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十三話 裏切りの常習犯

英正と力を合わせて

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「ご無事で本当に良かったです、誠人様……っ」

 俺を強く抱き締めながら、絞り出すような声で英正が呟く。

 駆けつけたばかりの俺よりも、英正のほうがボロボロだというのに。
 ありがとう、という感謝を口にする時間すら惜しくて、俺は代わりに抱擁を返す。それから要件を告げた。

「まだ戦えるか、英正?」

「もちろんです。手脚が折れようとも立ち上がり、脅威を払ってみせます」

「覚悟は受け取った。技を合わせるぞ」

「はいっ」

 着地し、俺たちはすぐさま身を翻して華侯焔に身体を向ける。

 息を合わせるために揃って深呼吸し、気を高めていく中、目の前に羽勳の背が割り込んできた。

「ここは必ず止めます。どうか心置きなく集中を」

 短く「ああ」と頷き、俺と英正は合わせ技の発動に入っていく。

 その間、羽勳は一人で華侯焔に挑み、激しく得物を交え合う。
 素早く繰り出される羽勳の剣撃を、華侯焔はすべて槍の柄で返し、隙あらば蹴りや掌底で羽勳を弾き飛ばす。

 だが羽勳は即座に体勢を直し、華侯焔へ挑みかかる。人ではないせいか、体力が尋常ではない。

 改めて頼もしい配下がいることを実感しながら、俺は高めた気を英正と合わせていく。

 華侯焔のものよりも優しく、深く俺の身体に染みていく英正の気。

 どこまでも俺に馴染んでいくそれは、今の俺には頼もしく心強くもあり――荒々しさのない気が、少し寂しくもあった。

 次第に俺と英正の身体は青白い微光をまとい、雷獣の力を宿す。
 互いに視線を合わせ、意思も感覚もすべて繋ぐと、わずかなズレもなく同時に華侯焔に向かっていく。

「「羽勳、替われ! 俺たちが前に出る」」

 同じ言葉を放ち、動きを合わせ、華侯焔を目指す。

 大きく跳び引いた羽勳と入れ替わると、英正と俺で最初の一撃を繰り出す。

 竹砕棍と槍。長さは似たようなもの。
 勢いづけた突きを華侯焔に向けた。

「良い動きだ」

 ゆらり、と華侯焔の身体が後ろに傾く。
 二重の突きが届くよりも先に槍で払い、軽く後退して俺たちの攻撃を流してしまう。

 華侯焔の強さを考えれば、そう簡単に一撃が入らないのは当然のこと。

 考える間もなく俺たちは続けざまに得物を払い、突き、振り下ろす。
 示し合わさなくとも俺と寸分違わない攻撃を繰り出せる――という印象を与え、俺は仕掛ける。

 大きく踏み込み、竹砕棍を突き出そうとしたフリをして、俺は英正と真逆に跳ぶ。

 戦いのリズムを変えれば、華侯焔の目が瞬時に泳ぐ。
 俺のほうを目で追い、背後に回った英正まで視線で捕えられない。

 挟む形になり、俺たちはありったけの力を込めて技を繰り出す。

「「雷獣炎舞撃!」」

 バチバチッ、と小さな稲妻がいくつも走る。
 俺たちが武器を振り下ろせば、青白い火花が飛び散る大炎の渦が華侯焔を攻め、その身を巻き込んでいく。
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