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三話 逃れられぬ世界

新たな登用

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 しばらく休んでから湯浴みし、着替えてから女官に案内されたのは南殿の小部屋だった。

 低く細長い机の上には、赤いクコの実や松の実などを散らした粥と、色とりどりの果実が置かれている。

 机の前にあぐらをかいて座れば、香ばしいごま油の香りが食欲をそそってくる。

 一旦手を合わせ、俺は粥を白いレンゲですくって食べる。見た目の淡白さとは裏腹に、肉のまったりとした旨味が口の中に広がり、食べる手が止まらなくなる。

 料理に詳しくはないが、鶏ガラを煮込んで作ったのだろう。口にすればするほど体が温まり、先の行為で疲弊した体に力が戻ってくる手応えがあった。

 そろそろ粥を食べ終わりかけた頃、

「誠人サマ――っ!! 大丈夫ですかー! 華候焔にあれやこれやされて、お尻は無事ですか――っ!?」

 デリカシーのないことを叫びながら、白澤が勢いよく部屋へ入ってくる。

 突然のことで思わずがガフッと咳き込み、せっかくの粥を吹き出しかけてしまう。

 しかしどうにか堪え、俺はしっかりと飲み込んでから白澤に返事した。

「だ、大丈夫だ……あと、あまりその話題には触れないでくれ」

「分かりましたけど……ここだけの話、本当に大丈夫でしたかー? もしや良すぎて骨抜きに――」

「やめてくれ……っ。武士の情けで見て見ぬ振りをしてくれ……頼むから、白澤が俺を辱めないでくれ」

「き、気になりますぅー……でも、誠人サマがそう言われるならガマンしますー。後で華候焔を酔わせて吐かせますー」

「華候焔から聞くのも駄目だ! 絶対に……っ!」

 知りたがる白澤を必死に説得していると、大きな人影が二つ、ヌッと入ってきた。

「朝から騒がしいな、毛玉。領主様を困らせるな」

 先に入ってきたのは華候焔だ。他の人間がいるためか、臣下の体を整えた言動に内心驚く。

 そして後から入ってきた男は腰を降ろし、俺に一礼してから無骨な顔をにこやかにし、俺を見つめてきた。

「誠人様、朝からお目通し失礼する。戦場でお見かけした時よりも、穏やかで余裕のあるお顔をなされている……この顔鐵、お仕えできて嬉しく思う」

 先日――ゲーム内は昨日だ――の戦で、敵の総大将だった顔鐵。

 俺が倒した後、捕らえて城へ連れ帰っていた。

 炎に焼かれても死なないあたり、さすがゲームだと思う。しかも、こちらから説得するよりも早く、「どうか誠人様に仕えさせてくれ!」と熱望したとのこと。

 いくら華候焔が最強とはいえ、将が少なければ数の暴力で負けてしまう。優秀な将が来てくれるのはありがたかった。

「こちらこそ。貴方のような将に来て頂けて嬉しく思う」

「ありがたきお言葉。誠人様のお役に必ず立ちましょうぞ」
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