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二話 初めての戦

一騎打ち2

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 顔鐡が大きく矛を振り上げる。

 そして俺を一撃で仕留めようと全力で振り落しかけた刹那――ガチィッ!
 俺は棍の先を矛の刃へ当て、力を込めて顔鐡の動きを止める。

 互いの力が大きくかかる。
 ――強い力が加わるほどに竹砕棍の中央は大きく膨らむ。いくつか縦に切り込んだ紙が両端を押されて横へ広がり、提灯のような形を作るように。

「これは!? ……はっ!」

 想定外の形に顔鐡は目を見開く。俺の狙いに気づいたのか息を引く音がしたが、俺は矛を下げられるよりも早く力を抜き、棒状へ戻ろうとしていく棍の隙間に矛を挟む。

 うまく矛を取り込み――バギィィッ!
 竹砕棍が元に戻ると同時に、顔鐡の矛は大きく砕け落ちた。

「よし、上手くいった……っ」

 いったいどんな金属を利用しているのか知らないが、竹砕棍は硬さとしなやかさを併せ持つ武器だ。

 この戦い方を教えてくれたのは華候焔。
 軌道の読めない攻撃で複数を倒せる利点だけでなく、武器の砕き方も教えてくれた。

 どれだけ強い猛者でも己が一番得意としている武器を壊されたならば、本来の力は出せなくなる。

 それは一番強い技が繰り出せないということ。

 下手をすれば使える技が皆無になり、大きく戦力を削ぐことができる。
 やはり手痛かったらしく、顔鐡は忌々しげに顔をしかめて舌打ちした。

「チッ、そんな小細工があったとは。まあいい。これで十分だ!」

 すぐに顔鐡は折れた矛を手放し、腰に挿していた剣を抜く。
 刃の幅が上にいくほど広い剣。威力は申し分なさそうだ。

 顔鐡が思い切りよく剣を振るう。
 今度は棍身で剣撃を受け止め、力負けせぬよう全力で押し合う。

 顔が間近になり、歯を食いしばり、鬼の形相と化した顔鐡に気圧されかける。

 気迫が凄まじい。このゲームでプレイヤーは死なないらしいが、顔鐡は本気で俺を殺しにかかっている。

 この緊張感。生々しさ。現実で試合を百回こなすよりも、たった一戦経験するだけで、それ以上の成長が見込めそうだ。

 目の前の将を倒したい。
 戦いの糧を得て、強さを手に入れたい。

 現実でぶつけられた冷ややかな目に、火を灯すために。
 この世界で熱を込めてくる目を、冷やさぬために。

 意気を高めていけば、俺の周りがほのかな赤く光り始める。

 至近距離で技を放つことができたならば、俺の勝ちが見えるハズ。
 発動させるためには特定のアクションが必要になる。

 俺は奥歯を噛み締め、更なる力を込める。
 顔鐡が弾き飛び、すかさず距離を縮めようとしてくる。
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