俺はVR中華風戦闘SLGで、体を褒美に覇者を目指す

天岸 あおい

文字の大きさ
288 / 345
十三話 裏切りの常習犯

弟の本来の姿

しおりを挟む

 東郷さんの車が停まったのは、田舎の町にしては綺麗で大きな病院だった。

 俺が尋ねるよりも早く、車を降りてドアを閉めながら東郷さんが教えてくれた。

「ここは柳生田さんが出資している病院だ。研究所も併設されていて、最新の設備と技術が揃っている」

 街の総合病院よりも規模が大きい。あちこちに何棟も建物があり、駐車場も広い。車の量も多く、周囲の住民の数よりも利用者のほうが多いかも知れない。

 物珍しくて辺りを見渡す俺に、東郷さんが目配せして歩くよう促してくる。

 そうして東郷さんを先頭にして、俺は少し斜め後ろをついて行った。



 向かった先は、病院の建物の中で一番大きな中央の建物だった。
 入院患者が集まっているらしく、病院の衣服を着た人たちがロビーや休憩所に集まり、談笑している。

 その五階の最上階にある個室部屋の前で、東郷さんは足を止める。

 スライド式のドアの隣に出ている名前は『東郷和毅』。澗宇の現実の名前をここで初めて知った。

 コンコン、と東郷さんがノックしてからドアを開ける。

 東郷さんにとっては見慣れた光景。
 だが俺の目には真新しいこと。思わず後ずさり、目の前の真実を凝視した。

「紹介する……俺の弟、東郷和毅だ」

 大きなベッドで寝ているのは、小柄で痩せ細った男性だった。

 いくつものチューブを身体に繋げ、口元は人工呼吸器で覆われている。
 あの世界で見た澗宇の面影はどこにもなく、今にも生気が消えかかりそうな姿がそこにはあった。

 そして彼の目元は、黒く分厚いゴーグルで隠れていた。

 愕然となる俺に、東郷さんは抑揚のない声で教えてくれる。

「和毅がこの身体になって、もう八年が経っている――俺が目を離した隙に、事故に巻き込まれてしまったんだ。命は取り留めたが、意識は未だに戻っていない」

「……待って下さい。『至高英雄』の領主は、負けない限りは現実の身体が移動するはず。なぜ澗宇として動いていられるのですか?」

 身を以て知ることになってしまった、『至高英雄』の真実。領主の身体は現実のものが、あっちの世界に移動する。異世界転移というやつだ。

 だから格付け第三位の領主である澗宇が、か細い身体ながらも不自由なく動いているという事実が理解できない。

 俺が問うと、東郷さんはもったいぶらずに教えてくれた。

「事故を起こした相手が、柳生田さんの会社の幹部だった。だから口止めも兼ねて、弟に最新の治療を施してくれた……だが意識は戻らなかった。それからニ年が経った頃に、柳生田さんが俺たちに『至高英雄』のテストプレイをさせてくれたんだ。弟の身体は、特別に魔導士が肉体を用意したものを使わせてもらった」
しおりを挟む
感想 12

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

獣のような男が入浴しているところに落っこちた結果

ひづき
BL
異界に落ちたら、獣のような男が入浴しているところだった。 そのまま美味しく頂かれて、流されるまま愛でられる。 2023/04/06 後日談追加

男子高校に入学したらハーレムでした!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 ゆっくり書いていきます。 毎日19時更新です。 よろしくお願い致します。 2022.04.28 お気に入り、栞ありがとうございます。 とても励みになります。 引き続き宜しくお願いします。 2022.05.01 近々番外編SSをあげます。 よければ覗いてみてください。 2022.05.10 お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。 精一杯書いていきます。 2022.05.15 閲覧、お気に入り、ありがとうございます。 読んでいただけてとても嬉しいです。 近々番外編をあげます。 良ければ覗いてみてください。 2022.05.28 今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。 次作も頑張って書きます。 よろしくおねがいします。

牛獣人の僕のお乳で育った子達が僕のお乳が忘れられないと迫ってきます!!

ほじにほじほじ
BL
牛獣人のモノアの一族は代々牛乳売りの仕事を生業としてきた。 牛乳には2種類ある、家畜の牛から出る牛乳と牛獣人から出る牛乳だ。 牛獣人の女性は一定の年齢になると自らの意思てお乳を出すことが出来る。 そして、僕たち家族普段は家畜の牛の牛乳を売っているが母と姉達の牛乳は濃厚で喉越しや舌触りが良いお貴族様に高値で売っていた。 ある日僕たち一家を呼んだお貴族様のご子息様がお乳を呑まないと相談を受けたのが全ての始まりー 母や姉達の牛乳を詰めた哺乳瓶を与えてみても、母や姉達のお乳を直接与えてみても飲んでくれない赤子。 そんな時ふと赤子と目が合うと僕を見て何かを訴えてくるー 「え?僕のお乳が飲みたいの?」 「僕はまだ子供でしかも男だからでないよ。」 「え?何言ってるの姉さん達!僕のお乳に牛乳を垂らして飲ませてみろだなんて!そんなの上手くいくわけ…え、飲んでるよ?え?」 そんなこんなで、お乳を呑まない赤子が飲んだ噂は広がり他のお貴族様達にもうちの子がお乳を飲んでくれないの!と言う相談を受けて、他のほとんどの子は母や姉達のお乳で飲んでくれる子だったけど何故か数人には僕のお乳がお気に召したようでー 昔お乳をあたえた子達が僕のお乳が忘れられないと迫ってきます!! 「僕はお乳を貸しただけで牛乳は母さんと姉さん達のなのに!どうしてこうなった!?」 * 総受けで、固定カプを決めるかはまだまだ不明です。 いいね♡やお気に入り登録☆をしてくださいますと励みになります(><) 誤字脱字、言葉使いが変な所がありましたら脳内変換して頂けますと幸いです。

お兄ちゃん大好きな弟の日常

ミクリ21
BL
僕の朝は早い。 お兄ちゃんを愛するために、早起きは絶対だ。 睡眠時間?ナニソレ美味しいの?

臣下が王の乳首を吸って服従の意を示す儀式の話

八億児
BL
架空の国と儀式の、真面目騎士×どスケベビッチ王。 古代アイルランドには臣下が王の乳首を吸って服従の意を示す儀式があったそうで、それはよいものだと思いましたので古代アイルランドとは特に関係なく王の乳首を吸ってもらいました。

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

処理中です...