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十一話 大きな前進

大きな変化~デカ毛玉、爆誕~

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「――ったく華侯焔、アナタという人はー!」

 白鐸の騒がしい声がして、俺の意識が浮上する。

 現実では夜だったが、ゲーム内は朝。寝起きから華侯焔と激しく交わり、抱き潰されて気を失ってしまったことを思い出す。

 身体の気だるさが、頭の起床が進むにつれて軽くなっていく。
 これは眠りについて回復した訳じゃない。近くに白鐸がいるということは、回復の術を施してくれているのだろう。

 ありがたいことだと思っていると、耳が二人の言い合いを鮮明に聞き取れるようになる。

「誠人サマに無茶させないで下さいー! いくらこっちが現実じゃなくても、辛いものは辛いんですー!」

「無茶はさせてない。誠人も望んでいたことだしな。それに、こっちに来る時と戻る時は体力が回復するんだ。だから今が一番誠人の身体に負担がかからない」

「詭弁は結構ですー! こっちに戻られたと思ったら、グングン体力が減って……城内で気絶の気配だなんて、襲撃に遭ったのかと思って焦ったんですからー!」

「俺が朝に誠人を頂くのは、もうお約束だろ。察しろ」

「イヤですー! そもそも、アナタが誠人サマに無体を働き続けてること、認めていないんですからねー! 誠人サマはアナタの性欲を満たすための食べ放題料理じゃないんですからー!」

 ……白鐸、怒ってくれる気持ちは嬉しいが、言い方は見直して欲しい。あと華侯焔、ゲームのシステムを熟知しているのは頼もしいが、俺を抱くために駆使しないで欲しい……東郷さん……。

 この世界で聞き慣れたやり取りだが、華侯焔の正体が分かった上で耳にすると、すごく複雑な気分になってしまう。

 現実の東郷さんが白鐸とあんなやり取りをするなんて想像できない。
 ああ、でも誰もが畏れる最強の武人である華侯焔に、最初から白鐸はこの調子だから、東郷さん相手でも白鐸はこんな感じなのだろう。

 もしかすると白鐸がすごいのかもしれない。
 そんなことを思いながら、俺はまぶたを開く。

 目に入ってきた光景に思わず目を見開く。

 確かゲームを終える間際は、太史翔の城に近くの城で褒美を与えてから眠りについた。領主の部屋は城の規模が大きくなかったから、寝台は広いもののシンプルな作りだったような気がする。

 それが今、俺がいる部屋は絢爛豪華な調度品が置かれ、広々としていた。
 俺が横たわっている寝台もサイズが大きくなっている。大人が十人ほど並んで寝ることができそうな――何人も上に乗せてまぐわうことになっても大丈夫そうな――立派なものに変わっていた。

 さっきは華侯焔に意識をすべて持っていかれていたから、この変化にまったく気づかなかった。それだけ頭が華侯焔のことでいっぱいだった事実に、収まっていた身体の熱がよみがえりそうになる。

 しかし、目の前の変化が俺をまともなままで留めてくれる。
 部屋の激変ぶりにも驚いたが、中でも一番驚いたのは――。

「あっ、誠人サマー! おはようございますー!」

 長いタオルのようだった白鐸の身体が、人の大きさほどの丸い毛玉に変化していた。

 実際に見たことはないが、雪男やイエティの類だ。ただ白鐸には脚がない。完全な毛の塊だ。楕円形の特大毛玉。あまりの珍妙な姿に、俺は身体を横たえたまま硬直してしまった。

「……誠人サマー? どうされましたかー?」

「驚いているんだろう。なんだその姿は。可愛げが皆無になったな、デカ毛玉」

 デカ毛玉。
 華侯焔の的確な称し方に、俺は心から納得した。
 
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