嫌われ将軍(おっさん)ですがなぜか年下の美形騎士が離してくれない

天岸 あおい

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三章 ありがたい?再会

●蜂蜜を与えながら

「少しでも栄養を摂ったほうがいい。これを――」

 ガイは蜂蜜を一匙すくい、エリクの口に運ぼうとする。
 しかしエリクに手首を掴まれ、匙から蜂蜜が零れ落ちてしまう。

 これが元気な時ならば強い力で引き倒され、そのまま夜明けまで貪られるのだろうとガイは思う。だが、討伐で疲れ果てているせいでエリクの力は弱く、ガイの体勢をわずかに崩すことすらできない。

 今ならば強引に押さえつけて、蜂蜜を与えることは十分にできる。それでもエリクを獣を相手にするような扱いをするのは忍びなかった。

 ガイはベッドの縁に腰掛け、蜂蜜を自らの口に含む。
 そのままエリクの顔に近づけると、薄く開いた唇に口付ける。

 待ちわびていたようにエリクの舌がガイに差し込まれ、蜂蜜に甘く包まれた舌を舐り出す。

「ン……っ……」

 ゆっくりと貪られていくその感覚と熱に、ガイの体が疼いていく。今まで暴走したエリクにされたキスの中では、記憶を失う前のエリクとのキスに近い。

 一瞬、エリクが戻ってきたと思いかけ、ガイの胸が強く締め付けられる。
 このまま流されてしまいたい衝動に駆られたが、ガイは理性を働かせ、エリクから唇を離す。

 まだ小皿の蜂蜜は残っている。
 テーブルに置いていたものを再び手にし、ガイは口に含ませ、唇を欲しがるエリクに与えていく。

 本当ならもっと精のつくものを食べさせたいところだが、今はこれだけで精一杯だ。朝になり、エリクが理性を取り戻した後に、しっかり食べてもらおうとガイは思う。

 何度か蜂蜜を与えるキスを繰り返し、小皿が空になる。
 エリクとの口づけから甘みが薄れていき、風味も消え、貪りたい本能のままのキスへと変わっていく。

 動きは鈍いままで、そのまま最後まで行為を行える状態ではない。
 だがエリクはキスも、ガイの手首を掴み続けることもやめずに求めたがる。

 息継ぎに空けた隙間から、ガイは熱い吐息を零す。

(弱っているとはいえ、やはりこの状態のエリクからは離れないほうが良さそうだな)

 唇を合わせながら、エリクのベッドに体を横たえていく。
 すると待ち構えていたかのように、エリクはガイの体を両腕に閉じ込め、脚を絡め、逃がすまいとしてくる。

 くらり、とガイは軽いめまいと脱力感を覚えたが、エリクを突き放しはしなかった。

(もしかすると、これが今のエリクの食事なのかもしれない。欠けた魂を補うために、俺の精気を……)

 ガイもエリクの背に手を回し、抱擁しながら体をさらに密着させる。
 互いの熱が移り合い、ふわふわと虚空に浮かんで揺蕩うような心地よさが広がっていく。

 このまま眠ってしまいたいところではあったが、互いの雄の証が硬く滾った感触が体に当たり続ける。キスで欲情も煽られ、体の芯が疼いてたまらない。

 ガイはバスローブの紐を解き、肌を露わにすると、エリクと己の滾りを合わせ、大きな手で握り込む。

 そうして二つを扱いてゆけば、さらなる熱と快感にガイの身が満ちていく。
 エリクの息は乱れ、長いまぐわいのようなキスが細かく途切れ、啄み戯れるようなものへと変わっていく。

「ふぅ……っ、ん……ぁ……」

 甘くなった声を零してしまうガイの手に、エリクが手を重ねてくる。
 軽く握り込まれ、ガイの緩やかな動きを急かすように速く動かされ、思わずガイは息を詰めた。

「……っ……ぁ……あぁ……ッ」

 頭が、視界が、白く点滅する。
 熱いほとばしりが二人の間に飛び散り、淫らな証を落としていく。

 しばらく疎らで荒れた互いの息だけが部屋に流れたが、次第に落ち着き、音が減り――エリクから寝息が聞こえてきた。

(一度の射精だけで終わるほど、疲弊していたのだな……助かった。俺もこれ以上の相手はキツい……)

 小さくホッと息をつくと、ガイの身にも抗えない眠気が訪れる。

(完全に眠ってしまう前に、自分のベッドへ戻らないと……今のエリクにこれを知られる訳には……いや……)

 今までやってきたことを繰り返しそうになり、ガイは思い留まる。

 ラヒュの「真実を隠し続けるな」という声が脳裏をよぎり、小さく頷く。

(ちゃんと俺たちの関係を伝えよう。意識がある状態でも暴走の危険がある以上、俺の不安を理由に関係を隠し続けるなど……)

 薄く目を開け、ガイはエリクを見る。
 今は穏やかに眠る端正なその顔が、驚愕や嫌悪に歪むかもしれないと思うと、それだけで逃げ出したくなってしまう。

(……まだまだ未熟だな、俺は……)

 いつエリクが鼻血を出してもいいよう、事前に枕元に置いていたチリ紙を手に取る。そして体や敷布に着いた残滓を拭き、ガイは眠気に身を任せた。

 
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