は領主になったばかりで、顔をよく知られていない。敵に偵察されてある程度は把握されているだろうが、兜を被って立派な装備をさせれば間違うだろう。ましてや俺が間近に控えていれば尚更だ」

「では俺はどうするんだ?」

「少ない人数の精鋭を連れて敵の真横を狙ってもらう。そして総大将を誠人自身の手で討ってもらいたい」
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